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第五話 分かってたもんね
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「決闘だ! 新入生が貴族のナヒカーリを怒らせて、校庭で決闘だってよ!」
「おいおい、入学式前に何を……」
「面白そうだ、行ってみようぜ!」
「キャー、ナヒカーリさまー!」
「ナヒカーリさまに逆らうなんて、あの新入生もバカね~」
決闘のために対峙し合う二人の男の子の周囲には、同じ学校の生徒たちがギャラリーとなって見物しています。
『本当に決闘終わるまで待ちますか?』
『そうだの~、まぁ、展開が既に分かっているからの~、むしゃむしゃ』
『……? 御主神さま、何を食べているのです?』
『街の屋台で見つけた『綿キャンディー』だ。ふわふわで美味ぞ。ほれ、おぬしも反対側から食ってよいぞ』
『え? で、でも』
『これは命令だ。それとも……妾の施しは食えぬか?』
『た、食べます。あ、あ~ん、もしゃもしゃ……甘い~』
『そうであろう? だが……妾の唇はもっと甘いぞ♡』
『あっ……ん……』
僕も御主神さまと一緒に、周囲から不可視状態でお菓子を食べながら見物しています。
お菓子のついでに、僕も食べられています……
『んもう、見物するなら真面目にしましょうよ~、御主神さま』
『けっ、なーにを言っておる。どーせ、この後の展開など――――』
お菓子ごと僕の唇を食されていた御主神さまは、僕の言葉を聞いてつまらなそうに決闘で向かい合う二人を見ながら……
「ふっ、新入生……ましてや田舎から出たような世間知らずに全力を出すのも大人げない。ほら、先に攻撃していいよ? 君の魔法を見せてみたまえ」
そう言って、両手を広げて貴族の子は余裕の笑み。
すると……
「分かった、見せてやる。剣の修行ばかりで魔法はあまり得意じゃないんだけど……いくぞ!」
ソラくんは右手を上にかざして……
「ファイヤーボール!」
「「「「ッッッッ!!!!????」」」」
とっても大きな火の玉を出現させます。
ちなみに、ファイヤーボールってこの世界の火属性魔法の中でも初級に位置するものだそうです。
『はいはいはーい、もう分っちゃったもんねー、分かった分かった~、この後の展開分かったのだ~』
同時に「やっぱり」という表情で御主神さまは溜息を吐かれました。
「なななな、なんだ、アレは!?」
「え、あつっ!? ちょ、え?」
「な、なによあれ!? って、ちょっと待ってよ!」
「新入生の彼、い、いいい、今、ファイヤーボールって言わなかった!?」
周囲のギャラリーから漏れる驚愕の声。
ありえないものを見ているという目。恐怖。
「な、え? な、ななな、なんだそれは! ふぁ、ファイヤーボールだと? そそ、それがファイヤーボールだって!? ど、どういうことだ?!」
同じように震えてしまっている貴族の子がそう口にした瞬間、
『はーい、いただきました! 待ってましたのだ! へっへーん、妾はもう分かっているのだ! この後、ソラという小僧はこう言う! 『え? それがファイヤーボールだって? って……それって……』と!』
御主神さまが、そう口にされると……
「え? それがファイヤーボールだって? って……それって……」
ソラくんは本当に言いました。
『ほーら、わかってたもんねー、見るまでもないしー、んで……『俺のファイヤーボールは……皆がそんなに驚くほど小さくて弱いのか……』……と、言う!』
ドヤ顔の御主神さまは、そのまま続く言葉も予言。
すると……
「俺のファイヤーボールは……皆がそんなに驚くほど小さくて弱いのか……やっぱ魔法学校の生徒ってのはすごい……こんなすごい所で学べるんだ。よし、俺はやるぞ! 今は勝てなくても、精一杯俺は戦う! 今の俺の全力を!」
惜しい! でも、ほぼ正解です!
『ぎゃあああああああああああああああああああああ、余計な独り言がいっぱいあったのだあああああああ! おのれええ、人間のくせにいいい』
ちょっと予想した言葉が足りなかったと、頭を抱えて悶える御主神さま。
いえ、だいたい当たってますよ? すごいですよ?
『おのれえ、この怒りはマインを弄りまくって晴らしてくれる!』
『へ? ちょ、御主神さま、ダメですぅ! ぼ、ボク、お婿に行けなくなりますぅ!』
『ぬはははは、おぬしは誰にも婿に出さん~! 一生、妾のものなのだー♡』
そして、僕は今日もイジメられる。
僕がイジメられている間、決闘は御主神さまの予想通りに進む……そう思っていたのですが……
(ば、ばかな、ぼ、僕は夢を見ているのか? こんなバケモノ……こ、殺される……た、たすけ、助けてください、か、神様!)
声が響きました。
『……ぷはっ……むっ……』
『あ……』
僕をイジメていた手を止めて眉を顰める御主神さま。
そして、僕も気づきました。
人という種は、追い詰められたら神に縋ります。しかし、神がイチイチそんな声を拾いません。
ですが……
『のう、マイン……あやつ……『神様ポイント』……溜まってるのでは?』
「おいおい、入学式前に何を……」
「面白そうだ、行ってみようぜ!」
「キャー、ナヒカーリさまー!」
「ナヒカーリさまに逆らうなんて、あの新入生もバカね~」
決闘のために対峙し合う二人の男の子の周囲には、同じ学校の生徒たちがギャラリーとなって見物しています。
『本当に決闘終わるまで待ちますか?』
『そうだの~、まぁ、展開が既に分かっているからの~、むしゃむしゃ』
『……? 御主神さま、何を食べているのです?』
『街の屋台で見つけた『綿キャンディー』だ。ふわふわで美味ぞ。ほれ、おぬしも反対側から食ってよいぞ』
『え? で、でも』
『これは命令だ。それとも……妾の施しは食えぬか?』
『た、食べます。あ、あ~ん、もしゃもしゃ……甘い~』
『そうであろう? だが……妾の唇はもっと甘いぞ♡』
『あっ……ん……』
僕も御主神さまと一緒に、周囲から不可視状態でお菓子を食べながら見物しています。
お菓子のついでに、僕も食べられています……
『んもう、見物するなら真面目にしましょうよ~、御主神さま』
『けっ、なーにを言っておる。どーせ、この後の展開など――――』
お菓子ごと僕の唇を食されていた御主神さまは、僕の言葉を聞いてつまらなそうに決闘で向かい合う二人を見ながら……
「ふっ、新入生……ましてや田舎から出たような世間知らずに全力を出すのも大人げない。ほら、先に攻撃していいよ? 君の魔法を見せてみたまえ」
そう言って、両手を広げて貴族の子は余裕の笑み。
すると……
「分かった、見せてやる。剣の修行ばかりで魔法はあまり得意じゃないんだけど……いくぞ!」
ソラくんは右手を上にかざして……
「ファイヤーボール!」
「「「「ッッッッ!!!!????」」」」
とっても大きな火の玉を出現させます。
ちなみに、ファイヤーボールってこの世界の火属性魔法の中でも初級に位置するものだそうです。
『はいはいはーい、もう分っちゃったもんねー、分かった分かった~、この後の展開分かったのだ~』
同時に「やっぱり」という表情で御主神さまは溜息を吐かれました。
「なななな、なんだ、アレは!?」
「え、あつっ!? ちょ、え?」
「な、なによあれ!? って、ちょっと待ってよ!」
「新入生の彼、い、いいい、今、ファイヤーボールって言わなかった!?」
周囲のギャラリーから漏れる驚愕の声。
ありえないものを見ているという目。恐怖。
「な、え? な、ななな、なんだそれは! ふぁ、ファイヤーボールだと? そそ、それがファイヤーボールだって!? ど、どういうことだ?!」
同じように震えてしまっている貴族の子がそう口にした瞬間、
『はーい、いただきました! 待ってましたのだ! へっへーん、妾はもう分かっているのだ! この後、ソラという小僧はこう言う! 『え? それがファイヤーボールだって? って……それって……』と!』
御主神さまが、そう口にされると……
「え? それがファイヤーボールだって? って……それって……」
ソラくんは本当に言いました。
『ほーら、わかってたもんねー、見るまでもないしー、んで……『俺のファイヤーボールは……皆がそんなに驚くほど小さくて弱いのか……』……と、言う!』
ドヤ顔の御主神さまは、そのまま続く言葉も予言。
すると……
「俺のファイヤーボールは……皆がそんなに驚くほど小さくて弱いのか……やっぱ魔法学校の生徒ってのはすごい……こんなすごい所で学べるんだ。よし、俺はやるぞ! 今は勝てなくても、精一杯俺は戦う! 今の俺の全力を!」
惜しい! でも、ほぼ正解です!
『ぎゃあああああああああああああああああああああ、余計な独り言がいっぱいあったのだあああああああ! おのれええ、人間のくせにいいい』
ちょっと予想した言葉が足りなかったと、頭を抱えて悶える御主神さま。
いえ、だいたい当たってますよ? すごいですよ?
『おのれえ、この怒りはマインを弄りまくって晴らしてくれる!』
『へ? ちょ、御主神さま、ダメですぅ! ぼ、ボク、お婿に行けなくなりますぅ!』
『ぬはははは、おぬしは誰にも婿に出さん~! 一生、妾のものなのだー♡』
そして、僕は今日もイジメられる。
僕がイジメられている間、決闘は御主神さまの予想通りに進む……そう思っていたのですが……
(ば、ばかな、ぼ、僕は夢を見ているのか? こんなバケモノ……こ、殺される……た、たすけ、助けてください、か、神様!)
声が響きました。
『……ぷはっ……むっ……』
『あ……』
僕をイジメていた手を止めて眉を顰める御主神さま。
そして、僕も気づきました。
人という種は、追い詰められたら神に縋ります。しかし、神がイチイチそんな声を拾いません。
ですが……
『のう、マイン……あやつ……『神様ポイント』……溜まってるのでは?』
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