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第十五話 都合
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既に夜も遅いというのに、宿から出て愚痴を吐き捨てるモブノくん。
「あんなクソ女たちなんて、もうどうでもいい! 見てろ、今の俺ならサクッと魔王とかも倒せるんだ。そうすりゃ、もっとデカい国の姫とか、聖女とかでもいいな……あと、エルフとかも美人なんだろうし……そうだよ、もっといい女を抱きまくってやる!」
これまで共に戦い、共に旅した仲間の少女たちに見切りをつけ、その瞳に悔しそうに涙を浮かべながらも、ちょっと微妙な方向へと前向きになるモブノくん。
しかし、彼はまだ知らないのです。
もう彼にそんなチートはないことを。
そして……
『御主神さま……』
『うむ……これもまた……この世の流れだの』
僕も、そして御主神さまも気づきました。
夜、静まり返ったこの街の外から……
『来たな』
土煙を上げて怒涛の勢いで押し寄せる脅威。
「ん? なんの……うべ……あ……で?」
そして、そのことにモブノくんが気づいた瞬間。モブノくんの胸に一本の矢が貫きました。
「あ、で? え? 矢……なんで……あ、熱い! い、いでえええ、いでええよお、いでええええ! あ……ぁぁ……」
押し寄せる激痛に耐え切れずにその場で倒れこむモブノくん。
何が起こっているか分からない現状に動揺しています。
「な、どこから? いや、お、おれ、こんな、矢ぐらい……ぐっ、ヒール! ヒール! ……え? 魔法が……なんで? ヒール! ヒール!」
チートを持っていた彼なら、あんな矢ぐらいへっちゃらだったでしょう。でも、今の彼には致命傷です。今の彼は魔法も使えません。
そして……
「あっ、また……ひいい! ひいい!」
矢は一本だけではありません。
「いでえええ! な、なんだ、矢が!?」
「きゃああああ、なに? なんなの?」
「ひいい!」
「こ、これは……ま、まさか……まさか!」
その矢は次々と夜の空から街中に降り注ぎ、まだ外に居た人たちや、民家の屋根などに次々と刺さり、驚いた民たちから一斉に悲鳴が上がります。
「げへへへへ、人間どもぉ! 我ら魔王軍のオーク軍団が来てやったぜええ! さあ、野郎ども! 殺せ! 壊せ! 奪え! 犯せ! 蹂躙しろ!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」
人間とは異なる種族の生物。
オークと呼ばれる豚と人間を混ぜ合わせたような存在です。
巨漢で、でっぷりしていて……
『あ~あ、醜い顔したやつらなのだ……』
『御主神さま……』
『まぁ、醜い分、パワーなどの分野に神々から才を与えられているのだがな……あとは性欲とかな♡』
『ッ!?』
『まっ、妾はマイン以外を抱く気はないがな……おっ? どうした? 照れてるか? 嬉しいか? うりうり~♪』
『ん、んもう、からかわないでください~』
平和な街を襲撃するオークの軍勢。その数は数百にも上ります。
ここは小さな町で、迎撃するための人間の軍などが配備されているわけではありません。
戦乱続く世界なら、これから起こることは何も珍しいことではありません。
「おらぁ、死ねええ! へへへ、おら奪え奪え!」
「や、やめ、ひぐっ!?」
「おっ、いい宝石あるじゃねえか! 戦利品に貰っていくぜ! おら、死ね!」
「ぐへっ!?」
「うへへへへ、女だ~も~らい!」
「ひ、い、いやああああ! いや、いやああああ!」
一方的な虐殺……こうやって世界は歴史を積み重ねていくのです。
『でも……タイミング悪いですよね……』
『本当にな』
とはいえ、別に珍しいことではないので驚くことではありませんが、職務をちょっと邪魔されたようですので困ります。
「いや、助けて! 神様あああ! 神様ああああああ!」
「ばーか、神なんているわけねーだろ!」
いるんですけどね。でも、助けませんけど。
むしろ……
『まったく、どこの世界も皆、都合が良いな。神は平等。人間に手を貸したら、オークが可哀想ではないか! どうしても助けて欲しければ、神様ポイントを積み上げろというのだ』
そう、助けを求められたり、お願いされたりすると、御主神さまは不愉快になられるのです。
神様ポイントがあれば、気まぐれに手を貸されるときはありますが、今この場にそれほどポイントのある人はいません。
だから、助けられません。
でも……
『だが、モブノだけは助けねばな。異界の住人が異界で死ぬ……これだけなら別に大して世界に影響はないが、これに関しては仕事だしの』
『はい』
仕事ならちゃんとします。
「あんなクソ女たちなんて、もうどうでもいい! 見てろ、今の俺ならサクッと魔王とかも倒せるんだ。そうすりゃ、もっとデカい国の姫とか、聖女とかでもいいな……あと、エルフとかも美人なんだろうし……そうだよ、もっといい女を抱きまくってやる!」
これまで共に戦い、共に旅した仲間の少女たちに見切りをつけ、その瞳に悔しそうに涙を浮かべながらも、ちょっと微妙な方向へと前向きになるモブノくん。
しかし、彼はまだ知らないのです。
もう彼にそんなチートはないことを。
そして……
『御主神さま……』
『うむ……これもまた……この世の流れだの』
僕も、そして御主神さまも気づきました。
夜、静まり返ったこの街の外から……
『来たな』
土煙を上げて怒涛の勢いで押し寄せる脅威。
「ん? なんの……うべ……あ……で?」
そして、そのことにモブノくんが気づいた瞬間。モブノくんの胸に一本の矢が貫きました。
「あ、で? え? 矢……なんで……あ、熱い! い、いでえええ、いでええよお、いでええええ! あ……ぁぁ……」
押し寄せる激痛に耐え切れずにその場で倒れこむモブノくん。
何が起こっているか分からない現状に動揺しています。
「な、どこから? いや、お、おれ、こんな、矢ぐらい……ぐっ、ヒール! ヒール! ……え? 魔法が……なんで? ヒール! ヒール!」
チートを持っていた彼なら、あんな矢ぐらいへっちゃらだったでしょう。でも、今の彼には致命傷です。今の彼は魔法も使えません。
そして……
「あっ、また……ひいい! ひいい!」
矢は一本だけではありません。
「いでえええ! な、なんだ、矢が!?」
「きゃああああ、なに? なんなの?」
「ひいい!」
「こ、これは……ま、まさか……まさか!」
その矢は次々と夜の空から街中に降り注ぎ、まだ外に居た人たちや、民家の屋根などに次々と刺さり、驚いた民たちから一斉に悲鳴が上がります。
「げへへへへ、人間どもぉ! 我ら魔王軍のオーク軍団が来てやったぜええ! さあ、野郎ども! 殺せ! 壊せ! 奪え! 犯せ! 蹂躙しろ!」
「「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」
人間とは異なる種族の生物。
オークと呼ばれる豚と人間を混ぜ合わせたような存在です。
巨漢で、でっぷりしていて……
『あ~あ、醜い顔したやつらなのだ……』
『御主神さま……』
『まぁ、醜い分、パワーなどの分野に神々から才を与えられているのだがな……あとは性欲とかな♡』
『ッ!?』
『まっ、妾はマイン以外を抱く気はないがな……おっ? どうした? 照れてるか? 嬉しいか? うりうり~♪』
『ん、んもう、からかわないでください~』
平和な街を襲撃するオークの軍勢。その数は数百にも上ります。
ここは小さな町で、迎撃するための人間の軍などが配備されているわけではありません。
戦乱続く世界なら、これから起こることは何も珍しいことではありません。
「おらぁ、死ねええ! へへへ、おら奪え奪え!」
「や、やめ、ひぐっ!?」
「おっ、いい宝石あるじゃねえか! 戦利品に貰っていくぜ! おら、死ね!」
「ぐへっ!?」
「うへへへへ、女だ~も~らい!」
「ひ、い、いやああああ! いや、いやああああ!」
一方的な虐殺……こうやって世界は歴史を積み重ねていくのです。
『でも……タイミング悪いですよね……』
『本当にな』
とはいえ、別に珍しいことではないので驚くことではありませんが、職務をちょっと邪魔されたようですので困ります。
「いや、助けて! 神様あああ! 神様ああああああ!」
「ばーか、神なんているわけねーだろ!」
いるんですけどね。でも、助けませんけど。
むしろ……
『まったく、どこの世界も皆、都合が良いな。神は平等。人間に手を貸したら、オークが可哀想ではないか! どうしても助けて欲しければ、神様ポイントを積み上げろというのだ』
そう、助けを求められたり、お願いされたりすると、御主神さまは不愉快になられるのです。
神様ポイントがあれば、気まぐれに手を貸されるときはありますが、今この場にそれほどポイントのある人はいません。
だから、助けられません。
でも……
『だが、モブノだけは助けねばな。異界の住人が異界で死ぬ……これだけなら別に大して世界に影響はないが、これに関しては仕事だしの』
『はい』
仕事ならちゃんとします。
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