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それぞれ
【羽月】第2話:逃げた先
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優李と奏に会った翌日に、私はとあるビルの前である人を待っていた。
「あれ? 羽月ちゃんじゃない。こんなところで何してるの?」
「香奈さん突然すみません。実は香奈さんに相談したいことがありまして」
「あら、何かしら? 光輝とのこと、かな?」
「はい、そうなんです。出来ればあまり人がいないところでお話をしたいんですが……」
私がそう言うと、香奈さんはちょっとだけ考える素振りを見せると、「うーん。じゃあちょっと待ってて」と言い残して、ビルの中に戻って行った。
この人の名前は、北島香奈さん。光輝のお母さんだ。
香奈さんは高校3年生の息子がいるとは思えないくらい見た目が若くて、私の目から見てもとても美しいな女性だ。
香奈さんとは小さい頃からの顔馴染みで、最近では光輝の家にお邪魔することもあるので、私と光輝の関係も理解している方だった。
「お待たせ。会社の会議室が空いてたから、そこでちょっと話しましょ。ちゃんと個室になってるから、内緒の話でも安心してできるわよ」
「はい。ありがとうございます」
私は香奈さんの後ろをついて行くと、テーブルと椅子が並んでいる殺風景な部屋に通された。香奈さんは「ちょっとここで待っててね」と言うと、部屋から出て行ってしまった。私は会社の会議室に入るのが初めてあったので、ちょっとキョロキョロしてると、香奈さんが紙コップを2つ持ってきて、1つを私に手渡した。
「それで、どうしたのかな?」
「じ、実は……」
私は怖くなってしまい、続きの言葉を口にすることができなかった。すると香奈さんは、震えている私の手の上にそっと掌を置いて、「ゆっくりでいいから」と優しい言葉をかけてくれた。
それからどれくらい経ったかは分からないけど、私は勇気を振り絞って香奈さんの顔をしっかりと見つめた。
「実は……私のお腹には光輝さんの子供がいます」
香奈さんは、私の顔をジッと見つめて厳しい顔をしている。
「それは本当なの?」
「はい。妊娠検査薬で何回か試してみましたが、いずれも陽性という結果になりました」
「そう。でも何で私の所に来たの? 私の前にまずは光輝の所に行くのが筋じゃないの?」
「光輝さんの所には先日行って、お話をさせて頂きました」
「そっか。それで光輝は何て言ったのかな?」
「……中絶しろ、と。」
私は気付いたら俯いて、テーブルにある傷を見つめがなら話していた。
光輝の言葉を耳にした香奈さんは、ずっと黙っていた。だけど、私の手の上に置いている掌はとても優しかった。
「そっか。なるほどね。あいつ羽月ちゃんにそんなことを言ったのか……。それで羽月ちゃんは私にどうして欲しいのかな?」
「私は光輝さんと結婚をして、光輝さんの子供を一緒に育てたいって考えています」
「羽月ちゃんの気持ちは痛いほど分かるよ。だって、光輝だって私が高校3年生の時に授かった子だったからね」
そう。光輝のご両親も学生結婚をしていたのだ。
-
「羽月は明日にでも光輝の母親の所に行って、身篭っていることを相談してくるんだ」
「光輝のお母さんに?」
「そうだ。光輝の両親も学生のうちに光輝を身篭って結婚をした経緯がある。羽月もあの2人が昔悪かったことを知ってるよな?」
中学の頃、光輝の家に遊びに行ったときに、みんなで昔の写真を見せてもらって、香奈さんから色々と話を聞いたから私ももちろん知っていた。
「あの2人は、曲がったことが本当に許せないタイプの人たちだ。悪いことをすると、他人の家の子供だって容赦無く殴るような人だったからな」
優李が昔を懐かしむように少しだけ微笑んでそう言った。
「だから、お前の心からの気持ちと覚悟、そして光輝のお前に対する不義をあの2人が知ったら絶対にお前の味方になってくれるだろう。もし、そこでお前が説得されてしまうと、もう中絶するしか道は無くなるからな。だから何を言われても意地でお前の考えを貫き通すんだ」
-
「だけど、羽月ちゃん。学生結婚なんて本当に苦しいだけよ。若いってだけでお金を稼ぐことも大変になるんだから」
「はい。それは覚悟の上です」
「そうは言っても、子供を育てるってことはそれだけでも、たくさんの責任が生じてくるのよ。若いってだけで世間からは白い目で見られるし。ひょっとしたら産まれてくる子供も、それが原因でイジメられちゃうかも知れない。あなたに子供を守ることができるのかしら」
「守ります。産まれてくる子供だけじゃなくて、光輝さんのことも私は支えてみせます」
また、香奈さんは私の顔をジッと見つめて黙ってしまう。
そして大きなため息を一つ吐くと、「そっか」と一言呟いた。
「分かったわ。じゃあ今度は私だけじゃなくて、お父さんと光輝を交えて話をしてみましょう。そこで改めてあなたの覚悟を確認させてもらうわ」
「……ありがとうございます」
「まぁ、私も羽月ちゃんの気持ち分かるからさ。私も光輝がお腹にいることが分かったときは本当に悩んだもの。一人で大変だっわね」
そう言うと香奈さんは私の隣に来て抱きしめてくれた。
「ちゃんと身体は労わらないとダメよ。ストレスなんてもっての外なんだから」
-
その後のスピードはとても早く、その日の夜には香奈さんから私に連絡が届いて、明日の夜に4人で話し合うことになった。
話し合いは意思の確認がほとんどの割合を占めていた。
光輝のお父さんの陽二さんも、結婚することは反対しないし、子供が産まれるなら全力で支援すると言ってくれたのだ。
公園では中絶しろと言っていた光輝だったが、その日は私に寄り添ってくれたのがとても嬉しかった。
次に私のママに妊娠したことと、結婚することを伝えに行くのだけれども、4人全員で土日のどちらかでご挨拶に行こうと、陽二さんが言ってその日の話し合いは終了した。
私が帰ろうとすると、光輝が「夜は危ないから送るよ」と言ってくれた。こんなことは初めてだったので、私は吃驚してしまったが、とても嬉しかった。
「羽月。あの時は中絶しろ何て言ってごめんな」
「ううん。いいのよ。突然言われたら誰だって動揺するもの」
「俺は怖かったんだ。学生結婚なんて辛いだけに決まっているって。だけど親からめちゃくちゃ怒られてさ、『羽月ちゃんのことをどう思ってるんだ』『好きな癖に傷付けてお前はそれでいいのか』って」
「そっか……」
「あぁ、俺はお前を手に入れるため、散々酷いことをしてきたのにな……」
「ううん。いいよ。だって最後には選んでくれたのだから。私はあなたと結婚できることになって幸せよ」
-
そして土曜日に私と光輝のご家族の4人で、ママのところへ結婚したいことを伝えに行った。だけど、ママはもちろん反対をした。
私たち全員で土下座をしてお願いをしても首を縦に振ることはなかった。
次の日から光輝は毎日家に顔を出してくれて、一緒になってお願いをしてくれた。そして中絶期間のギリギリになり、ついにママは結婚を許してくれたのだった。
「羽月。あなたたちの結婚を許します。この先あなたにどんなことが起きるか分からないけど、産んだ子供のことだけは大切にしないとダメよ」
ママは結婚することを喜ぶのではなく、何かを諦めた表情を浮かべていた。
「あれ? 羽月ちゃんじゃない。こんなところで何してるの?」
「香奈さん突然すみません。実は香奈さんに相談したいことがありまして」
「あら、何かしら? 光輝とのこと、かな?」
「はい、そうなんです。出来ればあまり人がいないところでお話をしたいんですが……」
私がそう言うと、香奈さんはちょっとだけ考える素振りを見せると、「うーん。じゃあちょっと待ってて」と言い残して、ビルの中に戻って行った。
この人の名前は、北島香奈さん。光輝のお母さんだ。
香奈さんは高校3年生の息子がいるとは思えないくらい見た目が若くて、私の目から見てもとても美しいな女性だ。
香奈さんとは小さい頃からの顔馴染みで、最近では光輝の家にお邪魔することもあるので、私と光輝の関係も理解している方だった。
「お待たせ。会社の会議室が空いてたから、そこでちょっと話しましょ。ちゃんと個室になってるから、内緒の話でも安心してできるわよ」
「はい。ありがとうございます」
私は香奈さんの後ろをついて行くと、テーブルと椅子が並んでいる殺風景な部屋に通された。香奈さんは「ちょっとここで待っててね」と言うと、部屋から出て行ってしまった。私は会社の会議室に入るのが初めてあったので、ちょっとキョロキョロしてると、香奈さんが紙コップを2つ持ってきて、1つを私に手渡した。
「それで、どうしたのかな?」
「じ、実は……」
私は怖くなってしまい、続きの言葉を口にすることができなかった。すると香奈さんは、震えている私の手の上にそっと掌を置いて、「ゆっくりでいいから」と優しい言葉をかけてくれた。
それからどれくらい経ったかは分からないけど、私は勇気を振り絞って香奈さんの顔をしっかりと見つめた。
「実は……私のお腹には光輝さんの子供がいます」
香奈さんは、私の顔をジッと見つめて厳しい顔をしている。
「それは本当なの?」
「はい。妊娠検査薬で何回か試してみましたが、いずれも陽性という結果になりました」
「そう。でも何で私の所に来たの? 私の前にまずは光輝の所に行くのが筋じゃないの?」
「光輝さんの所には先日行って、お話をさせて頂きました」
「そっか。それで光輝は何て言ったのかな?」
「……中絶しろ、と。」
私は気付いたら俯いて、テーブルにある傷を見つめがなら話していた。
光輝の言葉を耳にした香奈さんは、ずっと黙っていた。だけど、私の手の上に置いている掌はとても優しかった。
「そっか。なるほどね。あいつ羽月ちゃんにそんなことを言ったのか……。それで羽月ちゃんは私にどうして欲しいのかな?」
「私は光輝さんと結婚をして、光輝さんの子供を一緒に育てたいって考えています」
「羽月ちゃんの気持ちは痛いほど分かるよ。だって、光輝だって私が高校3年生の時に授かった子だったからね」
そう。光輝のご両親も学生結婚をしていたのだ。
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「羽月は明日にでも光輝の母親の所に行って、身篭っていることを相談してくるんだ」
「光輝のお母さんに?」
「そうだ。光輝の両親も学生のうちに光輝を身篭って結婚をした経緯がある。羽月もあの2人が昔悪かったことを知ってるよな?」
中学の頃、光輝の家に遊びに行ったときに、みんなで昔の写真を見せてもらって、香奈さんから色々と話を聞いたから私ももちろん知っていた。
「あの2人は、曲がったことが本当に許せないタイプの人たちだ。悪いことをすると、他人の家の子供だって容赦無く殴るような人だったからな」
優李が昔を懐かしむように少しだけ微笑んでそう言った。
「だから、お前の心からの気持ちと覚悟、そして光輝のお前に対する不義をあの2人が知ったら絶対にお前の味方になってくれるだろう。もし、そこでお前が説得されてしまうと、もう中絶するしか道は無くなるからな。だから何を言われても意地でお前の考えを貫き通すんだ」
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「だけど、羽月ちゃん。学生結婚なんて本当に苦しいだけよ。若いってだけでお金を稼ぐことも大変になるんだから」
「はい。それは覚悟の上です」
「そうは言っても、子供を育てるってことはそれだけでも、たくさんの責任が生じてくるのよ。若いってだけで世間からは白い目で見られるし。ひょっとしたら産まれてくる子供も、それが原因でイジメられちゃうかも知れない。あなたに子供を守ることができるのかしら」
「守ります。産まれてくる子供だけじゃなくて、光輝さんのことも私は支えてみせます」
また、香奈さんは私の顔をジッと見つめて黙ってしまう。
そして大きなため息を一つ吐くと、「そっか」と一言呟いた。
「分かったわ。じゃあ今度は私だけじゃなくて、お父さんと光輝を交えて話をしてみましょう。そこで改めてあなたの覚悟を確認させてもらうわ」
「……ありがとうございます」
「まぁ、私も羽月ちゃんの気持ち分かるからさ。私も光輝がお腹にいることが分かったときは本当に悩んだもの。一人で大変だっわね」
そう言うと香奈さんは私の隣に来て抱きしめてくれた。
「ちゃんと身体は労わらないとダメよ。ストレスなんてもっての外なんだから」
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その後のスピードはとても早く、その日の夜には香奈さんから私に連絡が届いて、明日の夜に4人で話し合うことになった。
話し合いは意思の確認がほとんどの割合を占めていた。
光輝のお父さんの陽二さんも、結婚することは反対しないし、子供が産まれるなら全力で支援すると言ってくれたのだ。
公園では中絶しろと言っていた光輝だったが、その日は私に寄り添ってくれたのがとても嬉しかった。
次に私のママに妊娠したことと、結婚することを伝えに行くのだけれども、4人全員で土日のどちらかでご挨拶に行こうと、陽二さんが言ってその日の話し合いは終了した。
私が帰ろうとすると、光輝が「夜は危ないから送るよ」と言ってくれた。こんなことは初めてだったので、私は吃驚してしまったが、とても嬉しかった。
「羽月。あの時は中絶しろ何て言ってごめんな」
「ううん。いいのよ。突然言われたら誰だって動揺するもの」
「俺は怖かったんだ。学生結婚なんて辛いだけに決まっているって。だけど親からめちゃくちゃ怒られてさ、『羽月ちゃんのことをどう思ってるんだ』『好きな癖に傷付けてお前はそれでいいのか』って」
「そっか……」
「あぁ、俺はお前を手に入れるため、散々酷いことをしてきたのにな……」
「ううん。いいよ。だって最後には選んでくれたのだから。私はあなたと結婚できることになって幸せよ」
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そして土曜日に私と光輝のご家族の4人で、ママのところへ結婚したいことを伝えに行った。だけど、ママはもちろん反対をした。
私たち全員で土下座をしてお願いをしても首を縦に振ることはなかった。
次の日から光輝は毎日家に顔を出してくれて、一緒になってお願いをしてくれた。そして中絶期間のギリギリになり、ついにママは結婚を許してくれたのだった。
「羽月。あなたたちの結婚を許します。この先あなたにどんなことが起きるか分からないけど、産んだ子供のことだけは大切にしないとダメよ」
ママは結婚することを喜ぶのではなく、何かを諦めた表情を浮かべていた。
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