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第六章
第174話 再会の混浴
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人類最強の包囲網に俺は捕まった。
正直、マニーの件でイライライライラ状態突破中だ。
今すぐにでも森を越え海を越え、山だろうと谷だろうと越えてでもマニーを見つけ出してブチのめしてやりたいところだが、今の俺は身動き一つ取れない状況だった。
「だーかーらー! テメェら帝国があのクソ馬鹿女をちゃんと捕まえてねえからだろうが! あの女が脱走したせいで、俺は仲間ともはぐれて、しかも人生がヤバイ事になりそうなんだよ!」
そうだ、だから……
「だから……」
俺はマジメな話をしてんだから……
「まずは服着ろお前ら! つーか、離れろッ!」
全裸のフォルナに羽交い絞めされ、正面からは一応手ぬぐいで前だけ隠した綾瀬に手のひらを押し付けられていた。
「お黙りなさい!」
「動くとひどいわよ!」
フォルナからは、絶対に逃がさないという意思。
綾瀬からは、逃げようとしたら撃つという意志が感じる。
何でこいつら邪魔すんだよ!
「ぜったいに逃しませんわ! ヴェルトは、離したらまたどこかへ行ってしまいますもの!」
「ええ、そうね。というよりも、今の話……全然要領を得ないんだけど、ようするに脱走したマニーと会って、喧嘩して、神族大陸に連れてこられて、置き去りにされたというところかしら?」
タイラーたちのことは、こいつらには伏せた。
言っても問題ないんだろうが、未だに俺もさっきの話が頭の中で整理できてねえからだ。
「ああ、そうだよ。それをあの女、バイバ~イとかほざきやがって! ぜってー、ボコる!」
だから、余計なことは省略して、脱走したマニーと会って、ここに連れてこられて置き去りにされたとだけ伝えた。
だが、省略しすぎたのが問題だった。
「マニーがそんなことをしましたの? 絶対に許せない敵ではありますが……粋な計らいを……」
「まったく、何を考えているのかしらね」
「って、お前ら何で少し嬉しそうなんだよ!」
なんか、内心、「マニー、デカした」的な顔しやがって。
「だ~、クソ! お前らな、こっちは仲間置き去りにしちまったんだぞ? 今頃あいつらどうなってることやら」
「兄様とウラたちでしょう? どう考えても無事に決まってますわ」
「まあ、そうなんだろうけど……つーか、神族大陸って言っても、マジでどこだよ、ここは」
「ヴェルト、あなた本当に何も知らずに連れてこられましたのね。ここは、ヘラクレス大森林。現在、ジーゴク魔王国の掃討軍を迎え撃つ、防衛ラインですわ」
「サラッと最前線じゃねえかよ!
肩を竦めて呆れたようにため息はかれ、拘束が少し緩んだ気がした。
とりあえず脱出しようとしたんだが、次の瞬間、フォルナに勢いよくひっくり返された。
「ふぼっ! な、何しやがる!」
あっつ! しかも、服がビショビショになっちまったし!
「少し大人しくしてなさい。あまり騒ぐのはよろしくありませんわ」
「って、できるか! 濡れちまったじゃねえかよ!」
うわ、グッショリだ。どーすんだこれ?
「つか、お前ら隠すならもっとデカイタオル使えよ! チラチラ見えてんだよ!」
ダブルでお姫様なんだから、あんま十五のガキを刺激するようなマネ……
「あっ、キャ、い、いやですわ、ワタクシったら! は、はしたない………」
「………って、ちょっ!」
って、今頃気づいたのかよ。
慌てて自分の体を手で隠しながら、肩まで二人はお湯にザブン。
お湯が飛んで俺の顔面まで跳ね上がり、もう俺は頭までずぶ濡れだ。
「て、テメェら……」
「ご、ごめんなさい、ヴェルト。ワタクシとしたことが……」
「みた? 朝倉くん、み、見た?」
お前、この状況で俺が見えなかったって言ったら安心すんのか?
でも、ムカついたから……
「全部見た!」
「いやあああああああああああああああ!」
あらら、帝国のお姫様が今頃になって恥ずかしさから、水面に何度も頭突きしてやがる。
「綾瀬……」
「な、なによ、なによ~」
「お前、毛ェ生えてな――――ッ!」
ぶっ飛ばされた。
「しん、信じられないわ! 君、この世の全てのオスの中で最も下劣で醜いことを言ってくれるわね! このことが帝国に知れ渡ったら、ハッキリ言って、打ち首の晒し首よ?」
「ああん? こちとら、てめえらがいきなりマッパで現れたせいで、あのマニーを逃がしたんだよ! もともとテメェらが姫のくせにこんな森の中で全裸でいる方がワリーんだよ!」
「こ、このッ、き、君って、……わ、私そんなにダメかしら……前世の頃もそうだけど、現世でもなかなかのプロポーションだとは自分でも……」
あーもう、ダメだ。さっきから何を言っても全然スッキリしねえ。
まさかこんな事態になるとは思わなかった。
これは、『負けた』というより、『やられた』って気分だ。
「くそ………」
とりあえず、肌に張り付いて気持ちわりー服をさっさと脱いで……
「って、朝倉くん! 何を脱ぎだしているのよ!」
「あん? って、うおっ、そうだった! って、テメェらが先に上がって服着ろよ!」
アブね~、俺は何をナチュラルに幼馴染と元クラスメートを前に混浴しようとしてるんだよ。
もう、そういうのもうまく考えられねえぐらい動揺してんのか?
森の中の秘湯の湯気が、何だか頭をポーッとさせやがる。
「べ、別に…………構いませんわ」
はっ?
「ちょっ、フォルナ!」
「おいこら、フォルナ」
何を「覚悟決めた」みたいな顔で頷いてんだよ。
「ワタクシは、別に……ヴェルトと一緒にお風呂入るのは初めてではありませんもの。昔はよく一緒に入りましたわ」
大昔だろうが。アウトだよアウト。
「……朝倉くん、ちなみに何歳のころまで?」
「……十歳」
「それも、アウトよ」
なのに、温泉でのぼせて少し火照った顔でフォルナは俺の服のボタンやズボンを力づくで剥ぎやがった!
「って、おおおおおおおい!」
「ふぉ、フォルナ、あ、あなた正気!」
いや、完全に混乱してるよ! 目がグルグル回ってるじゃねえかよ!
俺の服剥いで? 服を投げ捨て? 今度は正面から俺を抱きしめ……待て待て待て、なんか当たってる! お前の吐息やら、なんかポツンとしたのが、肌が、とりあえず当たってる!
「あったかい……」
「あ゛?」
「本物の……ヴェルトですわ………」
あっ……
「帝国で再会して、もう十分充電したと自分に言い聞かせましたのに……でも、人類大連合軍は敗れ……それでも人類の絶望を拭うために、再び帝国から派遣されて……戦うと決めて……でも、もし、もう二度とヴェルトと会えなかったらどうしようって……」
震えてやがる。
まあ、当然だよな。
この短い間に何があったかはさっき聞いた。
でも、こいつは人類を代表する希望の一人だから、誰にも弱音を見せるわけにはいかなかったから。
「…………は~~~」
なんだか、今のフォルナを見ると、口喧嘩するのも下らないと思ったのか、綾瀬は肩までお湯に浸かってソッポ向いた。
「まあ、ここは帝国じゃないから……別にいいわよ、入っても……もともと君には見せてもいいというか、将来的に見せる予定だったというか……ブツブツ」
「………ったく、フォルナ。もう逃げねえから、お前も落ち着けよ」
何度俺の懐に入っても、小さく感じる。小さく見える。
またこいつは色々と無茶してんだな。
「うん、だったら許しますわ」
「おお、許してくれ」
この程度で救われるなら、まあ、少しぐらいは居てやるか。
そう思って、頭を撫でてやった。
心地よさそうに、でもくすぐったそうに受け入れながら、フォルナは俺にしなだれかかって、俺の肩に頭を預けた。
正直、マニーの件でイライライライラ状態突破中だ。
今すぐにでも森を越え海を越え、山だろうと谷だろうと越えてでもマニーを見つけ出してブチのめしてやりたいところだが、今の俺は身動き一つ取れない状況だった。
「だーかーらー! テメェら帝国があのクソ馬鹿女をちゃんと捕まえてねえからだろうが! あの女が脱走したせいで、俺は仲間ともはぐれて、しかも人生がヤバイ事になりそうなんだよ!」
そうだ、だから……
「だから……」
俺はマジメな話をしてんだから……
「まずは服着ろお前ら! つーか、離れろッ!」
全裸のフォルナに羽交い絞めされ、正面からは一応手ぬぐいで前だけ隠した綾瀬に手のひらを押し付けられていた。
「お黙りなさい!」
「動くとひどいわよ!」
フォルナからは、絶対に逃がさないという意思。
綾瀬からは、逃げようとしたら撃つという意志が感じる。
何でこいつら邪魔すんだよ!
「ぜったいに逃しませんわ! ヴェルトは、離したらまたどこかへ行ってしまいますもの!」
「ええ、そうね。というよりも、今の話……全然要領を得ないんだけど、ようするに脱走したマニーと会って、喧嘩して、神族大陸に連れてこられて、置き去りにされたというところかしら?」
タイラーたちのことは、こいつらには伏せた。
言っても問題ないんだろうが、未だに俺もさっきの話が頭の中で整理できてねえからだ。
「ああ、そうだよ。それをあの女、バイバ~イとかほざきやがって! ぜってー、ボコる!」
だから、余計なことは省略して、脱走したマニーと会って、ここに連れてこられて置き去りにされたとだけ伝えた。
だが、省略しすぎたのが問題だった。
「マニーがそんなことをしましたの? 絶対に許せない敵ではありますが……粋な計らいを……」
「まったく、何を考えているのかしらね」
「って、お前ら何で少し嬉しそうなんだよ!」
なんか、内心、「マニー、デカした」的な顔しやがって。
「だ~、クソ! お前らな、こっちは仲間置き去りにしちまったんだぞ? 今頃あいつらどうなってることやら」
「兄様とウラたちでしょう? どう考えても無事に決まってますわ」
「まあ、そうなんだろうけど……つーか、神族大陸って言っても、マジでどこだよ、ここは」
「ヴェルト、あなた本当に何も知らずに連れてこられましたのね。ここは、ヘラクレス大森林。現在、ジーゴク魔王国の掃討軍を迎え撃つ、防衛ラインですわ」
「サラッと最前線じゃねえかよ!
肩を竦めて呆れたようにため息はかれ、拘束が少し緩んだ気がした。
とりあえず脱出しようとしたんだが、次の瞬間、フォルナに勢いよくひっくり返された。
「ふぼっ! な、何しやがる!」
あっつ! しかも、服がビショビショになっちまったし!
「少し大人しくしてなさい。あまり騒ぐのはよろしくありませんわ」
「って、できるか! 濡れちまったじゃねえかよ!」
うわ、グッショリだ。どーすんだこれ?
「つか、お前ら隠すならもっとデカイタオル使えよ! チラチラ見えてんだよ!」
ダブルでお姫様なんだから、あんま十五のガキを刺激するようなマネ……
「あっ、キャ、い、いやですわ、ワタクシったら! は、はしたない………」
「………って、ちょっ!」
って、今頃気づいたのかよ。
慌てて自分の体を手で隠しながら、肩まで二人はお湯にザブン。
お湯が飛んで俺の顔面まで跳ね上がり、もう俺は頭までずぶ濡れだ。
「て、テメェら……」
「ご、ごめんなさい、ヴェルト。ワタクシとしたことが……」
「みた? 朝倉くん、み、見た?」
お前、この状況で俺が見えなかったって言ったら安心すんのか?
でも、ムカついたから……
「全部見た!」
「いやあああああああああああああああ!」
あらら、帝国のお姫様が今頃になって恥ずかしさから、水面に何度も頭突きしてやがる。
「綾瀬……」
「な、なによ、なによ~」
「お前、毛ェ生えてな――――ッ!」
ぶっ飛ばされた。
「しん、信じられないわ! 君、この世の全てのオスの中で最も下劣で醜いことを言ってくれるわね! このことが帝国に知れ渡ったら、ハッキリ言って、打ち首の晒し首よ?」
「ああん? こちとら、てめえらがいきなりマッパで現れたせいで、あのマニーを逃がしたんだよ! もともとテメェらが姫のくせにこんな森の中で全裸でいる方がワリーんだよ!」
「こ、このッ、き、君って、……わ、私そんなにダメかしら……前世の頃もそうだけど、現世でもなかなかのプロポーションだとは自分でも……」
あーもう、ダメだ。さっきから何を言っても全然スッキリしねえ。
まさかこんな事態になるとは思わなかった。
これは、『負けた』というより、『やられた』って気分だ。
「くそ………」
とりあえず、肌に張り付いて気持ちわりー服をさっさと脱いで……
「って、朝倉くん! 何を脱ぎだしているのよ!」
「あん? って、うおっ、そうだった! って、テメェらが先に上がって服着ろよ!」
アブね~、俺は何をナチュラルに幼馴染と元クラスメートを前に混浴しようとしてるんだよ。
もう、そういうのもうまく考えられねえぐらい動揺してんのか?
森の中の秘湯の湯気が、何だか頭をポーッとさせやがる。
「べ、別に…………構いませんわ」
はっ?
「ちょっ、フォルナ!」
「おいこら、フォルナ」
何を「覚悟決めた」みたいな顔で頷いてんだよ。
「ワタクシは、別に……ヴェルトと一緒にお風呂入るのは初めてではありませんもの。昔はよく一緒に入りましたわ」
大昔だろうが。アウトだよアウト。
「……朝倉くん、ちなみに何歳のころまで?」
「……十歳」
「それも、アウトよ」
なのに、温泉でのぼせて少し火照った顔でフォルナは俺の服のボタンやズボンを力づくで剥ぎやがった!
「って、おおおおおおおい!」
「ふぉ、フォルナ、あ、あなた正気!」
いや、完全に混乱してるよ! 目がグルグル回ってるじゃねえかよ!
俺の服剥いで? 服を投げ捨て? 今度は正面から俺を抱きしめ……待て待て待て、なんか当たってる! お前の吐息やら、なんかポツンとしたのが、肌が、とりあえず当たってる!
「あったかい……」
「あ゛?」
「本物の……ヴェルトですわ………」
あっ……
「帝国で再会して、もう十分充電したと自分に言い聞かせましたのに……でも、人類大連合軍は敗れ……それでも人類の絶望を拭うために、再び帝国から派遣されて……戦うと決めて……でも、もし、もう二度とヴェルトと会えなかったらどうしようって……」
震えてやがる。
まあ、当然だよな。
この短い間に何があったかはさっき聞いた。
でも、こいつは人類を代表する希望の一人だから、誰にも弱音を見せるわけにはいかなかったから。
「…………は~~~」
なんだか、今のフォルナを見ると、口喧嘩するのも下らないと思ったのか、綾瀬は肩までお湯に浸かってソッポ向いた。
「まあ、ここは帝国じゃないから……別にいいわよ、入っても……もともと君には見せてもいいというか、将来的に見せる予定だったというか……ブツブツ」
「………ったく、フォルナ。もう逃げねえから、お前も落ち着けよ」
何度俺の懐に入っても、小さく感じる。小さく見える。
またこいつは色々と無茶してんだな。
「うん、だったら許しますわ」
「おお、許してくれ」
この程度で救われるなら、まあ、少しぐらいは居てやるか。
そう思って、頭を撫でてやった。
心地よさそうに、でもくすぐったそうに受け入れながら、フォルナは俺にしなだれかかって、俺の肩に頭を預けた。
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