146 / 290
第五章
第143話 夫婦と娘
しおりを挟む
妙な称号もらっちゃうし、今後の旅に母娘コンビが同行してくるし……ただでさえ、七大魔王とタイマンした後で疲れているってのに……
「あ~、疲れた、俺はもう寝るぞ」
これまで自分の全てを出し切る戦いは何度もしてきたが、自分の持っている力を何倍にも引き出して戦ったのは数える程。
流石に今日はもう体も精神も疲れた。
「そうだな。私たちももう寝よう」
「ふわ~あ。お姉ちゃんも疲れたわ」
「ふかふか雲ベッドで寝るの楽しみっす~!」
「殿、警護は拙者にお任せくだされ」
「まあ、愚弟はゆっくり休んでおけ」
天地友好者へのお礼やらエルジェラの出産祝いとコスモス誕生祝いを同時に行い、天空世界では女たちの宴会が終りを見せなかった。
正直俺も、かなり疲れきっていたところもあり、目の前で天使たちが酔っ払って裸踊りしても、あまり興奮しなかった。
「なんだよ~、お前ら寝るなよな~。寝るならチンチン見せてからにしろよー!」
「まったくその通りね。大体、今宵は無礼講ということで、我らは何人も肌を晒しているというのに、そちらは一人も脱いでいないというのは返って無礼だと思うが?」
「ちーんちん! ちーんちん! ちーんちん! ちーんちん!」
だから、見せねーよ、と俺とファルガが睨みながらその場を後にしようとしたら、コスモスを抱きかかえたエルジェラが俺に駆け寄ってきた。
「ヴェルト様! お休みになられる前に、この子にご挨拶させてください。ほら、コスモス。ヴェルト様にお休みなさいをしなさい」
「あう~、きゃう! きゃうー、うふ~」
「あらあら、この子ったら、こんなに笑って」
エルジェラの腕の中で、両手を俺に向かって伸ばすコスモス。
俺を確実に認識し、確かに笑っているように見える。
赤ん坊が笑うのは、ただの頬の痙攣のはずなのだろうが、俺にはその笑顔が心の底からの笑顔に見え、思わず俺自身の頬も緩んだ。
「ああ。おやすみな」
「んば、あうば!」
頬を軽く撫でて、おやすみの挨拶をして、俺はさっさと寝ようと………
「あぶ~~~、うきゃううううううっ! うわううううううっ!」
と、思ったら、急にコスモスが大声で泣き出しやがった。
「まあまあ、コスモスったら、どうしたの? ほら、マーマはここですよ~?」
「うぬば! あぶううっ! ばっ、ばうっ!」
「コスモス? あら………?」
なんだ~? 腹が減ったのか? それともおもらしか? いや、違う。コスモスは立ち去ろうとする俺に向かって手を伸ばして、大声で叫んでいる。
「………えっ、俺?」
「あぶうっ!」
「………」
「むふ~、あぶっ!」
試しに、踵を返して戻ってみた。
すると、コスモスがメチャクチャ嬉しそうに頷いているように見えた。
「………じゃあ、今度こそ……おやすみな」
「うぎゃうううううううううっ! ああああああっ! あああああああっ!」
「………マジかよ」
機嫌が治ったのでもう一度「おやすみなさい」をして行こうと思ったら、また泣かれた。
それだけで、なんかもう大体分かった。
「う、うぬ、うぬぐぐぐぐぐ、こ、これは」
「あははは、ウラちゃん、嫉妬してるね~。でも、そっかー、コスモスちゃん弟くんと離れたくないのね~」
「うっひゃ~、そうすね! パパと一緒じゃないとダメすね!」
「あう、あうう~、な、なんて可愛いでござるか~」
「やれやれだ」
やれやれだよ、全く! つまり、これってそういうことだろ?
「あの、ヴェルト様………」
「おう」
「その、大変お疲れなのは重々承知しております。ですが、その………この子ったら、………その………」
「………マジで?」
「ほ、本来! 本来であれば天空族は、母一人娘一人が通常ですが、コスモスは違います。やはり、この子は父親を認識していますので………もし、よろしければ………」
いや、それはいいんだよ。
別に夜泣きのうるさい赤ん坊と同じ空間で寝るのは、ハナビで慣れてるから。
ただ、そうなるとだ、状況的にさ、そうなるだろ?
「今晩は、よろしければ、私の部屋でお休み戴けないでしょうか? コスモスと、そして、私の………三人で」
そうなるんだよな。ほら、ウラがメッチャ悔しそうに唸っているよ。
「うう~、うう~………ええい、ヴェルト! だ、ダメだからな? え、えっちなことは禁止だからな?」
「あ~、ったく、くそ。わーってるよ。俺だって、生まれたばっかのガキの前でそんな気にならねーっての」
「そうじゃない! エルジェラは天然だから、お前がしっかりしないと、普通にとんでもないことしてくるかもしれないからだ! おっぱいとかおっぱいとかおっぱいとかぁ!」
「ま、まあ、確かにあいつは天然で、保険体育の知識に乏しいだろうが………まあ、だい、じょうぶ、なんじゃね?」
「自信なさげに言うなッ!」
本当はウラも大反対したいのだろうが、コスモスという存在が「仕方ない」と思わせてしまうために、恨みがましい顔をしながらそう言ってきた。
まあ、確かに、エルジェラは美人で、体つきもヤバイから、そういう気分にならねーと言われたら嘘になるが、やっぱ、今は俺もコスモスという存在がいるからか、多分大丈夫だろうという気持ちになった。
それに、疲れてるからな。
「ふふ、良かったわね、コスモス。今日はヴェルト様が傍に居てくださるそうよ?」
「お~~~~、おほ~~~~! あ~~~うっ♪」
ほら、こんな笑顔の前で、エロいことなんて考えられるはずがねえ。
思わず、頬が緩んじまう。
「さっ、ヴェルト様。私の部屋にいらしてください」
「お、おお」
そして、ご機嫌なコスモスを抱きかかえながら、ピッタリと俺の傍らに付くエルジェラ。
その頬も非常に緩んでいるのが分かった。
「ふふ」
「なんだよ、ニヤニヤして」
「いいえ………ただ………」
ぶっきらぼうに俺が尋ねるが、エルジェラはただ嬉しそうにしているだけ。
「ただ、私は………天空族は通常、父親という存在を知りません。母一人娘一人が常。ですから、父親が居ないということは当たり前なのです」
「まあ、そうなんだろうな。一人で子供作れるんだし」
「ええ、そうなのです。ですから、私もそうだと思っていました。ですが………こうして、コスモスが生まれ、そしてヴェルト様と出会い、こうして三人でいると………私、これがとても、しっくりくると言うのでしょうか? とてもこの状態が自然な感じで………そして、とても幸せだと感じてしまうのです」
なんか照れる。
そして、同時になんか物凄い罪悪感というか、後ろめたいという気持ちがある。
真っ先に浮かんだのが、神乃。
そして、次に、フォルナ、そしてウラ。
特にフォルナとウラの気持ちなんて手に取るように分かりすぎるため、なんつうか、この状況が非常にまずい気がする。
浮気というつもりはないし、そもそもあいつらとそういう関係というわけでもないんだが、なんか、やはり後ろめたさは感じる。
「うふふ……ヴェルト様~」
「ッ、う、お、おお」
「その、ヴェルト様はコスモスのパーパで……わ、私はコスモスのマーマで……ですから、私とヴェルト様は、パーパとマーマでありまして……」
「あ、お、おお、分かったから。おお」
それなのに、エルジェラはむしろ積極的に、歩きながらグイグイと俺の体にピタッとくっついてくる。
いかん……良い匂いというか、柔らかいというか……そんな間近で胸とか……
「不思議です。私……今日出会ったばかりのヴェルト様に……既に私の全てを委ねてしまえます」
「そ、そそ、そうですか。で、でも、仰る通り出会ったばかりなので、ゆ、ゆっくり、時間をかけてだな……」
「はい。もっともっとこれからコスモスと一緒にヴェルト様との思い出も積み重ねていきたいと思います」
たぶんだけど……もう、俺が一言でも「そういうことしたい」って言ったら、エルジェラは何のためらいもなく俺に身体を開いてくるぐらい俺に……でも、俺は耐えるぞ!
神乃のこともそうだし、フォルナとウラに悪いしな。
それに、エルジェラは保健体育の知識が乏しいために、「そういうこと」をよく知らないから、まだ現時点では自分から誘ってくることはない。
つまり、あとは俺の理性の問題。
「さあ、ヴェルト様、こちらが私の部屋になります。どうぞ、おくつろぎくださ………あら? まあ、この子ったら」
エルジェラの部屋に到着し、その部屋の中はやはり皇女に相応しい装飾の施された部屋。
そして中央にはキングサイズの、雲でできていると思われる、見るからに柔らかそうなベッド。
今日はそこでコスモスの子守でもしながら寝る、と思っていたら、コスモスは既に夢の中へと旅立っていた。
「申し訳ございません、ヴェルト様。この子ったら、安心してすぐに寝てしまいまして」
「ああ、いいよ。でも、気をつけろ? 夜中にいきなり起きて泣き出すから。赤ん坊の面倒を見るってのは、そういうことだから」
「まあ、ヴェルト様はそういった経験がおありで?」
「年の離れた妹がな。俺とウラで可愛がって面倒見てたよ」
「ふふ、それは頼もしい限りですね」
コスモスが寝て、残された俺とエルジェラは……妙な雰囲気になる前に俺は素早く横になる。
「ふふふ、ヴェルト様もおねむでしたね。では、私も……おやすみなさい、コスモス。チュッ」
コスモスにキスをするエルジェラ、そして……
「さ、ヴェルト様も。この子におやすみのキスをしてあげてください」
「……え? お、俺も?」
「もちろんです♪ それともヴェルト様はこの子がかわいくありませんか~?」
「~~~~っ、するよ」
俺をからかうようにクスクス笑うエルジェラの口車に乗り、俺は少し恥ずかしかったがコスモスのおでこにキスした。
寝ているコスモスが、何だか心地よさそうに一瞬笑った気がしたが、まぁ気のせい―――
「では、パーパとマーマもおやすみのキスです」
「……え……んごっ!?」
「ん……」
……そして、エルジェラは何のためらいもなく俺の唇にキスを……あっ、やられた……
「うふふふふ、素敵です、ヴェルト様♥」
「あ、あう、あ……」
「それでは、おやすみなさい。どうぞ、ごゆっくりなさってください」
「……熱い……寝れるかな?」
そして、結論から言うと、何だかんだで俺もそのまま死んだように一気に寝てしまった。コスモスが夜泣きしたかどうかも分からなかった。
とりあえず、俺が夜中に目が覚めなかったことからも、それほど酷いことにはならなかったようだ。
しかし、本当に酷いのは、夜ではなく朝だった。
そして、酷いのはコスモスではなく………母親の方だった。
「あ~、疲れた、俺はもう寝るぞ」
これまで自分の全てを出し切る戦いは何度もしてきたが、自分の持っている力を何倍にも引き出して戦ったのは数える程。
流石に今日はもう体も精神も疲れた。
「そうだな。私たちももう寝よう」
「ふわ~あ。お姉ちゃんも疲れたわ」
「ふかふか雲ベッドで寝るの楽しみっす~!」
「殿、警護は拙者にお任せくだされ」
「まあ、愚弟はゆっくり休んでおけ」
天地友好者へのお礼やらエルジェラの出産祝いとコスモス誕生祝いを同時に行い、天空世界では女たちの宴会が終りを見せなかった。
正直俺も、かなり疲れきっていたところもあり、目の前で天使たちが酔っ払って裸踊りしても、あまり興奮しなかった。
「なんだよ~、お前ら寝るなよな~。寝るならチンチン見せてからにしろよー!」
「まったくその通りね。大体、今宵は無礼講ということで、我らは何人も肌を晒しているというのに、そちらは一人も脱いでいないというのは返って無礼だと思うが?」
「ちーんちん! ちーんちん! ちーんちん! ちーんちん!」
だから、見せねーよ、と俺とファルガが睨みながらその場を後にしようとしたら、コスモスを抱きかかえたエルジェラが俺に駆け寄ってきた。
「ヴェルト様! お休みになられる前に、この子にご挨拶させてください。ほら、コスモス。ヴェルト様にお休みなさいをしなさい」
「あう~、きゃう! きゃうー、うふ~」
「あらあら、この子ったら、こんなに笑って」
エルジェラの腕の中で、両手を俺に向かって伸ばすコスモス。
俺を確実に認識し、確かに笑っているように見える。
赤ん坊が笑うのは、ただの頬の痙攣のはずなのだろうが、俺にはその笑顔が心の底からの笑顔に見え、思わず俺自身の頬も緩んだ。
「ああ。おやすみな」
「んば、あうば!」
頬を軽く撫でて、おやすみの挨拶をして、俺はさっさと寝ようと………
「あぶ~~~、うきゃううううううっ! うわううううううっ!」
と、思ったら、急にコスモスが大声で泣き出しやがった。
「まあまあ、コスモスったら、どうしたの? ほら、マーマはここですよ~?」
「うぬば! あぶううっ! ばっ、ばうっ!」
「コスモス? あら………?」
なんだ~? 腹が減ったのか? それともおもらしか? いや、違う。コスモスは立ち去ろうとする俺に向かって手を伸ばして、大声で叫んでいる。
「………えっ、俺?」
「あぶうっ!」
「………」
「むふ~、あぶっ!」
試しに、踵を返して戻ってみた。
すると、コスモスがメチャクチャ嬉しそうに頷いているように見えた。
「………じゃあ、今度こそ……おやすみな」
「うぎゃうううううううううっ! ああああああっ! あああああああっ!」
「………マジかよ」
機嫌が治ったのでもう一度「おやすみなさい」をして行こうと思ったら、また泣かれた。
それだけで、なんかもう大体分かった。
「う、うぬ、うぬぐぐぐぐぐ、こ、これは」
「あははは、ウラちゃん、嫉妬してるね~。でも、そっかー、コスモスちゃん弟くんと離れたくないのね~」
「うっひゃ~、そうすね! パパと一緒じゃないとダメすね!」
「あう、あうう~、な、なんて可愛いでござるか~」
「やれやれだ」
やれやれだよ、全く! つまり、これってそういうことだろ?
「あの、ヴェルト様………」
「おう」
「その、大変お疲れなのは重々承知しております。ですが、その………この子ったら、………その………」
「………マジで?」
「ほ、本来! 本来であれば天空族は、母一人娘一人が通常ですが、コスモスは違います。やはり、この子は父親を認識していますので………もし、よろしければ………」
いや、それはいいんだよ。
別に夜泣きのうるさい赤ん坊と同じ空間で寝るのは、ハナビで慣れてるから。
ただ、そうなるとだ、状況的にさ、そうなるだろ?
「今晩は、よろしければ、私の部屋でお休み戴けないでしょうか? コスモスと、そして、私の………三人で」
そうなるんだよな。ほら、ウラがメッチャ悔しそうに唸っているよ。
「うう~、うう~………ええい、ヴェルト! だ、ダメだからな? え、えっちなことは禁止だからな?」
「あ~、ったく、くそ。わーってるよ。俺だって、生まれたばっかのガキの前でそんな気にならねーっての」
「そうじゃない! エルジェラは天然だから、お前がしっかりしないと、普通にとんでもないことしてくるかもしれないからだ! おっぱいとかおっぱいとかおっぱいとかぁ!」
「ま、まあ、確かにあいつは天然で、保険体育の知識に乏しいだろうが………まあ、だい、じょうぶ、なんじゃね?」
「自信なさげに言うなッ!」
本当はウラも大反対したいのだろうが、コスモスという存在が「仕方ない」と思わせてしまうために、恨みがましい顔をしながらそう言ってきた。
まあ、確かに、エルジェラは美人で、体つきもヤバイから、そういう気分にならねーと言われたら嘘になるが、やっぱ、今は俺もコスモスという存在がいるからか、多分大丈夫だろうという気持ちになった。
それに、疲れてるからな。
「ふふ、良かったわね、コスモス。今日はヴェルト様が傍に居てくださるそうよ?」
「お~~~~、おほ~~~~! あ~~~うっ♪」
ほら、こんな笑顔の前で、エロいことなんて考えられるはずがねえ。
思わず、頬が緩んじまう。
「さっ、ヴェルト様。私の部屋にいらしてください」
「お、おお」
そして、ご機嫌なコスモスを抱きかかえながら、ピッタリと俺の傍らに付くエルジェラ。
その頬も非常に緩んでいるのが分かった。
「ふふ」
「なんだよ、ニヤニヤして」
「いいえ………ただ………」
ぶっきらぼうに俺が尋ねるが、エルジェラはただ嬉しそうにしているだけ。
「ただ、私は………天空族は通常、父親という存在を知りません。母一人娘一人が常。ですから、父親が居ないということは当たり前なのです」
「まあ、そうなんだろうな。一人で子供作れるんだし」
「ええ、そうなのです。ですから、私もそうだと思っていました。ですが………こうして、コスモスが生まれ、そしてヴェルト様と出会い、こうして三人でいると………私、これがとても、しっくりくると言うのでしょうか? とてもこの状態が自然な感じで………そして、とても幸せだと感じてしまうのです」
なんか照れる。
そして、同時になんか物凄い罪悪感というか、後ろめたいという気持ちがある。
真っ先に浮かんだのが、神乃。
そして、次に、フォルナ、そしてウラ。
特にフォルナとウラの気持ちなんて手に取るように分かりすぎるため、なんつうか、この状況が非常にまずい気がする。
浮気というつもりはないし、そもそもあいつらとそういう関係というわけでもないんだが、なんか、やはり後ろめたさは感じる。
「うふふ……ヴェルト様~」
「ッ、う、お、おお」
「その、ヴェルト様はコスモスのパーパで……わ、私はコスモスのマーマで……ですから、私とヴェルト様は、パーパとマーマでありまして……」
「あ、お、おお、分かったから。おお」
それなのに、エルジェラはむしろ積極的に、歩きながらグイグイと俺の体にピタッとくっついてくる。
いかん……良い匂いというか、柔らかいというか……そんな間近で胸とか……
「不思議です。私……今日出会ったばかりのヴェルト様に……既に私の全てを委ねてしまえます」
「そ、そそ、そうですか。で、でも、仰る通り出会ったばかりなので、ゆ、ゆっくり、時間をかけてだな……」
「はい。もっともっとこれからコスモスと一緒にヴェルト様との思い出も積み重ねていきたいと思います」
たぶんだけど……もう、俺が一言でも「そういうことしたい」って言ったら、エルジェラは何のためらいもなく俺に身体を開いてくるぐらい俺に……でも、俺は耐えるぞ!
神乃のこともそうだし、フォルナとウラに悪いしな。
それに、エルジェラは保健体育の知識が乏しいために、「そういうこと」をよく知らないから、まだ現時点では自分から誘ってくることはない。
つまり、あとは俺の理性の問題。
「さあ、ヴェルト様、こちらが私の部屋になります。どうぞ、おくつろぎくださ………あら? まあ、この子ったら」
エルジェラの部屋に到着し、その部屋の中はやはり皇女に相応しい装飾の施された部屋。
そして中央にはキングサイズの、雲でできていると思われる、見るからに柔らかそうなベッド。
今日はそこでコスモスの子守でもしながら寝る、と思っていたら、コスモスは既に夢の中へと旅立っていた。
「申し訳ございません、ヴェルト様。この子ったら、安心してすぐに寝てしまいまして」
「ああ、いいよ。でも、気をつけろ? 夜中にいきなり起きて泣き出すから。赤ん坊の面倒を見るってのは、そういうことだから」
「まあ、ヴェルト様はそういった経験がおありで?」
「年の離れた妹がな。俺とウラで可愛がって面倒見てたよ」
「ふふ、それは頼もしい限りですね」
コスモスが寝て、残された俺とエルジェラは……妙な雰囲気になる前に俺は素早く横になる。
「ふふふ、ヴェルト様もおねむでしたね。では、私も……おやすみなさい、コスモス。チュッ」
コスモスにキスをするエルジェラ、そして……
「さ、ヴェルト様も。この子におやすみのキスをしてあげてください」
「……え? お、俺も?」
「もちろんです♪ それともヴェルト様はこの子がかわいくありませんか~?」
「~~~~っ、するよ」
俺をからかうようにクスクス笑うエルジェラの口車に乗り、俺は少し恥ずかしかったがコスモスのおでこにキスした。
寝ているコスモスが、何だか心地よさそうに一瞬笑った気がしたが、まぁ気のせい―――
「では、パーパとマーマもおやすみのキスです」
「……え……んごっ!?」
「ん……」
……そして、エルジェラは何のためらいもなく俺の唇にキスを……あっ、やられた……
「うふふふふ、素敵です、ヴェルト様♥」
「あ、あう、あ……」
「それでは、おやすみなさい。どうぞ、ごゆっくりなさってください」
「……熱い……寝れるかな?」
そして、結論から言うと、何だかんだで俺もそのまま死んだように一気に寝てしまった。コスモスが夜泣きしたかどうかも分からなかった。
とりあえず、俺が夜中に目が覚めなかったことからも、それほど酷いことにはならなかったようだ。
しかし、本当に酷いのは、夜ではなく朝だった。
そして、酷いのはコスモスではなく………母親の方だった。
0
お気に入りに追加
685
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
実はスライムって最強なんだよ?初期ステータスが低すぎてレベルアップが出来ないだけ…
小桃
ファンタジー
商業高校へ通う女子高校生一条 遥は通学時に仔犬が車に轢かれそうになった所を助けようとして車に轢かれ死亡する。この行動に獣の神は心を打たれ、彼女を転生させようとする。遥は獣の神より転生を打診され5つの希望を叶えると言われたので、希望を伝える。
1.最強になれる種族
2.無限収納
3.変幻自在
4.並列思考
5.スキルコピー
5つの希望を叶えられ遥は新たな世界へ転生する、その姿はスライムだった…最強になる種族で転生したはずなのにスライムに…遥はスライムとしてどう生きていくのか?スライムに転生した少女の物語が始まるのであった。
僕が美少女になったせいで幼馴染が百合に目覚めた
楠富 つかさ
恋愛
ある朝、目覚めたら女の子になっていた主人公と主人公に恋をしていたが、女の子になって主人公を見て百合に目覚めたヒロインのドタバタした日常。
この作品はハーメルン様でも掲載しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる