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第四章
第121話 改めて
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おーい、大丈夫か~?
俺が恐る恐る様子を伺おうとしたら、スープや料理の食べ残しを頭やコートに付着させながらも、綾瀬はガバっと起き上がった。
「ど、どうして避けるのよ! 感動の再会でしょ、あなた!」
「いや………なんとなく……」
「あ、あなたは、ほ、本当に、本当にどこまでいっても朝倉くんね! 相変わらずのツン倉くんだわ!」
「誰が、ツン倉だコラァ!」
ああ、そう言えば、なんかそんな風に呼ばれたことがあったな。
イラついて叫びながらも、なんか懐かしくて……だけど目の前の綾瀬が俺の知る綾瀬と変わりすぎててなんかもう訳が分からなかった。
「つーか、お前がまず冷静になれ! そもそも、俺がいつお前と結婚した!」
「何を言っているの! 私たちのあの日々を忘れたの!? 修学旅行で初めて結ばれたホテル、そのあとの受験勉強、大学合格、そして同棲―――」
「その修学旅行で俺らは死んだんだろうがァァ!! つか、ホテルってなんのことだ!」
「なにって……あ……」
そして、ようやく現状と周囲の反応やら色々と気づいた様子の綾瀬。
「あ~……あ~……あ……あ~」
何度も「あー」と言い出して、次の瞬間には頭を抱えて唸りだし、そして数秒間うずくまったかと思ったら、綾瀬は目を瞑ったまま急にスクッと立ち上がった。
「……コホン……ご、ごめんなさい、前世と妄想と現実に区別がついてなかったわ……私もまだまだね」
「いや、クールにそんな片づけられても……いや、もう俺も触れないけど……」
「ええ、そうしてくれるとありがたいわ」
一度深呼吸し、目を瞑り、そして再び目を開けた時に、ようやく俺の知っていた綾瀬っぽい表情に戻った。
「とにかく、もういいわ。うん、いい! こうして会えたんだもの」
「ほ~、元学園のアイドル様にそう言われるのは光栄だな。まあ、今では人類の希望のお姫様だが」
「やめてよ。何だかあなたにそう言われると、笑われているみたいで、すごく恥ずかしいから」
「そうか? ……つか、何か周囲の状況的に『あなた』呼びはやめてくれ……」
「そ、そうね……う、うん。改めて君と会えてよかったわ」
綾瀬も怒りながらも笑っていた。
「……うん……そう、……やっぱりこういう再会をずっと待っていたの……宮本くんも、加賀美くんも、もう私の知っている二人じゃなかったから」
「そうか…………」
「うん。でも、君は…………朝倉くんで良かった。ようやく再会できたのが、君で良かった」
「綾瀬。くはは、まあ、積もる話は色々あるが……」
「うん、いっぱい話しましょう!」
屈託なく笑顔を見せる綾瀬。
あっ、この笑顔をどこかで見たことがある。
あれはいつだったか? 元々、綾瀬は高校の頃からもクールビューティーキャラだったから、笑うときはどこかカッコつけた笑い方しかしなかったが、かつてこいつの満面の笑みを見たことがある。
――素敵だったわ、朝倉くん。君のおかげで私たちは優勝できたわ
ああ、あの時だ。体育祭のあの時。
それを思い出すと、何だか俺も昔を思い出して少し嬉しくなった気がした。
「じゃあ、ちょっと外のベンチに……………………あっ…………」
もう一度外へと改めて移動しよう。そう思ったのに、何だかまた綾瀬がぴたりと立ち止まった。
しかも、今度は自分の全身を見ながら顔を真っ青にさせたり、自分のコートや服の匂いをクンクン嗅いだりして、少し唸った。
そして、
「あと、一時間後…………にしましょう」
「はあ?」
いや、マジで、はあ?
「おいおい、今更何言ってんだよ。別にこのまま…………」
「だから、一時間! 一時間だけよ!」
「なんでだよ。何か用事があるのか?」
「そ、そうじゃないけど、そうじゃないけど…………」
なんだよ。くーるびゅーてぃー(笑)が、顔を赤らめてモジモジと…………
「便所か?」
「ッ違うわよ! 汚いからお風呂に行って体を洗いたいのよ!」
「おい、別にいいじゃねえかよ、それぐらい」
「いいわけないでしょ! 大体私は遠征から帰って来てまだゆっくりしてないから、だから汗の匂いとか、さっきテーブルに飛び込んで色々と…………」
「何を今更…………!」
「いいから! えっと、だから待ち合わせは、そう! 帝都のケーキ屋さんにしましょう!」
「いや、そこは、朝にフォルナと一緒に行ったし」
「ッ、そ、それなら、天空庭園で! いい? 一時間後よ! 分かったわね!」
それだけ言い残して、綾瀬は走って食堂から飛び出した。
「ああ、もう! こんなことなら、髪とかもう少し…………、あの服はどこにしまったかしら? あの香水まだあったかな? 肌だって荒れてないかしら?」
「「「「「………………………………」」」」」
「くう、この世界では勝負することなんてないと思っていたから、セクシーな下着なんて持ってないのに……うぅ、せめて一番かわいいのを……ああ、もう!」
嵐のように去った綾瀬の背中を呆然と眺めながら、しばらく沈黙が食堂に漂ったが、僅かな間を置いて、とうとう耐え切れなくなった兵士たちが一斉に叫んだ。
「「「「「つか、お前ら本当にどういう関係なの!」」」」」
「どういう関係ですの!」
あ~あ、メンドクサ。
俺が恐る恐る様子を伺おうとしたら、スープや料理の食べ残しを頭やコートに付着させながらも、綾瀬はガバっと起き上がった。
「ど、どうして避けるのよ! 感動の再会でしょ、あなた!」
「いや………なんとなく……」
「あ、あなたは、ほ、本当に、本当にどこまでいっても朝倉くんね! 相変わらずのツン倉くんだわ!」
「誰が、ツン倉だコラァ!」
ああ、そう言えば、なんかそんな風に呼ばれたことがあったな。
イラついて叫びながらも、なんか懐かしくて……だけど目の前の綾瀬が俺の知る綾瀬と変わりすぎててなんかもう訳が分からなかった。
「つーか、お前がまず冷静になれ! そもそも、俺がいつお前と結婚した!」
「何を言っているの! 私たちのあの日々を忘れたの!? 修学旅行で初めて結ばれたホテル、そのあとの受験勉強、大学合格、そして同棲―――」
「その修学旅行で俺らは死んだんだろうがァァ!! つか、ホテルってなんのことだ!」
「なにって……あ……」
そして、ようやく現状と周囲の反応やら色々と気づいた様子の綾瀬。
「あ~……あ~……あ……あ~」
何度も「あー」と言い出して、次の瞬間には頭を抱えて唸りだし、そして数秒間うずくまったかと思ったら、綾瀬は目を瞑ったまま急にスクッと立ち上がった。
「……コホン……ご、ごめんなさい、前世と妄想と現実に区別がついてなかったわ……私もまだまだね」
「いや、クールにそんな片づけられても……いや、もう俺も触れないけど……」
「ええ、そうしてくれるとありがたいわ」
一度深呼吸し、目を瞑り、そして再び目を開けた時に、ようやく俺の知っていた綾瀬っぽい表情に戻った。
「とにかく、もういいわ。うん、いい! こうして会えたんだもの」
「ほ~、元学園のアイドル様にそう言われるのは光栄だな。まあ、今では人類の希望のお姫様だが」
「やめてよ。何だかあなたにそう言われると、笑われているみたいで、すごく恥ずかしいから」
「そうか? ……つか、何か周囲の状況的に『あなた』呼びはやめてくれ……」
「そ、そうね……う、うん。改めて君と会えてよかったわ」
綾瀬も怒りながらも笑っていた。
「……うん……そう、……やっぱりこういう再会をずっと待っていたの……宮本くんも、加賀美くんも、もう私の知っている二人じゃなかったから」
「そうか…………」
「うん。でも、君は…………朝倉くんで良かった。ようやく再会できたのが、君で良かった」
「綾瀬。くはは、まあ、積もる話は色々あるが……」
「うん、いっぱい話しましょう!」
屈託なく笑顔を見せる綾瀬。
あっ、この笑顔をどこかで見たことがある。
あれはいつだったか? 元々、綾瀬は高校の頃からもクールビューティーキャラだったから、笑うときはどこかカッコつけた笑い方しかしなかったが、かつてこいつの満面の笑みを見たことがある。
――素敵だったわ、朝倉くん。君のおかげで私たちは優勝できたわ
ああ、あの時だ。体育祭のあの時。
それを思い出すと、何だか俺も昔を思い出して少し嬉しくなった気がした。
「じゃあ、ちょっと外のベンチに……………………あっ…………」
もう一度外へと改めて移動しよう。そう思ったのに、何だかまた綾瀬がぴたりと立ち止まった。
しかも、今度は自分の全身を見ながら顔を真っ青にさせたり、自分のコートや服の匂いをクンクン嗅いだりして、少し唸った。
そして、
「あと、一時間後…………にしましょう」
「はあ?」
いや、マジで、はあ?
「おいおい、今更何言ってんだよ。別にこのまま…………」
「だから、一時間! 一時間だけよ!」
「なんでだよ。何か用事があるのか?」
「そ、そうじゃないけど、そうじゃないけど…………」
なんだよ。くーるびゅーてぃー(笑)が、顔を赤らめてモジモジと…………
「便所か?」
「ッ違うわよ! 汚いからお風呂に行って体を洗いたいのよ!」
「おい、別にいいじゃねえかよ、それぐらい」
「いいわけないでしょ! 大体私は遠征から帰って来てまだゆっくりしてないから、だから汗の匂いとか、さっきテーブルに飛び込んで色々と…………」
「何を今更…………!」
「いいから! えっと、だから待ち合わせは、そう! 帝都のケーキ屋さんにしましょう!」
「いや、そこは、朝にフォルナと一緒に行ったし」
「ッ、そ、それなら、天空庭園で! いい? 一時間後よ! 分かったわね!」
それだけ言い残して、綾瀬は走って食堂から飛び出した。
「ああ、もう! こんなことなら、髪とかもう少し…………、あの服はどこにしまったかしら? あの香水まだあったかな? 肌だって荒れてないかしら?」
「「「「「………………………………」」」」」
「くう、この世界では勝負することなんてないと思っていたから、セクシーな下着なんて持ってないのに……うぅ、せめて一番かわいいのを……ああ、もう!」
嵐のように去った綾瀬の背中を呆然と眺めながら、しばらく沈黙が食堂に漂ったが、僅かな間を置いて、とうとう耐え切れなくなった兵士たちが一斉に叫んだ。
「「「「「つか、お前ら本当にどういう関係なの!」」」」」
「どういう関係ですの!」
あ~あ、メンドクサ。
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