最愛の幼馴染みと親友に裏切られた俺を救ってくれたのはもう一人の幼馴染みだった

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裏切りと決別

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「光輝……教えてほしいことがあるの。今日会うことできないかしら?」


 電話越しから聞こえる光輝の声は、ちょっと機嫌が悪そうだった。光輝は電話を突然かけられることを極端に嫌っている。その理由を尋ねたら、RINEの場合はメッセージを確認するのは自分の自由意志になるけど、電話は強制的に時間を拘束されてしまうから、ということだった。言ってることは理解出来るけど、ここまで不機嫌そうな声を出さなくても良いのに、とは思ってしまう。


「光輝にどうしても聞きたいことがあるからさ、今からいつもの公園に来てくれないかしら? 私があなたの家まで行っても良いのだけれど。今回は私の都合だしあなたに合わせるわ」


 光輝は渋々ながら花咲公園に来てくれることになった。
 そう言えば光輝の家にまだ行ったことがなかったわね。以前塾の帰りに光輝に会いたくなって、家の前に着いてからRINEをしたら怒られたのよね。優李だったら両親も仲良しで、本物の家族同然だったからいつ行っても歓迎されたのに。


「待たせたな。教えてほしいことって何なんだ?」


 私がベンチに座って考えに耽っていると、いつの間にか光輝が私の隣に座っていた。やっぱりイライラしてるかも。光輝の横顔を見て不安な気持ちが膨らんできた。


「あのね。ちょっと聞きにくいことなのだけれども、さっきまで奏と一緒にいてね、あなたの話題にちょっとなったのよ」

「は? 俺の話題に?」

「えぇ、奏が言うにはね、あなたには私以外にも2人の女の子がいるって。しかも、彼氏がいた人の彼女さんを奪ったって言ってたのよ」


 光輝の顔が険しくなっていった。


「はぁ? 奏がそんなことを言ってたって? そんなことあるはずないだろ! 羽月は俺の言葉よりも奏のことを信じるのか? 優李になんか吹き込まれたんだろ。羽月と俺の関係に嫉妬して嫌がらせしてるだけだ」

「私は疑ってはないのよ。だけど、奏が言うものだからあなたの口から違うって言葉を聞きたかっただけなの。ごめんなさいね、嫌なことを聞いてしまって」


 光輝は険しい顔から一転して、とても優しい笑顔になった。そして私の頭に手を乗せて、優しく撫でてくれる。


「俺の言葉を信じてくれて嬉しいよ。ひょっとしたらこれからも、あいつらが嫌がらせみたいなことをしてくるかも知れないけど真に受けたら駄目だからな。俺はお前のことだけを愛してるよ」

「ありがとう、光輝。あなたと私は共犯者。一緒に罪を重ねたのだから、これからも一緒に背負ってくれるかしら」

「あぁ、当たり前だろ。中学生のときに告白したその日から、俺の気持ちは変わってないよ」


 私は光輝の言葉に安心をした。自分自身でも卑怯な人間だと思う。今までは優李の優しさに甘えて、次は共犯という言葉で光輝を繋ぎ止めようとしているのだ。
 どうして。私はどうしてこんなにも醜い生き物なのだろうか。



 -



 優李は私とは何があっても離れないと疑っていなかった。
 今までもたくさん迷惑をかけて来たけど、優しい優李はそんな私をいつも許してくれていたのだから。だけど、昨日の優李の顔を見た瞬間に、私はもう許されないと直感してしまった。

 私は優李のことを本当に心から愛していた。いいえ、今でも愛している。だけど光輝とのエッチがあまりにも魅惑的で抗うことができなかった。

 中学生の時は同情で、再会して初めてのエッチは、中学生に感じた感覚の確認だった。私は最初のうちは、こんなことをしてはいけない。優李のことを裏切る行為はこれ以上重ねてはいけないと思っていた。だけど、回数を重ねていくうちに、そんな罪悪感や背徳感はいつの間にか消えていた。

 昨日優李の家から光輝と出てから、その足でまたラブホテルへ入った。そのときのエッチは、今までに比べたら驚くほど普通だったのだ。そして私は気付いてしまった。今までエッチで、私が昂り、乱れ、堕ちていったのは、優李への罪悪感があったからなのだ。

 私は罪悪感や背徳感を感じなくなったのではなく、ただ快楽へと変換していただけだったということに気付いてしまった。

 だからだろう。優李に私と光輝との関係がバレてしまった時点で、私を虜にしていた快楽が消えてしまったのだ。


(ふふっ。自業自得とは言え、余りにも滑稽すぎるわね)


 今まで光輝と一緒にいて楽しいという感情になったことはあるが、身も心も満たされる幸福感を感じたことはなかった。それらは今まで優李から全てもらっていた。だから光輝には快楽だけを求めていたのだ。だけど優李はもういなくなってしまった。

 私は、自ら手放してしまったのだ。
 優李から与えられてた、親愛の全てを。






*** 後書き ***

第一章はこちらで完結です。
羽月視点の過去の振り返りと、断絶した直後のゆーくんのお話を幕間で挟んでから第二章となります。
第二章は三年生に進級した、ゆーくんと奏の学校生活がメインになります。
NTRや復讐からは外れてしまいますが、本筋的には必要だと感じている箇所なので引き続き応援して頂けたら嬉しいです。

また、羽月と光輝へのヘイトはまだ収まっていないかと思います。(特に光輝への)
ですが、第三章で動き出して第四章で私なりの決着がつけられるかな。と思っております。
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