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第9話 四王者※♥

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 それは、一年ほど前だった。


「ねえ、瑠莉奈ぁ、あの人って……ほら、四王者とかいう……うちの中学の卒業生の人で……」

「よんおうじゃ~? あ~、なんか聞いたことある。そんなダッさいの。昔のヤンキー漫画みたいなバンチョー? みたいなのやってるダメ学生でしょぉ? って、何アレ? 『あんなの』買ってる! うわ、キモ、ウケるぅ!」

「しー、声が大きいよ。殺されちゃうよ!」

「へへ、だいじょーぶだって。ケンカがどうとかなんて時代遅れじゃん。今はなんかあればスマホで撮って、動画と身元をネットに晒せば死刑確定なんだし、ヨユーヨユー♪」

「でもぉ……」

「あんたビビり過ぎ。よーし見てな~、あんなのどーってことないって」


 その日は色々とイベントがあったので、英成はよく覚えていた。
 刹華が予約していた美少女フィギュアを忙しくて引き取りに行けないからと、アニメショップに英成が放課後にフィギュアを代わりに引き取りに行った日の事。


「やーい、見ちゃった~! お兄さん、よんおーじゃ? 高校生ヤンキーのくせに、ヲタクのキモキモフィギュア集めてるんだ~」

「あん?」

「お兄さん私らのセンパイでしょ~? 恥ずかし~、撮っちゃったもんね~、やーい、キモ~! しかも、ちっちゃい女の子のパンツが見えるフィギュアだ~、キモキモロリコンヤンキ~、やーい!」


 身長も低くかなり幼い容姿の金髪ツインテール。ボタン全開のダボダボのカーディガンと、少し屈めば中身が見えてしまうぐらい短いスカートというだらしのない格好。
 その制服で英成は自分が以前通っていた学校の後輩だということがすぐに分かった。
 街でも校内でも有名な英成だったが、その恐ろしさまでは知らない後輩少女の無知ゆえの絡みであった。

「ちょ、瑠莉奈ちゃん……この人怖い人だよぉ」
「へへん、だいじょーぶだよ。だって、証拠写真撮っちゃったから~、これ見られたら皆の笑いものだし~! 私のフォローワー、けっこういるし~」

 美少女フィギュアは英成のものでもないのだが、仮にも四王者の皇帝が美少女フィギュアを持ち歩いていると世間にバレたら、確かに嫌だと英成は頭を抱えた。
 そう思っていると、英成の目の前に現れた瑠璃奈は、友達と思われるもう一人の少女が止めようとしているにも関わらず……

「あのさ~、キモキモセンパイさんはフリョーだからキョーカツとかしてお金いっぱいあるんでしょ~、私~、お小遣いほし~な~」
「……なに?」
「お小遣いくれたら~、キモキモセンパイさんの写真は消してあげよっかな~? いっぱいくれたら~、瑠莉奈のセクシーな写メか、パパ活したキモイおっさんたちが喜んだ私の手でシコシコしてあげよっか~?」

 英成にスマホの画面を見せ、更にはいやらしく握った拳を上下に振って「シコシコ」と口に出して笑みを浮かべる瑠璃奈。
 
「5万払えば~エッチさせてあげよっか~♥ どーせ、キモキモフィギュアばかり眺めてる童貞ヤンキーヲタクでしょ~」

 しかも、まさかの本番付き。英成の目がキラリと光る。

「へぇ~、まだJ●か●Cっぽいのに、もうそこまで経験あんのか?」
「は? 当たり前じゃん。ってかセンパイの年齢で童貞とかの方が死んだ方がいいぐらいキモイし~だから、よんおうじゃ? とかって高校生のくせに小学生みたいな肩書作ってんのぉ?」
「……あん?」
「他の、よんおうじゃってのも、センパイみたいにキモザコぉ~?」

 そんな小ばかにされた英成は心の中で思った。

(これは少々分からせてやる必要があるな)

 と。

「……おーけー、お前とエッチさせてもらおう」
「うわ、まじ! う~わ、キモー! 犯罪者予備軍~、へへん、よんおーじゃとか言われてるくせに情けない~、ざーこざこざこ~♪」

 恐らく、普段から「そういうこと」に対して経験があるがゆえに、英成のことを見下して余裕ぶっていたと思われる瑠莉奈。

「瑠莉奈ちゃん……」
「じゃあ、私ちょっとこのキモイセンパイさんと、ホテル行くから~、でも大丈夫♪ 私のテクですぐ終わるから、そこのマグドウェルドで待ってて~♥」
「で、でもぉ……」
「もう、いーじゃん。5万だよぉ? そんぐらいないと、J●なんてやってられないっての!」

 心配する友達にそう告げて、「さ、クソザコ童貞センパイさん、童貞卒業式にいこっか」と英成をリードしようとする瑠莉奈だが……相手が悪かった。







「おぼぉぉおお! ぐほっ、おほぉ……んぼぉおおおおおお♥♥♥」

 英成は童貞どころか百戦錬磨であった。
 最初はリードしようとした瑠莉奈だったが、ベッドに上がった瞬間にその精神を蕩けさせるキスと、プニプニのマンコをほぐす手マンでアッサリ潮吹いてよがる肉人形になってしまった。
 所詮、瑠莉奈がこれまで相手にしていた男たちは、運動不足で気持ち悪く、更にはセックスのテクニックに乏しいオヤジ共。対して英成は体力も肉体の強さも桁外れで、テクニックとペニスは、大和撫子の刹華を快楽堕ちさせるほどのもの。


「もう一遍言ってみろ。四王者が、なんだって?」

「ふごぉ、ご、ごめんあさィ、ザコザコうそですぅ、ザコはわらひぃんぎいいいい♥♥♥」


 対面座位の状態。
 無毛の小さな割れ目を凶暴剛直のペニスでこじ開けてギチギチにする。それだけで瑠莉奈は意識が飛びそうになる。
 そんな小柄な瑠莉奈の両脇を、英成は抱えて、腰だけでなく腕の力も使って、まるでオナホールのように瑠莉奈のマンコでペニスをしごいた。。
 

「カカカ、普段はタメか年上としかヤラね~から、年下女子は初めてだな。ビッチだからか、少し緩めか?」

「あ゛♥ あ゛♥ あ゛♥ あぁ゛♥ おほぉ♥」

「まっ、小柄な分の締め付けはあるから、B級の上ってところか?」

「おひ♥ おひィ♥ おひィ~~ん♥♥♥」


 瑠莉奈はまだ成長期の未成熟の体。しかし、そんな体に高校生どころか女子大生や社会人すら唸る、英成のねちっこい責めや前戯からのゴン責めに逆らえるわけがなかった。


「カカカ、そういやお前は俺のことも馬鹿にしてたな?」

「んぎィ♥ う、うひょです♥ ごめんらさいッ♥ バカにしてごめんなさい♥ わらしが間違ってましたァ♥ ザコマンコはわらひれしたァ♥ うひィ♥ いぐぅ♥ いぐぅ♥ お兄さんは、しゅてきなカッコいい男の人ですぅ♥♥♥」

「ふふん……で? そんな悪くてバカで、ザコマンコなお前に……5万だっけ? そんなに払うのか~……なら、まだ終わらないように何時間もかけて楽しまないとな!」

「い、いりまひぇん♥ んぼぉ♥ こ、こんなティンポ味わっちゃって、もう無理ぃ♥ ゆるひてぇ♥ らから、い、いかひぇてぇ♥♥♥ おまんごィぐぅいがせてぇええええ♥♥♥」


 ここまでくればトドメの一撃を叩き込むだけ。

「んちゅっ」
「んぶぅううううう♥♥♥」

 英成は小柄の瑠莉奈をそのまま仰向けに寝かせ、正常位の状態でキスをして、パンパンズコバコ音が響くほど叩きつける。


「ほら、そら!」

「おごぉ♥♥♥ これだめぇ♥♥♥ んあァ、く、くるぅ、んぶっ、オルガァァ、これ、しらない、でも、これが、オルガァあああ♥♥♥」

「いっけーいけいけごーごーいけいけ♪」

「んごぉほおぼぉ、連続ぅぅ♥ イッでるぅぅぅ、もういっでるぅううう♥♥♥」


 生意気にも、身の程知らずにも英成にたかろうとした年下少女は、最後には両目が「♥」になりながら、未だかつて経験したことのない世界の扉を開いてしまった。

「あひぃ♥ お……おおん……あ、ありがとうごらいましたぁ~♥」
「おう。ID教えろよ。また抱いて欲しい時や、経験したいトモダチとかいたら紹介しな~優しく経験させてやる♪ さっきお前と一緒にいた奴とかな」
「あぃ~♥」

 全身汗まみれであらゆる液体を分泌させてベトベト状態でベッドに転がってアヘ顔の瑠莉奈。
 英成は一丁上がりと頷いた。


「さて……さっさと帰るか。刹華と夜通しやる前に変な体力使っ―――」

―――♪

「ん?」

 
 用は済んで溜飲が下がった英成が身支度を整えようとしたときに、スマホにメッセージの通知が入った。
 そこには……

「……あ?」

 そこには「ノブ」と表示されていた。 











 大人も社会も敵だった。
 両親も世の中の大人も自分をゴミのように見る。だが、それで構わなかった。
 むしろそういう連中にこそ中指突き立て反発してやるのが自分の生き様だった。
 反逆し続けるのが生きがいだった。
 力でわがままを貫いた。
 抱きたい女は口説いて自分のモノにしてきた。
 誰にも屈服せず、自分のやりたいように生きてきた。
 そんな日々の中で、殺したいほど嫌いな奴がいるのは良いことだった。
 そいつらと殺りあっている時は、さらに生きていると実感できるからだ。
 そんな者たちこそ、自分にとって変わりのない繋がりだったのかもしれない。


「聞いてくれ。実はオイラは本当に『魔王』なんだ」


 その不良は英成に、そしてその場に居る男たちに言った。
 夜の神社。鳥や野良猫の気配すら完全に消え去った境内では、シルバーのネイキッドバイクのエンジン音だけが煩く響いていた。

「ったく、ホテルでお楽しみ中、急に呼び出したかと思えば、何を言ってやがる。魔王はテメェのあだ名だろうが」

 この街には代表的な四人の不良高校生が居た。

「そう、俺たち四王者の一人、魔王・王堕延永《おうだのぶなが》」

 時には四バカ。ワルガキ日本代表。クズの成れ果てなどと色々言われた。
 中でも一番この街で浸透した名は『四王者』だ。
 四人はそれぞれ、『皇帝』『帝王』『魔王』『覇王』と呼ばれた。
 四人の誰がトップになるかは、政治家の選挙よりもこの街の男には関心事だった。


「人目もねぇのは寂しいが……まぁ、構わねえ! オラ、さっさと最強を決めようぜ。そして俺がテッペンに立つ!」


 志鋼英成は四王者の一人の『皇帝』と呼ばれた。
 四人の中では一番学年が下だが、それでも四人は対等だった。


「志鋼英成の言うとおりだ。自分も決着だと思って来たのだが。違うなら帰るが、そうでないのなら自分の全身全霊を持って相手をしよう」


 英成の言葉に頷く四人の内の一人。
 『帝王』こと亜礫燦牙《あれきさんが》。高校二年生。
 不良といえば派手目を想像するが、髪も黒で前髪が少し目にかかる程度と普通。
 体格もスリムで細身。一見、決して不良には見えない落ち着いた振る舞いと口調の男が淡々と言う。


「くだらぬ話ならば俺は帰るぞ。だが、英成の言うとおり決着をつけるのならば是非もない。なんなら貴様ら三人まとめて捻り潰してもいいぞ? いや、その方が面白いな! だから来い! 全員まとめて殺してやろう! 今すぐだ! この俺を滾らせろぉ!」


 そして次に口を開いたのは、『覇王』こと瀬喜航宇《せきこうう》。
 英成より二つ上の高校三年生。
 金髪のオールバック。仏頂面で筋肉隆々で四人の中では一番体格が大きい。


「怒るなよ。エイちゃん、サンちゃん、コウちゃん。オイラもワリーと思ってんよ」


 そして『魔王』。その男の名は王堕延永《おうだのぶなが》。

「オイラとコウちゃんは何だかんだでもうすぐ卒業だ。そしてオイラは卒業後に街の不良を引退してパラダイスに行こうと思う」

 ドレッドヘヤーで上下が黒のトレーナーにスウェットに無精ひげ。
 英成はこの男が一番嫌いだった。
 人生で唯一自分より目つきが悪く、イカれていると思える男だったからだ。

「この街の最強の不良《ワル》は分からねえし、実際のところ腕っぷし最強にオイラは興味ねえ。ただ、少なくとも……この街で一番の悪だったのはオイラだ。そんなオイラが唯一認めたのがお前ら三人だ」

 そんな男が興奮で喜々とした笑みを浮かべながら身を乗り出した。

「なあ、三人とも。オイラたちは何度もやりあった仲だろう? これからオイラが向かう世界に比べりゃカスみたいな武勇伝だが、それでもお前らがオイラと対等扱いされていることに悪い気はしねえ。お前らは本物の魔王に認められたんだよ。その不良という種族がだ」

 背筋が震えるような延永の笑みは止まらない。

「オイラと一緒に来な! 一生バカやって、血が滾って、いつまでもワルガキでいられる世界に連れてってやるよ。これからもバカみたいに遊ぼうぜ、悪友ども」

 それが、この三人を英成が見た最後の日だった。


「くだらねえ。俺ァ帰るぞ。家に女待たせてるんでな」

「待てよ、エイちゃん。その場所へ行けばレベルアップの特典ももらえるぜ? 特典内容はバラバラだと思うけどな。そこでもっと高みの最強決定戦もできるぜ? 色んな女も抱き放題だ」

「何言ってんだか……お前、ヤクザの詐欺の片棒でもしてんのか?」

「これで最後かもしれねぇからだよ」


 最後? 英成はそんな言葉を鼻で笑った。
 何故なら英成にとって、ありえなかったからだ。
 この時の英成に、自分たちの戦いに終わりなんて感じた事がなかったからだ。

「俺たちの最後は四人のうち三人の息の根が止まった時さ。卒業だろうが引退だろうが知ったことかよ。今日中にやる気がねえなら、俺は帰る」

 英成はその日、それだけを言って帰った。魔王の言葉に大して興味も無かった。
 帝王と覇王もそうだと思っていた。
 だが、次の日に三人はこの街から居なくなっていた。
 事情は分からないし、何があったかも分からない。
 ただ一つ分かったことは、自分一人だけ取り残されたような虚しさだけが英成に残った。



 それが一年前のことだった。
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