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第十二話 剥がれたメッキ

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「くぅ~、ついに私たちも……か……へへへ、なんか恥ずかしい」
「リュウセイさま、私の体を気に入ってくださるかしら?」
「~~~っ、父上、母上、今宵私は……女になります!」

 愛する男と肉体を交えるため、身を清めて紅潮した頬でそのときを待っていた三人の美少女。
 大きなベッドの上でシースルーで色鮮やかでセクシーな下着姿の少女たちは艶めかしいです。
 

――チート回収

「「「ッッ!!??」」」


 でも、僕は見てしまったのです。
 
「え? あ、……あれ?」
「……ッ……あ、私、なんでこんなはしたない……」
「ッ!? ま、待て……わ、私は何を……何故、自らこのような……娼婦のような……」

 御主神さまがモブノくんからチートを回収した途端、少女たちがまるで夢から覚めたようにハッとした表情で混乱。

「みんな、待たせたな! さあ、皆で……あ、愛し合おうぜ!(なんか体が変だけど、そんなのは後だ。今は、初体験でハーレムが先決だ! うひょ~、みんな、エッロい! これ、全員俺のだ! 俺の好きにしていいんだ! くそ、最高だぜ異世界!)」

 そのタイミングでベッドルームに入るモブノくん。
 心の声は僕らに丸聞こえです。
 チートを回収され、自身も「体に何かあった」というのは分かっているのに、今はエッチなことしか頭にないようです。
 でも……

「あ、リュウセイ……ちょ、あ~……ちょっと待って……」
「きゃあ!」
「ま、待て、見るな! いったん部屋から出ていけ!」

 冷めた表情の少女、羞恥で己の体を隠す少女、そして顔を真っ赤にして枕を投げてモブノくんを追い出そうとする少女。

「え? な、なんで……」

 うん、その気持ちは分かります。
 だって、すごい楽しみにしていただろうし……

『前の世界の、あのチョーすごいドラゴンと同じだ』
『御主神さま!?』
『チートを奪われれば、何の魅力もない平平凡凡……そんな男に『みんなと一緒でいいから抱いて』などという都合のいいことがあるわけなかろう』

 それは、僕にとっては胸が締め付けられるような光景でした。


「あ~、ごめん、なんかね、そういう気分じゃ……今日はやめよ……うん、ごめん……どうして? あんなにカッコいいと思ってたリュウセイの顔が全然かっこよく見えな……う、ううん、とにかくごめん……」

「リュウセイさま、ごめんなさ……う、うう……どうして? わたし、リュウセイさまに助けられたけど……あの気持ちは一体……それに、リュウセイさまのお顔が……キラキラされていない……どうしてです?!」

「どういうことだ……なぜこの私が……生涯剣のみに生きようとしていた私が……リュウセイ! お前は私たちに何をしたのだ?!」


 たとえチートなんてなくても、これまでの積み重ねがあれば……真な絆で結ばれた人たち同士であれば……


「は? な、なんだよ皆して……わかんねーよ! とにかくここまできて何を言ってんだ、くそ、おら、脱げよッ!」

「「「ッッ!!??」」」

 
 そのとき、モブノくんは訳が分からず、しかし既にエッチな気持ちで我慢の限界だったのか、少女たちの反応や言葉は無視して乱暴にベッドの上にのって……

「おら、はやく全部脱げよ!」
「ひっ!? い、いや、いやああああ! お父様、お母様!」
「何泣いてんだよ、俺のこと好きなんだろうが! ほら、はやく脱――――」

 三人の中でも気の弱そうな少女を掴んで押し倒し、そのまま……

「や、やめなさいよ、バカぁ!」
「やめろ、リュウセイ!」
「ぶへっ!?」

 その状況を我慢できず、他の二人の少女が同時にモブノくんを殴り飛ばしました。

「……え?」
「なに?」

 殴り飛ばされ、部屋の壁に激突して痙攣するモブノくん。
 一方で殴った二人は呆然として……

「違う……なに? どういうこと?」
「私たちの拳を……簡単に……ど、どうなって……」

 彼女たちも咄嗟に殴ってしまったことで異変に気付いたのです。
 そう、今のモブノくん……いいえ、リュウセイくんはチートを回収されて、元の普通の高校生男子に戻ってしまっているのです。
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