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第十九話 ニートにチートな転生特典

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「前世ではニートだった俺だけど、第二の人生はこのファンタジーな異世界で最高の人生を送ってやる」

 そう決意を胸に熱く目を輝かせるのは、8歳の子供。
 しかし、子供とは思えないその口ぶり。
 当然です。だって彼の肉体年齢は8歳ですが……

『彼の前世の名前は、ソノタ……例の太陽系惑星出身……10年間無職。そして45歳で生涯を終えました』
『トラックか?』
『はい、トラックに撥ねられて亡くなりました』
『土下座と特典か?』
『はい……転生神さまが『いや~、お前は本当は死ぬ運命じゃなかったのに手違いで死んでもーた。すまん。お詫びに来世では容姿やスキルなど望むもので転生させてやる』……という感じのようですね』
『で……ようやく、前世の記憶も思い出し、早速頑張るということか』
『ええ』

 説明を終えて、僕はソノタくん……いいえ、『フェイト』くんを見て、努力を決意した人間の瞳の輝きに胸を打たれました。
 一方で御主神さまは……

『最初から自分のチートを知っている……優れた容姿ももらい、将来は俺tueee無双な存在となり、チート持ち全宇宙共通願望ともいえるハーレム作りたい……そんなところかの』

 僕と違って、とても呆れた表情で溜息を吐かれました。

『ご、御主神さまぁ……そりゃ、最終的にはそうなるかもですが、頑張ろうとしている人は純粋に見てあげましょうよ~』
『くだらぬ。自分にチートが与えられたからといって、前世の知識を持って、人よりアドバンテージある状態から今度こそ頑張ろうなど、都合が良すぎだ』
『う、生まれたときからのアドバンテージは人それぞれじゃないですか。お金持ちだったり、体格が良かったり……』
『そもそも、妾はニートが嫌いなのじゃ。ニートなど全部自分の所為だ』
『そ、それは違いますよぉ!』
『ほう? 違うとな? ならば、申してみよ』

 あ~、御主神さまはまたこうやって……僕を試されて……


『その……仕事をしていくうちに、あの惑星出身の方が多かったので色々と調べたのですが……確かに中には、働くのが嫌で、ずっと部屋で遊んでいたい、親がお金を持ってるので働かなくていいや、みたいな人もいるかもしれませんが……全てが全て自分の所為ではありません』

『ほう』

『中には、まともな教育を受けることができなかった家庭環境、学校でのイジメ、職場でのパワハラなどによる精神的な病気に追い込まれたり、人間関係の悪化、必ずしも全てをその人の所為にしてはいけないと思います。歪んだ人間、環境、社会、国、世界の犠牲ゆえに心を折られてそうなってしまう人もいるのです』

『しかし、それは克服している人間もいるだろう? 結局頑張らぬからだ』

『その、やはり……人間の世界は、自分だけが頑張っても周囲の環境次第でどうにもならないこともありますし、むしろ頑張れという言葉がより人を追い詰めることもあるようなのです……』

『かぁ~、なんともデリケートな生命なのだ。願望はチート無双してハーレムしたいとか単純なものなのにの……』
 

 僕の言葉に面倒くさそうに頭を掻かれる御主神さま。
 そうなんですよね。
 僕も仕事をしていくうちに分かったのですが、人間って結構デリケートみたいです。
 すると……

『にしても……』
『はい?』
『最近おぬしは人間に肩入れしすぎではないか~?』
『はぅあ、そ、そこ、触ったらダメですぅ!』
『うるさい、たわけめ。もう何百回も触ってるし、触るどころか―――』
『ふぁーーーー! んもう、職務中ですぅぅ!』
『ふん』 

 また御主神さまはめんどくさくなったら、僕に逆セクハラをぉ……でも……

『で、おぬしはどうしろと?』
『は、はい?』
『仕事だしな。あやつの前世がどうであれ、所詮前世の話。チートは奪う。前世の記憶は奪う。それは変えられぬ』
『そ、そんな!?』

 僕を弄る手を止めて、急に真面目に言われる御主神さま。
 しかし、それはやはり「可哀想」と思ってしまうのです。


『でも、彼は……神々が暇つぶしなのか、本当に手違いなのかしりませんが、元々死ぬ運命ではなかった……自然の流れを無視し、神様ポイントも関係なく、神が干渉したことで前世を終えてしまったのです』

『だから?』

『その……謝罪を込めた転生特典を回収するのは……』

『じゃあ、放置しろと? あほか! それによって、この世界の自然な流れが歪むのであろうが! それに、おぬしの話を聞いても、妾はニートが嫌いじゃ!』

『そ、そんな……』

『同情でこれを見逃す、こっちも見逃そう、あっちもこれぐらいで妥協しよう……ではメンドクサイ!』

『で、でも……』


 そう、僕は肩入れしすぎなのかもしれません。
 でも、最近はどうしても……どうにかできないかなと……でも代案もないのです……だから僕はまだまだ未熟で情けないです。
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