196 / 290
第六章
第192話 魔王キシン
しおりを挟む
「待て、ユーバメンシュ! 貴様、キシン様のところへと行く気か!」
「ええ、腹を割って話をするためにねん。邪魔するなら構わないわん。私も今はまだ第三者。でもん、邪魔するなら私は大切なお友達のヴェルちゃんの味方になるわん」
ママンを敵に回す。それの意味を誰よりも理解しているのがゼツキだった。
そして、他の連中も同じ。六鬼大魔将軍の一人を指一本でぶっとばしたママンに対して腰が完全に引けていた。
だが、ゼツキもただでは行かさない。
「待て、ならば吾輩も行こう!」
それが最大限の譲歩だった。
「やはり、貴様をこの場で相手にするのは明らかに分が悪い。尋常ならざる被害を被るだろう。だが、キシン様が貴様の話を聞いて拒否されたら、それまでだ。力づくで話を聞かせようとしても同じ。吾輩が命に代えても貴様を殺す」
「いいわん。もし私が無粋なマネをするようなら、抱くなり犯すなり好きになさいん」
ありえない展開だった。戦うためでなく、話をするために魔王城に乗り込む、魔族、亜人、そして人間。
ん? 人間?
「って、何で俺が行くんだよ! 関係ねーじゃん!」
「あるわよん。だって、あなたが鍵なんだからん」
鍵?
「そう。マッキーの作り上げた、愛とお金の組織はもう必要ない。お金はもはや組織において重要な要素ではないからん」
「愛と金? ラブ・アンド・マニーのことかよ」
「ええ、そうよん。でもね、もう今度からは違うん。愛と……平和を目指す組織へと生まれ変わるのよん」
「って、ちょっと待て! ママンは乗るのかよ! 断ってたじゃねえかよ、第四勢力の話!」
「だって、うちの娘が~、前世で好きな子と現世で結ばれるなんて、とてもロマンチックな恋じゃな~い! そして共に平和な世を目指す。素敵じゃやな~い!」
「おま、ふざけんな! だいたい、いらねーよ、あんなガングロビッチエルフ!」
ふざけんじゃねえ! 何で俺があんなギャル女と!
大体、愛と平和? それって、
「新組織。『ラブ・アンド・ピース』の設立よ」
「ダ、ダッサアアアアアアアアアアアアアアア!」
俺の知らないところで、俺の世界が動き始めていやがった。
「ヴェルトくん……あなたって人は……」
「俺はもうお前が分からねえよ……」
「我らがアルーシャ姫もあいつに何だか惚れてたかだったし……あいつ、もう、何なんだよ」
「しかも、サラりとユーバメンシュの娘と結婚とかなんとか……」
「し、信じられないであります」
「そして、あの四獅天亜人のユーバメンシュ相手にあの態度はなんなり!」
「ヴェルト様! 我々は心底、あなたに付き従うでしょうが!」
いや、そこ、感動してんなよ!
つか、このまま流されるわけには……
「じゃあ、掴まって、いくわよ~~~~~~ん!」
「はっ? って、どうわあああああああああ!」
「ま、待たんかー!」
その時、俺とゼツキを両脇に抱えて、ママンが猛ダッシュ。
ってちょっと待て、すげえ風圧! つか、どこ走ってんだよ! このままじゃ、城にぶつかって……
「おほほほほほほほほほほほほ! おっほほ~のほ~~~!」
あり得ねえ……
普通は、城の内部に入って、階段を登ってくんじゃねえの?
そんで、通路で敵と遭遇して戦って突き進むのが、魔王城攻略の定番だろ。
なんで、城の外壁を直角に登ってんの? しかも手を使わずに。
しかも、途中からダッシュじゃなくてスキップになってるし!
「もう、いやだ。なんか、スゲー色々と……」
「若造よ。少し気になったのだが、ユーバメンシュの娘と結婚するのか?」
「はっ? しねーし! 何で?」
「いや、ただ、覚えておくとよい。ユーバメンシュの娘とつがいになるということは、ユーバメンシュは貴様の義理の親になるということを」
それだけはゼッテー嫌だ!
いや、ありえねえし。てか、何で俺を憐れんだ目で見てんの?
「苦労しているようだな」
「ああ。だから、楽しんでるよ」
なんか、お互い何もかもがアホらしくなって、気づいたら俺たちは互いに苦笑していた。
ママンはそんな俺たちのやり取りに機嫌を良くしたのか、鼻歌交じりでさらによじ登って行った。
「うふふ、見えてきたわん」
そして俺は、まるで天変地異が起きているかのように荒れ狂う世界の中で、全てを懸けて戦う鬼と勇者たちの死闘を目の当たりにした。
まるで神話のような光景としか形容のしようがなかった。
ハンニャーラの頂上は平面の舞台で、その舞台で七人の勇者と鬼が一人、戦っていた。
七対一? 卑怯? そんな常識を覆す、化け物がそこに居た。
「あれが、魔王!」
誰も俺たち三人に気づいていない。
その鬼は、赤でも青でもない。黄色だった。
いや、黄色いのは髪だけだった。肩口ぐらいの長さの癖っ毛。
体も細い。というか、普通の人間と同じぐらいの体格だ。
稲妻柄のマントと黒一色の長そで長ズボンと軽装。
手に持つ武器も、金棒ではなく、二本の短剣。
「鬼の王……鬼、なのか?」
俺が何よりも驚いたのが、鬼の王が鬼らしくなかった。
二本の角が額から出ているが、その容姿は人間に近い。
いや、それどころか若いぞ? 異常に若い。
ゼツキの相棒ってことは、四十~五十は余裕であると思っていたのに、二十代にしか見えねえぞ?
しかも、無駄に端正な顔立ちすぎて、イケメンでロアといい勝負じゃねえか!
奴は一体?
「鬼魔族とは一線を引く種族よん。かつて、人間との奴隷の血を引いた子が、突然変異のように覚醒した。鬼人族! 年齢は、七十歳ぐらいだったかしらん?」
人間との奴隷? あのサイクロプスのラガイアのような存在か?
っか、七十! ジジイじゃねえかよ!
世にも珍しい不老長寿って奴か?
色々驚くことがありすぎる。
「ふふふ、やるではないか、愚かなるヒューマンたちよ」
すると、勇者との戦いに高揚しているのか、魔王キシンが口を開く。
威厳に満ちた表情と声で……
「グッドなパッションだ。久々にマイ・ソウルもフライ・ハイだ。このバトルは一つのレジェンドとして、ユーたちのことはフォーエバーに、マイ・メモリーにセーブしておくとしよう。さあ、カモン! ベイベーたちよ!」
……のっけから、スゲー不意打ちなダイナマイトパンチを放ってきやがった。
「なぁ……人類大連合軍の陣営に、お前らの魔王のメッセージ付きの魔鏡が送られてきたが、あの文章から想像できない鬼だな」
「あの文章は吾輩が書いた」
「なるほどな。つーか、お前も苦労してんだな」
目の前で次元違いの死闘を繰り広げる勇者と鬼。
本来ならその光景に目を奪われ、世界の行く末を案じて、勇者やフォルナたちの勝利を信じて祈りでも捧げているところなんだろうが、俺の頭の中には別の思いがあった。
「どう、ヴェルくん。あれが魔王キシン。私はねん、キーくんから、私の娘やあなたと似た何かを感じるのよん」
ママンが俺に耳打ちしてくる。
俺はただ、目を細めながら、心を整理していた。
あいつ……うそだろ……まさか……
「ふははははは、どうした? ミーのボディにはその程度のアタックなどノープロブレムだぞ?」
この世界で俺は何語を話しているのか?
正直な話、この世界の文字と漢字の違いは分かるが、この世界の言語と日本語の違いがよく分からない。
だけど、これだけは分かる。
この鬼の喋り方は明らかに異質であった。
そしてそれだけじゃない。
その異質が、俺には懐かしく感じるものでもあった。
そして、逆手短剣を両手に持ち、鬼が踊る。
「ワタクシが行きますわ! ギャンザ、フォローを! 天翔ける、疾風迅雷!」
「悲しい。私はただただ、悲しいです、キシン。分かり合えないこの無念! 神聖魔法・神炎!」
フォルナが光速で陽動し、五年ぶりにその姿を見た俺のトラウマのギャンザが無慈悲な炎をキシンに向ける。
だが、キシンはまるで二人の攻撃が予めわかっていたかのように、無駄な動き一切なく回避していく。
「ふふふ、ベリー惜しいな」
いや、惜しくはねえ。明らかに余裕を持って回避した。
「臓物を細切れにしてくれる!」
「ぶっとばしてやるんだから!」
だが、キシンが回避することを分かっていたのか、キシンの後方から二人の勇者。
「聖魔斬烈剣!!」
確か、暗黒剣士レヴィラルだっけ?
「精霊英化!」
精霊戦士ヒューレだっけ?
あんまよく知らない二人だが、恐らくはフォルナと同格。
さらに、
「くらえ! シューティングスター!」
捕まってたみたいだけど、助かったのか? 流星弓のガジェだっけ?
巨大な黄金の弓矢を持った、勇者たちの中で一番の巨漢の男が、魔力で作られた矢を連射する。
フォルナとギャンザが陽動で、残る三人の勇者で叩く?
何とも豪華すぎて胃もたれするぐらいのフルコースだ。
俺なら前菜で腹一杯になってるところだ。
だが、
「ふっ、ミーの魔曲を聞いても、まだ懲りぬか? なら、アンコールだ! 響けソウル!」
その時、二本の短剣の形状が変化した。
二本の短剣が重なり合い、V字の武器に変化した。
ブーメラン? いや、違う!
「フライーーーーーーング、ブイ! アーユーレディ?」
弦が付いている!
「ロックンロールファンタジーィィィィィィィ!」
武器じゃねえ! 楽器だ! しかも、ギターだ!
この世界じゃ一度も見たことがねえ、かつての世界にあったもの。
稲妻カラーのフライングV。
「あ、あの野郎!」
アレを、俺は知っている!
「来るわ、ヴェルちゃん! 魔王が放つ暴力的な音楽戦闘術! 『狂暴音術士キシン』と、世界と歴史にその名を刻む怪物よん♪」
「ふふ……ちなみに、キシン様はその渾名はあまり好きではないようだがな……そこは、『リモコンのヴェルト』と同じだな。そして、キシン様はご自身のことはこう呼ばれている――――」
まさか、まさか!?
あのふざけまくった口調で歌う馬鹿を俺は知っている。よく知っている。
ママンがあいつの二つ名を口にしたが、ゼツキはまた違う異名を……
――――――ロックの魔王
それは、こいつが俺の思った通りの男だと証明するものだった。
「ええ、腹を割って話をするためにねん。邪魔するなら構わないわん。私も今はまだ第三者。でもん、邪魔するなら私は大切なお友達のヴェルちゃんの味方になるわん」
ママンを敵に回す。それの意味を誰よりも理解しているのがゼツキだった。
そして、他の連中も同じ。六鬼大魔将軍の一人を指一本でぶっとばしたママンに対して腰が完全に引けていた。
だが、ゼツキもただでは行かさない。
「待て、ならば吾輩も行こう!」
それが最大限の譲歩だった。
「やはり、貴様をこの場で相手にするのは明らかに分が悪い。尋常ならざる被害を被るだろう。だが、キシン様が貴様の話を聞いて拒否されたら、それまでだ。力づくで話を聞かせようとしても同じ。吾輩が命に代えても貴様を殺す」
「いいわん。もし私が無粋なマネをするようなら、抱くなり犯すなり好きになさいん」
ありえない展開だった。戦うためでなく、話をするために魔王城に乗り込む、魔族、亜人、そして人間。
ん? 人間?
「って、何で俺が行くんだよ! 関係ねーじゃん!」
「あるわよん。だって、あなたが鍵なんだからん」
鍵?
「そう。マッキーの作り上げた、愛とお金の組織はもう必要ない。お金はもはや組織において重要な要素ではないからん」
「愛と金? ラブ・アンド・マニーのことかよ」
「ええ、そうよん。でもね、もう今度からは違うん。愛と……平和を目指す組織へと生まれ変わるのよん」
「って、ちょっと待て! ママンは乗るのかよ! 断ってたじゃねえかよ、第四勢力の話!」
「だって、うちの娘が~、前世で好きな子と現世で結ばれるなんて、とてもロマンチックな恋じゃな~い! そして共に平和な世を目指す。素敵じゃやな~い!」
「おま、ふざけんな! だいたい、いらねーよ、あんなガングロビッチエルフ!」
ふざけんじゃねえ! 何で俺があんなギャル女と!
大体、愛と平和? それって、
「新組織。『ラブ・アンド・ピース』の設立よ」
「ダ、ダッサアアアアアアアアアアアアアアア!」
俺の知らないところで、俺の世界が動き始めていやがった。
「ヴェルトくん……あなたって人は……」
「俺はもうお前が分からねえよ……」
「我らがアルーシャ姫もあいつに何だか惚れてたかだったし……あいつ、もう、何なんだよ」
「しかも、サラりとユーバメンシュの娘と結婚とかなんとか……」
「し、信じられないであります」
「そして、あの四獅天亜人のユーバメンシュ相手にあの態度はなんなり!」
「ヴェルト様! 我々は心底、あなたに付き従うでしょうが!」
いや、そこ、感動してんなよ!
つか、このまま流されるわけには……
「じゃあ、掴まって、いくわよ~~~~~~ん!」
「はっ? って、どうわあああああああああ!」
「ま、待たんかー!」
その時、俺とゼツキを両脇に抱えて、ママンが猛ダッシュ。
ってちょっと待て、すげえ風圧! つか、どこ走ってんだよ! このままじゃ、城にぶつかって……
「おほほほほほほほほほほほほ! おっほほ~のほ~~~!」
あり得ねえ……
普通は、城の内部に入って、階段を登ってくんじゃねえの?
そんで、通路で敵と遭遇して戦って突き進むのが、魔王城攻略の定番だろ。
なんで、城の外壁を直角に登ってんの? しかも手を使わずに。
しかも、途中からダッシュじゃなくてスキップになってるし!
「もう、いやだ。なんか、スゲー色々と……」
「若造よ。少し気になったのだが、ユーバメンシュの娘と結婚するのか?」
「はっ? しねーし! 何で?」
「いや、ただ、覚えておくとよい。ユーバメンシュの娘とつがいになるということは、ユーバメンシュは貴様の義理の親になるということを」
それだけはゼッテー嫌だ!
いや、ありえねえし。てか、何で俺を憐れんだ目で見てんの?
「苦労しているようだな」
「ああ。だから、楽しんでるよ」
なんか、お互い何もかもがアホらしくなって、気づいたら俺たちは互いに苦笑していた。
ママンはそんな俺たちのやり取りに機嫌を良くしたのか、鼻歌交じりでさらによじ登って行った。
「うふふ、見えてきたわん」
そして俺は、まるで天変地異が起きているかのように荒れ狂う世界の中で、全てを懸けて戦う鬼と勇者たちの死闘を目の当たりにした。
まるで神話のような光景としか形容のしようがなかった。
ハンニャーラの頂上は平面の舞台で、その舞台で七人の勇者と鬼が一人、戦っていた。
七対一? 卑怯? そんな常識を覆す、化け物がそこに居た。
「あれが、魔王!」
誰も俺たち三人に気づいていない。
その鬼は、赤でも青でもない。黄色だった。
いや、黄色いのは髪だけだった。肩口ぐらいの長さの癖っ毛。
体も細い。というか、普通の人間と同じぐらいの体格だ。
稲妻柄のマントと黒一色の長そで長ズボンと軽装。
手に持つ武器も、金棒ではなく、二本の短剣。
「鬼の王……鬼、なのか?」
俺が何よりも驚いたのが、鬼の王が鬼らしくなかった。
二本の角が額から出ているが、その容姿は人間に近い。
いや、それどころか若いぞ? 異常に若い。
ゼツキの相棒ってことは、四十~五十は余裕であると思っていたのに、二十代にしか見えねえぞ?
しかも、無駄に端正な顔立ちすぎて、イケメンでロアといい勝負じゃねえか!
奴は一体?
「鬼魔族とは一線を引く種族よん。かつて、人間との奴隷の血を引いた子が、突然変異のように覚醒した。鬼人族! 年齢は、七十歳ぐらいだったかしらん?」
人間との奴隷? あのサイクロプスのラガイアのような存在か?
っか、七十! ジジイじゃねえかよ!
世にも珍しい不老長寿って奴か?
色々驚くことがありすぎる。
「ふふふ、やるではないか、愚かなるヒューマンたちよ」
すると、勇者との戦いに高揚しているのか、魔王キシンが口を開く。
威厳に満ちた表情と声で……
「グッドなパッションだ。久々にマイ・ソウルもフライ・ハイだ。このバトルは一つのレジェンドとして、ユーたちのことはフォーエバーに、マイ・メモリーにセーブしておくとしよう。さあ、カモン! ベイベーたちよ!」
……のっけから、スゲー不意打ちなダイナマイトパンチを放ってきやがった。
「なぁ……人類大連合軍の陣営に、お前らの魔王のメッセージ付きの魔鏡が送られてきたが、あの文章から想像できない鬼だな」
「あの文章は吾輩が書いた」
「なるほどな。つーか、お前も苦労してんだな」
目の前で次元違いの死闘を繰り広げる勇者と鬼。
本来ならその光景に目を奪われ、世界の行く末を案じて、勇者やフォルナたちの勝利を信じて祈りでも捧げているところなんだろうが、俺の頭の中には別の思いがあった。
「どう、ヴェルくん。あれが魔王キシン。私はねん、キーくんから、私の娘やあなたと似た何かを感じるのよん」
ママンが俺に耳打ちしてくる。
俺はただ、目を細めながら、心を整理していた。
あいつ……うそだろ……まさか……
「ふははははは、どうした? ミーのボディにはその程度のアタックなどノープロブレムだぞ?」
この世界で俺は何語を話しているのか?
正直な話、この世界の文字と漢字の違いは分かるが、この世界の言語と日本語の違いがよく分からない。
だけど、これだけは分かる。
この鬼の喋り方は明らかに異質であった。
そしてそれだけじゃない。
その異質が、俺には懐かしく感じるものでもあった。
そして、逆手短剣を両手に持ち、鬼が踊る。
「ワタクシが行きますわ! ギャンザ、フォローを! 天翔ける、疾風迅雷!」
「悲しい。私はただただ、悲しいです、キシン。分かり合えないこの無念! 神聖魔法・神炎!」
フォルナが光速で陽動し、五年ぶりにその姿を見た俺のトラウマのギャンザが無慈悲な炎をキシンに向ける。
だが、キシンはまるで二人の攻撃が予めわかっていたかのように、無駄な動き一切なく回避していく。
「ふふふ、ベリー惜しいな」
いや、惜しくはねえ。明らかに余裕を持って回避した。
「臓物を細切れにしてくれる!」
「ぶっとばしてやるんだから!」
だが、キシンが回避することを分かっていたのか、キシンの後方から二人の勇者。
「聖魔斬烈剣!!」
確か、暗黒剣士レヴィラルだっけ?
「精霊英化!」
精霊戦士ヒューレだっけ?
あんまよく知らない二人だが、恐らくはフォルナと同格。
さらに、
「くらえ! シューティングスター!」
捕まってたみたいだけど、助かったのか? 流星弓のガジェだっけ?
巨大な黄金の弓矢を持った、勇者たちの中で一番の巨漢の男が、魔力で作られた矢を連射する。
フォルナとギャンザが陽動で、残る三人の勇者で叩く?
何とも豪華すぎて胃もたれするぐらいのフルコースだ。
俺なら前菜で腹一杯になってるところだ。
だが、
「ふっ、ミーの魔曲を聞いても、まだ懲りぬか? なら、アンコールだ! 響けソウル!」
その時、二本の短剣の形状が変化した。
二本の短剣が重なり合い、V字の武器に変化した。
ブーメラン? いや、違う!
「フライーーーーーーング、ブイ! アーユーレディ?」
弦が付いている!
「ロックンロールファンタジーィィィィィィィ!」
武器じゃねえ! 楽器だ! しかも、ギターだ!
この世界じゃ一度も見たことがねえ、かつての世界にあったもの。
稲妻カラーのフライングV。
「あ、あの野郎!」
アレを、俺は知っている!
「来るわ、ヴェルちゃん! 魔王が放つ暴力的な音楽戦闘術! 『狂暴音術士キシン』と、世界と歴史にその名を刻む怪物よん♪」
「ふふ……ちなみに、キシン様はその渾名はあまり好きではないようだがな……そこは、『リモコンのヴェルト』と同じだな。そして、キシン様はご自身のことはこう呼ばれている――――」
まさか、まさか!?
あのふざけまくった口調で歌う馬鹿を俺は知っている。よく知っている。
ママンがあいつの二つ名を口にしたが、ゼツキはまた違う異名を……
――――――ロックの魔王
それは、こいつが俺の思った通りの男だと証明するものだった。
0
お気に入りに追加
684
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~
トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。
旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。
この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。
こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

Link's
黒砂糖デニーロ
ファンタジー
この世界には二つの存在がいる。
人類に仇なす不死の生物、"魔属”
そして魔属を殺せる唯一の異能者、"勇者”
人類と魔族の戦いはすでに千年もの間、続いている――
アオイ・イリスは人類の脅威と戦う勇者である。幼馴染のレン・シュミットはそんな彼女を聖剣鍛冶師として支える。
ある日、勇者連続失踪の調査を依頼されたアオイたち。ただの調査のはずが、都市存亡の戦いと、その影に蠢く陰謀に巻き込まれることに。
やがてそれは、世界の命運を分かつ事態に――
猪突猛進型少女の勇者と、気苦労耐えない幼馴染が繰り広げる怒涛のバトルアクション!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる