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第九話 サクっと

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 と、いうわけでやってきました新たな世界。
 すると、御主神さまが世界を見降ろされながら……

『のう、この世界にも勇者とか魔王はいるのか?』

 そう、これまでの傾向から、転生神……いえ、前・転生神さまや、前・創造神さま、前・時空神さまたちよりチートを授けられた人たちの住む世界には、かなりの頻度で魔王とか勇者というものが存在しています。
 この世界は……

『いるようです』
『ほうほう。で、そいつは?』
『現在、魔王軍をサクサク倒してます。ちなみにその魔王は三千年ほど魔界を統治していた魔王です。勇者は十七歳の人間です』
『今回は『どれ』だ? 転生? 転移? それとも完全なるこの世界の住民か?』
『転移です。勇者で』
『例の太陽系の惑星にある……小さな島国の人間だったりするか?』
『はい。その星の学生です』
『またか……あの三人はあの星の島国の人間が大好きなのだな……以前は、どっかのブラック企業で働いた社畜だとか、クラスのいじめられっ子とか……転生もそういうタイプであろう?』

 溜息を吐かれる御主神さま。そう、おっしゃる通り、このお仕事をしていていくつか共通のパターンがあるのです。
 転移されたり、前世の記憶を持って転生している人の場合、たいてい太陽系惑星の小さな島国に住む人間なのです。

『では、これまで通り転移タイプは優しく元の世界に帰してやろうかのう』
『優しくって……『元の世界に帰りたくない!』って、泣き叫ばれていた記憶が……』
『な、何を言うか! あやつは、あの星の電子機器とか持ち込んで文明おかしくしそうになっていたではないか!』

 そう、本来交わらないはずの世界を繋げて異界や異星の住人を違う世界に転移させ、スキルを与え、それどころかその人が所有していたその世界の文明を持ち込んで、本来その世界が辿るべき文明の歴史をグチャグチャにしたり……
 
『で、この世界の勇者くんの女性関係は?』
『調べたところ、三人の女の子が周りを固めてます』
『はいはい、ハーレムおつじゃ!』

 で、極めつけはハーレムを作るのです。
 正直、パターンが決まりすぎています。

『検討すんのもメンドクさいので、さっさとチート取り上げて、元の世界に帰して次の世界行こうぞ』
『承知しました。勇者は現在、温泉地に居ます。仲間……というか、女の子と一緒です』
『あっ、だんだん読めてきたのだ! その勇者、チートスキルの中に、ラッキースケベの加護も与えられているのでは?』
『さすがは御主神さま、読み通りです』
『つーか、その加護が与えられていないやつのほうがもはや珍しいではないか!』

 つまらなそうなご様子の御主神さま。
 
「もうよい。ワンパターンはつまらぬが、逆に何かを考えなくていいから気が楽だ。ほれ、サクっとゆくぞ!」

 でも……そうなのかな?

 あんまりやりすぎるのは……可哀想だと思うなぁ……こっちの都合で転移させたり転生させたり、挙句の果てにチートをあげて、それを勝手に取り上げるんだもん……

 これまで何人かの仕事を経て、そう思うようになります。

 特にこの前のソラくんのように、中には「努力」でチートを伸ばしている人もいるんだろうし……その努力まで無かったことにするのはちょっと同情してしまうようになりました。
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