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第十七話 絶望→希望→絶望

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――醜悪なオークたち……でもね、もうこれ以上は好きにさせない!

「や、やめて、た、たす、助けて! もうしませんから助けて、い、いや……来ないで……来ないで……」

――私たちが居る限り、正義は終わりません!

「お、お願いします! 命だけは、な、何でも言うこと聞きます! な、なんでもしますから、お願いします! お金でも何でも!」

――私たちが相手だ! 全員まとめてかかってこい! 人類の力を、想いを、その身に刻み込んでやる!

「ぐす、ぐひ、え~ん、やだよぉ、助けてよぉ、父上ぇ、母上ぇ……」


 ついちょっと前までとは打って変わった言葉を口にする少女たち。
 完全に心が折れてしまっていますね。

「大丈夫、殺さないよぉ。完全に壊れちゃうまで、ずーっと、ずーっと、僕ちんのお嫁さんにして可愛がってあげるよ~♡」
「「「ッッ!!??」」」

 その瞬間、少女たち三人とも同じ顔。そう、「絶望」ですね。
 しかし次の瞬間、少女たち三人はあることに気づき「希望」を抱きます。


「そ……そ、うだ、リュウセイ! ねえ、リュウセイ! どこ? ねえ、リュウセイ、助けて! ね、リュウセイってば、どこにいるの! 助けてくれたら今度こそ、ね? さっきのは嘘で、本当は好き! 大好きだから! 何でもしてあげるから、ね! 助けてよぉ!」

「ッ!? リュウセイさま! リュウセイさま、どちらです? 私は、私はあなたのお嫁さんになるんですよね? ね? だから助けてください!」

「ぐす? あ、リュウセイ……リュウセイ! 私はお前と契りを交わすと決めたのだ! 後生だ! た、助け、リュウセイ! 謝る! 謝るから!」


 そう、モブノくんのことを思い出したようです。
 チートを持っていれば、彼女たちよりも、それどころかあのオークたちすら相手にならないほどの強さを持っているモブノくん。
 でも、今の彼にその力はありません。

「リュウセイ? 勇者リュウセイだと?」
「ちっ、勇者リュウセイもいるのかよ」
「上等だ、かかってこいや、勇者ぁ!」

 オークたちも勇者の存在を知り、一瞬動揺するも、元々が好戦的な気質なオークはむしろ「かかってこい」と煽っています。
 
「ん? おい、あそこに誰か隠れてるぞ!」
「おら、出てこい! さもなけりゃそこをぶっ壊すぞ!」

 そして、物陰に隠れていたモブノくんの存在にオークたちもついに気づきました。
 一斉に弓や投擲の武器などを構えて吼えるオークたち。
 その声に思わず、全身を震わせながらモブノくんが両手を上げて立ち上がります。


「「「「勇者リュウセイ!!??」」」」

「「「「リュウセイ(さま)!!」」」」  


 その姿を見て、オークたちは衝撃を受け、少女たちは希望に染まります。


「リュウセイ、助けて! いつもみたいにお願い! そしたら何でも言うこと聞いてあげる! おっぱいだってお尻だって、ね? それにさっきのは全部嘘で、勘違いで、私たちはやっぱりリュウセイが好き!」

「リュウセイ様! さぁ、あなた様のお力を是非とも振るってください! 私たちのリュウセイさま!」

「私たちのピンチにはちゃんと現れてくれるとは、やはり私たちのリュウセイだ! 私はお前の女であることを誇りに思うぞ!」

 
 怪我や痛みに構わず、喜色満面でモブノくんに訴える少女たち。
 しかし、モブノくんは……


「へ、へへ……なに、都合のいいこと言ってんだよ……クソ女共……」

「「「……え?」」」

「も、もう騙されねーからな! さんざん人を都合よく利用するだけ利用する、詐欺女共が! バーカ、テメエらなんかオークの●●●●●で、××××になって、一生オークの◎◎▽□♦××にでもなっちまえってんだ! ざまぁみろ!」

「「「あ……なん……で……」」」
 
「もうどうでもいいんだよ! 俺はもっと心がピュアで俺に尽くしてくれる女の子たちでハーレム作るからよ! だからさ、そいつらもうどうでもいいから、好きにしろよ、オーク共!」


 絶望から希望を見出したかと思えば、更なる絶望に叩き落とす。
 随分とえぐいですね、モブノくん。
 まぁ、今の彼では少女たちは助けられないんですけど。
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