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第五章

第145話 旅立ちの準備

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 フォルナの昔から変わらない気持ちを確認した次の日に、別の女との間に子供が出来た。


 数日の休養と準備を経て、俺たちは天空族の母と子を連れて旅立つことになっちまった。

「ぱー、ぶんぱ! ぶんぱ!」
「はいはい、抱っこしてやってるだろ」
「あう~、きゃおう!」
「あ~、ぺしぺし叩いてんじゃねえよ」
 
 旅立ちの当日。俺らは天空王国ホライエンドの通用口に全員集合。
 多くの天空族たちが見送りに来てズラーっと取り囲むように並んでいる中、俺は子供をあやしていた。

「うひゃ~、ちっちゃいっす~、オイラ、めろめろっす~!」
「へ~、すごいね、弟くん。赤ちゃんの扱いに慣れてるなんて、意外~」
「殿、殿! 是非……是非、拙者にコスモス殿を抱っこさせて頂きたくお願い申し上げます!」

 目を輝かせているムサシに、コスモスを手渡そうとした。
 だが、なんか知らんがいきなりコスモスがぐずりだした。

「うぎゅ~」
「あうわ~、か、かわいいでごじゃる~、ちっちゃいでごじゃる~」
「えう、う、えう」
「って、あ~! 何で泣き出しているでござる! 拙者、決して怪しい者ではないでござる!」
「ほぎゃー! ほぎゃー! ほぎゃー!」

 あ~あ、泣いちゃったよ。

「と、との~との~、との~、あうわ、わわわ、はう、どど、どうすれば~! 拙者はどうすれば~!」
「あ~、はいはい、ほら、貸せよ。ほら、ほらほらほーら、泣くな~」
「ほぎゃ、ほ、えう、え、えう。あうー! あう! きゃう!」

 パニくって自分がむしろ泣きそうなムサシから再びコスモスを受け取って、ゆっくり持ち上げたり、クルクル回ったりして、泣くタイミングをずらそうとした。
 すると、コスモスは泣くのを忘れて、キャッキャと笑い出した。

「お、おおおおお! お見事でござる! まさか、殿がこのような技術を習得されているとは!」
「ふ~ん。まっ、弟くんは扱いがうまいだけじゃなくて、コスモスちゃんも自分に流れる力が弟くんのものだって、分かってるから安心しているのかもね」
「あ~、いいっすね~、オイラ、この子のためなら一生ゆりかごでもいいっす!」

 ああ、コスモスは今度は泣いたりはしゃぎすぎて疲れたのか、またウトウトし始めた。何とも疲れるというか、ハナビ以来の懐かしい感覚というか。
 しかし、本当にこれからどうすりゃいいんだ?

「おい、愚弟。実際のところ、テメエはどうする気だ?」
「なに? 嫁さんの話?」
「んなもん、愚妹が正妻ならどうでもいい。そのクソガキをマジで同行させる気か?」

 だよね。危ないよね。いや、マジで。
 こんな、まだまだザ・赤ちゃんみたいな状態で、俺たちの旅に、ましてや神族大陸に行くようなことに巻き込めるはずがないし、俺たちだって守りきれるはずがねえ。

「「「ええええええ!」」」

 なのに、ムサシ、クレラン、ドラがガチで反対してくる。


「しかし、殿! 危ないとか危なくないとか、可愛くて可愛くてとか!」

「テメエは何が言いたいんだ?」

「ぶーぶー、いいじゃん! コスモスちゃん連れて行こうよ! 大体、見てよ! 人類最強ハンターに、魔王国の姫に、天才亜人剣士に、モンスターマスターに、伝説のドラゴンに、七大魔王を倒した弟くん! そして天空族皇女。こんな豪華なボディーガードが一緒なら、むしろ世界一安全でしょ!」

「そのワリには、これまでかなりしんどい旅だったぞ?」

「オイラ、オイラ、もっとコスモスちゃんと遊びたいっすー! ウラ姉さん落ち込み気味だし、ムサシ姉さんオバカだし、クレラン姉さん怖いし、ファルガ兄さんムスッとしてるし、癒しが欲しいっす!」

「なんなんだ、そのお前らのよく分からねえ理由は」


 大体、なんで天空族もこいつらも、エルジェラとコスモスのセットをアッサリ了承してやがる。
 コスモスが俺の子供かどうかは別にして、旅に連れて行くかどうかは別問題だろうが。
 つか、俺の方がおかしいのか? 何で、元不良の俺が一番、子供の安否を気遣ってるんだ?

「往生際が悪いですよ、パパさん!」
「家族は一緒が一番なんです、お父さん!」
「我々天空族は父親というものを知りません。ですので、あなたに見せて頂きたい、親父殿!」
「ダディ、ガンバ!」

 案の定、天空族たちからもブーイングだ。
 こいつらは…………

「ヴェルト様。いや、もはや義弟と呼ばせてもらおう!」
「オレらの妹と姪を頼んだぜ」

 ロアーラとレンザまで、親指突き立てて軽いノリだ。
 なんだ、その親指は!
 本当に勘弁してくれ。どうなっても知らねえぞ?

「まあ、仕方ねえ。テメエらのクソ妹とクソ娘は、こっちでどうにかする」

 おい、ファルガ、あんま安請け合いしないでくれよ。
 なのに、ファルガは「そんなことより」と別の話題を出した。

「おい、それで、チロタンの配下共はどうする気だ? 何千か居たはずだろ?」

 それもそうだ。チロタン自身が死んだというか行方不明になった以上、その配下共はどうするのか分からないままだ。
 チロタンの命令とはいえ、天空王国を襲撃した。
 それに、世界が認知していない天空王国の情報まで知っている。
 もし、何もせずに解放すれば、終わりのない復讐やら、他の欲にまみれた奴らが現れるかも知れない。
 だが、ファルガの問いかけに、ロアーラは特に揺れることはなく返した。

「とりあえず、全員を他の主要都市に移動させる。そこで、全皇女と会議して、今後の流れは決める予定だ」
「主用都市か」
「ああ。さすがに我らだけでは決められないからな。まあ、それはあくまでこちらの問題。そなたたちは、こちらのことは気にせず、ただ、エルジェラとコスモスだけを頼む」
「そうか……分かった。とりあえず、俺たちもチロタンを討ったことは、世界が気づくまでは黙っておくことにする」
「色々と面倒をかけるな」

 何だか、二人で色々と決めているようだが、ロアーラはどこかファルガに通じるところがあるかもしれない。
 普段はクールなツラしてるくせに、家族や国に対する思い入れが強い。まあ、二人とも王族ってところがあるのかもしれないが。ようするに、頼もしいってことなんだが。

「みなさん、お待たせしました」

 その時、ようやく旅の準備を終えたエルジェラが現れた。
 すると、ウトウトしていたコスモスも、大好きな母親の存在に気づいて目を覚まし、そしてすぐに何かを訴えるように泣いた。

「おぎゃーおぎゃーおぎゃー!」
「あらあら、コスモス、お腹が空いたのね。まっててね…………はい!」

 ぐずるコスモスに、エルジェラはいきなり胸元を開いてオッパイをあげ始めた。

「あむ! あむあむあむ」
「ふふ。おいしい?」
「あぶうう。あぶううう」

 へぇ、エルジェラもすっかり母親だな……

「って! お前、いきなり目の前でボロンと生乳だしてんじゃねえよ! 俺とかファルガとか男がいるんだぞ! つか、それを絶対に地上世界でやるなよな!」
「えっ、ど、どうされたのです? ヴェルト様」
「あ~、ダメだこの女。男が居ない環境で育ったからか、貞操観念が薄すぎる」

 あ~、ビックリした。
 そりゃー、俺も既に間近で見たり揉んだり吸っ……とにかく色々と経験させてもらったとはいえ、何の前触れもなくこの形の整った巨乳を出されると、卒倒しちまう。
 
 本当にコレを連れて行っていいのか?

 なんか、色々とヤバイような……ってか、俺も……我慢できるだろうか……?
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