最愛の幼馴染みと親友に裏切られた俺を救ってくれたのはもう一人の幼馴染みだった

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裏切りと決別

第4話:望まぬ買い物

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「そのことなんだけどさ。ゆーくん、今度一緒に監視カメラを買いに行かないかな?」


 奏は部活帰りに寄ったカフェで、監視カメラを買って俺の部屋に設置しないかと提案して来たのだ。もし俺たちが考えていることがお門違いで、あの2人に疾しいことが一切無かったら、彼女と親友が一緒にいるところを盗撮するクソ野郎ってことになってしまう。


「それは流石にやりすぎじゃないか?」

「ゆーくんの言いたいことは私にも分かるよ。だって私だってあの日からずっとどうしたら良いか考えてたんだもん」


 奏はちょっと涙目になっていた。
 それもそうか、あいつらは俺にとって彼女と親友だけど、奏にとっても羽月は親友だし、光輝も小さな頃から一緒にいる友達だもんな。苦しいのは俺だけじゃないということに今更気付いた。
 俺はどんだけ悲劇のヒロインを気取ってんだよ。あまりの不甲斐なさに、苛々としてしまった。


「それにさ、あの2人に何もなければそのまま家の防犯カメラとして使えば良いし、言わなければバレないと思うのよね。モヤモヤが晴れて、今まで通り仲良し四人組になれるなら安いもんじゃない?」

「そうだな。奏の言う通りだよ。よし、じゃあ監視カメラを今度買いに行くか!」

「ゆーくん……、あの2人を騙すような真似をさせちゃってごめんね」

「良いんだよ。奏がそうやって提案してくれなかったら、俺なんてずっと一人でモヤモヤしてただけだからな。助かったよ」


 そう言って、さっきのように奏の頭をワシワシと撫でたが、今回の奏は「えへへ」と笑うだけで抵抗は一切しなかった。



 -



 監視カメラを買いに行くのは、部活がない今週の金曜日になった。
 事前に色々と調べてくれていたようで、スマホで候補を見せてくれた。

 奏のお勧めは、映像をリアルタイムに閲覧して、音声まで聞くことができる監視カメラだ。奏が見せてくれた監視カメラの金額は、数千円から高くても2万円程度だった。

 思ったよりも高くないんだな。
 確かに思わぬ出費ではあるが、俺はあまりお金を使い込むタイプではないので、今まで貯めていたお年玉貯金を使えば全然余裕で購入することができる。
 奏は「提案したのは私だし、半額支払うよ」と言ってくれたが、これは俺と羽月、そして光輝の問題なので丁重に断らせてもらった。


「再来週にまた私たち4人で遊ぶじゃない? その日までにちゃんと映るかテストしないとね!」

「あぁ、そうだな。色々と助けてもらうかもしれないけど、そのときは頼むな」

「うん。私なら全然大丈夫だよ。ゆーくん、頑張ろうね」


 奏の優しさい笑顔を見て、俺には本当に良い友達がいるんだなと思って嬉しくなってしまった。



 -



 金曜日の放課後に、俺と奏は部活がないのに、部室で待ち合わせをした。
 すぐに帰宅してしまうと、羽月と鉢合わせしてしまう可能性があったため、部室で時間を潰してから監視カメラを購入しに行くことになったのだ。

 そして、都内有数の電気街に到着した俺たちは、大量のメイドさんのプレッシャーを躱して目的地のビルに到着した。


「お、おい。本当にここで良いのか?」

「う、うん。間違ってないはずよ……」


 俺たちの目の前にあるビルは、大通りのキラキラした建物と違い、薄暗くてちょっと怖かった。いや、かなり怖かった。


「よ、よし。じゃあ俺が先に入るから、奏は後を付いてくるんだぞ」

「わ、分かった。ゆーくんがこんなに頼もしく見えるなんて……」

「俺はいつでも頼りがいのある漢だろうが!」


 俺と奏はビルの怪しげな雰囲気に負けないように、馬鹿話をしながら恐る恐る中に入っていく。
 そして、今にもワイヤーが切れて落ちてしまうのではないかと疑ってしまうくらい、年季の入ったエレベーターに2人でドキドキしながら乗り込むと、奏が「冒険みたいでちょっと楽しいね」と悪戯顔で笑いかけて来た。



 -



「うわぁ、めちゃくちゃ多いな」

「こんなにも商品数があるんだね……。目当ての監視カメラがあると良いんだけど」


 俺たちは落ち着きなくキョロキョロと店内を見渡しながら、商品を物色し始めた。しかし、今まで監視カメラとは縁遠い生活を送っていた俺たちには、説明を見てもさっぱり分からなかったので、店員さんに色々と教えてもらってなんとか候補を3つまで絞ることができた。


「さて、どれにしようか……」

「どれも良さそうだよね。ポイントはどこまでキレイな映像を求めるかなんだけど、どうしようか?」

「うーん。良く分からないけど、普通のと高解像度の金額差が1万程度なんだし、この際だから良いやつでも買っておくか。マイクも高性能みたいだしな」

「映像が荒れたり、音声もノイズばかりだったら台無しになるかもだもんね」

「だな。じゃあレジに行って買ってくるわ!」


 奏との買い物はちょっと楽しいな、と思いながらも、手に持った監視カメラを見て俺は大きな溜め息をついてしまう。
 俺は何が悲しくて監視カメラなんて買わないといけないんだ。
 決して安くはない監視カメラを買うために、諭吉さんを財布から数枚出しながら俺は自嘲気味に笑った。



 ー



「今日はありがとうな」


 俺たちは、帰る前にファミレスに寄って、これからの作戦を練ることにした。


「とりあえず再来週の土曜日に照準を合わせて行動しないとだよね!」

「そうだな。それまでに俺は監視カメラを設置して、ちゃんと映ってるかテストとかしないとな」

「うん、そうだね! 本番になって映像が映ってませんでしたとかシャレにならないよね」

「さすがにそれだけは回避したいよな……」


 そう言って、俺は奏が俺の後にレジに並んだことを思い出した。


「そう言えば、さっきのお店で何か買ってたよな? あそこで奏が買いそうなの無かったんだけど、一体何を買ったんだ?」

「へへっ。それは内緒だよ!」

「なんだよケチ臭ぇな。それくらい教えてくれよ」

「絶対にだめぇ!」


 奏はアハハと元気に笑っていたが、徐々にその表情に影が差してくる。


「……こんな風に笑っちゃうなんて最低だよね。だって、友達2人のことを騙して盗撮しようとしてるんだから」

「奏が責任に感じることはないよ。あの2人のことを監視カメラで撮影しようと決断したのは俺なんだから。提案したのは確かに奏かも知れないけど、俺はそれを蹴ることだってできたんだし、そんなに気にするなって」

「そうなんだけどさ、そんな簡単に割り切ることはできないよ」

「もしさ、あいつらに何もなかったら2人で全力土下座で謝罪しような。多分許してくれるよ」


 奏は伏し目がちに「うん」と小さく頷いた。


「それよりも本番の土曜日はどういうスケジュールにしようか?」


 俺がわざとらしく元気な声を出すと、奏は「ふふっ」と笑ってくれた。
 そして、俺と奏は彼女と親友を騙す計画を練るのであった。
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