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第三章
028:生方瀬那
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『それから私は、おじいちゃんの家にいながら、化け物の気配を感じたらそこに向かって仇が現れるのを待っているっていう感じなのよ』
あまりにも壮絶な過去の話を聞いて、俺と黒衣は隣に座っている女の子に対して何も言うことが出来なかった。
彼女も別に慰めの言葉が欲しかったわけではなかったのか、『じゃあ、次は貴方たちの番よ』と言ってくる。
俺も正直、なんて言っていいか分からないので、「分かった」と言ってから話を始めようとした。
そして、そう言えば自己紹介をしていなかったことに、今更ながら気付いたので話し始める前に俺と黒衣のことを紹介した。
すると、『確かに自己紹介がまだだったわね。――私は瀬那。生方瀬那っていうの。年齢は……25歳ってことになるのかしら。見た目は17歳の時から変わってないんだけどね』と自重気味に笑った。
「では、これから俺たちと、あの化け物について説明をしますね」
生方さんは、俺が急に話し方が丁寧になったので、クスリと笑ってから『別に今まで通りタメ語でいいわよ』と言ってくれたので、遠慮なく先ほどまでと同じように話をさせてもらうことにした。
生方さんは俺と黒衣がどうやって知り合ったのか。
俺も怪に一度殺されていること。
神魂が発現して怪と戦っていること。
滅怪とは無関係であること。
怪の国があって、そこで人間が奴隷にされていること。
今は日国に出現する怪を倒していること。
そういうことを長い時間を掛けて説明をした。
生方さんは、自分と同じように怪に殺されたと説明をされてから、目が少し柔らかくなった気がする。
『神楽くんも辛かったのね……』
話を最後まで静かに聞いていた生方さんは、一言だけポツリと呟いた。
生方さんには大体の説明が終わったし、気になったことを黒衣に質問してみることにした。
「ところで、黒衣は何で生方さんがもう亡くなっているって気がついたんだ?」
『それ私も思ってたの。私のことを見える人はたまにいたみたいだけど、幽霊だって気付かれたことはなかったわ』
「それは、生方さんの魂の在り方が不安定だったからです。とても弱々しくて、今にも消えてしまいそうだったから……」
「消えてしまいそう? それって生方さんの魂が消滅する可能性があるってことか?」
俺は咄嗟に生方さんの方をみると、とても不安そうな顔をして黒衣のことを見つめていた。
「はい。恐らく一年もしないうちに、生方さんの魂は消滅する可能性がございます」
「マジかよ……」
あまりにも残酷な事実に俺は絶句してしまう。
それは生方さんも同様だったようで、俯いてそのまま固まってしまった。
「ですが、一つだけ消滅を長らえさせることが出来ます」
「本当に?」
黒衣の言葉に、生方さんの目には微かに希望の光が宿った。
「その方法は、詩庵様の影の中に入ることです。影入を使用すれば、私が認めた魂を入れることができるのです」
「お、俺の影の中に入るとどうなるんだ?」
「詩庵様の影の中は魔素の量が多いため、日国よりも魂の消滅を長らえさせることができるのです」
「なるほどな。生方さんはあまりピンと来ないかも知れないけど、黒衣の術を使うと俺の影の中に入ることができるんだよ。まぁ、百聞は一見に如かずっていうし、見てもらった方が早いかな?」
俺がそう言うと、黒衣がピョンと俺の影の中に入っていった。
その光景を目の当たりにした生方さんは、『え? 嘘? 本当のことなの?』と普通に驚いていた。
そりゃそうだよな。
例え自分が幽霊という超常現象の存在だったとしても、元は人間だし理解の範囲外であることには間違いないだろう。
生方さんは俺の影の中に入ることを了承して、これからは一緒に生活することが決まった。
話がまとまったので、俺たちの家に帰ろうと思ったのだが、生方さんが最後におじいさんたちに挨拶をしたいというので、家に帰る前に立ち寄ることにする。
おじいさんの家に到着すると、生方さんは家の中に入っていく。
そして10分くらいして帰ってきた生方さんの目は、真っ赤に充血していたが、気付かない振りをして家路に向かった。
―
「慣れないかも知れないけど、自分の家だと思ってゆっくりしてな」
家に帰るなり、生方さんは借りてきた猫状態になっていたのだ。
実は男の家に上がるのは人生で初めてのことだったらしく、それによりとても緊張してしまったということだった。
俺も凛音の部屋に初めて入った時はドキドキしたしな。
やっぱり友達だったとしても、異性の部屋に入るのは緊張するよね。
とりあえず、生方さんには話をするとき以外は極力影の中に入ってもらうことになった。
どうやら影の中は結構魔改造がされているらしく、とても居心地の良い空間になっているらしい。
さらに、影の中からは外の様子を知ることが出来ないので、俺がトイレやお風呂に入っていてもその気配を感じることが出来ないので、こちらとしてもあまり気を使う必要がないのだ。
生方さんも落ち着いてきたので、俺たちは今ソファーに座りながら、今後どうするかを話し合うことにする。
それにしても、生方さんはドアとかすり抜けられる幽霊なのに、なんでソファーには普通に座れるのだろうか?
今後の話をする前に、ちょっと気になったから聞いてみると、「これは座れる。これは持てる」と意識をするとソファーに座ることもできるし、何かを持つこともできるということだった。
ひょっとしたら、案外ポルターガイスト現象も、幽霊の意識の問題なのかも知れない。
多分違うとは思うけど。
「じゃあ、まず生方さんに聞きたいんだけど、公園で話してくれたときに怪の気配を感じて動き出してから、実際に怪が出てくるまでにタイムラグがあったみたいなんだけど、どれくらいの時差があったか分かる?」
『そうね。……大体30分くらいかしら』
「それって、毎回怪が来る前に気配を察知してるのかな?」
『そうかも知れないわね。大概は私の方が早く着くわよ』
ここまで無言だった黒衣が「霊装の気配を予知してる?」と呟いた。
そう。俺もこのことがとても気になっていたのだ。
もし、生方さんが怪の出現を予知することができるのなら、俺たちの活動の幅はかなり広くなる。
そして、今までよりもより確実に、人間の被害を減らすことができるのだ。
「もし良かったら、これから怪が現れそうになったら俺たちに教えてくれないか? 生方さんのその能力が本物だったら、かなり凄いことになると思うんだ」
『えぇ、もちろん大丈夫よ』
「うん、それで大丈夫。あとこれからなんだけど、優先順位は生方さんの仇になる怪を倒すこと。これを第一の目標にしよう。だけど、問題はその怪がまた日国に現れるのかっていうところだな」
『それは問題ないと思うわ。あいつは月に一回くらいのペースで日国に現れるの。だけど今月はまだ来てないから、そろそろこっちに来ると思うのよね』
怪は等級によって日国と怪の国を往復できる期間が決まっている。
例えば、4等級までは毎日のように行ったり来たりできるのだが、3等級になると一度日国に来ると2週間は怪の国に戻ることが出来ない。
そのため、一度こちらに来ると滅怪などに倒されてしまう確率が高まるのだ。
なので、3等級以上が日国に来ることは、今までの経験上あまりないことだった。
しかし、生方さんの話を聞く限りは、3等級よりも上なのではないかと思う。
4等級より下だったら、毎日来ることができるので、そこまで日数を開ける必要がないからだ。
まぁ、3等級なら問題なく倒せると思うので、正直そこまで問題にはしていなかった。
取り敢えず明日からは、生方さんの予知のテストをしてみることになった。
本当だったらこれからの怪退治がとても捗ることだろう。
俺はちょっとワクワクしてきてしまった。
そして、真剣な会話は終了して、俺はコーヒーを飲みながら、黒衣に何気ない質問をしてみた。
「生方さんを見れるなら、ひょっとして俺って今幽霊のこと見ることができる状態なのかな?」
「いいえ。正直幽霊がいるというのは私には分かりません」
「え? だって生方さんがいるじゃん」
俺がそういうと、隣で生方さんもウンウンと頷いている。
「実は生方さんを見ることができるのは特別なのです」
「特別?」
「はい。私たちが亡くなられた人の魂を見ることができる唯一の例外が、怪に殺された人の魂なのです」
その言葉を聞いて、俺と生方さんは息を呑んで真剣な眼差しを黒衣に向ける。
「通常ですと、殺された魂は例外なく怪に食われてしまいます。ですが、生方さんは怪に魂を喰われる前に、滅怪が怪を倒してしまったので生方さんは魂だけが残ってしまったのです」
「生方さんみたいな魂って、必ず幽霊みたいになってしまうってことか?」
「そんなことはございません。通常ですと、輪廻転生の理に流されることでしょう。ですが、生方さんの場合は、怪に対して強い恨みを持っていました。それが現世と繋ぐ結果となったのでしょう」
「けど、輪廻転生の理から外れたら、怪の国に流れてしまって怪として生まれ変わるんじゃなかったのか?」
「それは、この世に対する恨みがある場合でございます。怪に対しての恨みがある場合は、その存在を否定することになるので怪になることはございません」
「なるほど。だけど、その結果が魂の消失になるってことか……。クソ。あいつらに関わった人は本当に不幸になっちまうんだな。絶対に俺がぶっ潰してやる……」
俺の話し方が急に変わったのに驚いたのか、生方さんが目を見開いて俺のことを見てきた。
ちょっと恥ずかしくなった俺は、実は過去にグレていたことがあって、頭にくることがあると口調が以前のようになってしまうことを説明した。
生方さんは何が面白かったのか、俺の話を聞くと「あはははは」と大きな声で笑い始めた。
『神楽くんのこと、年齢の割には大人っぽいなって思ってたんだけど、そんな一面も持ってたんだね。なんか可愛く思えてきちゃったよ』
俺はぶっちゃけ恥ずかしかったけど、生方さんがこんなにも笑ってくれていることが嬉しかった。
生方さんは本当に辛い思いをしてきたんだ。
いつか魂が消滅してしまうのかも知れないけど、それまでに仇の怪を倒してずっと笑顔でいさせてあげたいと俺は心の中で思うのであった。
あまりにも壮絶な過去の話を聞いて、俺と黒衣は隣に座っている女の子に対して何も言うことが出来なかった。
彼女も別に慰めの言葉が欲しかったわけではなかったのか、『じゃあ、次は貴方たちの番よ』と言ってくる。
俺も正直、なんて言っていいか分からないので、「分かった」と言ってから話を始めようとした。
そして、そう言えば自己紹介をしていなかったことに、今更ながら気付いたので話し始める前に俺と黒衣のことを紹介した。
すると、『確かに自己紹介がまだだったわね。――私は瀬那。生方瀬那っていうの。年齢は……25歳ってことになるのかしら。見た目は17歳の時から変わってないんだけどね』と自重気味に笑った。
「では、これから俺たちと、あの化け物について説明をしますね」
生方さんは、俺が急に話し方が丁寧になったので、クスリと笑ってから『別に今まで通りタメ語でいいわよ』と言ってくれたので、遠慮なく先ほどまでと同じように話をさせてもらうことにした。
生方さんは俺と黒衣がどうやって知り合ったのか。
俺も怪に一度殺されていること。
神魂が発現して怪と戦っていること。
滅怪とは無関係であること。
怪の国があって、そこで人間が奴隷にされていること。
今は日国に出現する怪を倒していること。
そういうことを長い時間を掛けて説明をした。
生方さんは、自分と同じように怪に殺されたと説明をされてから、目が少し柔らかくなった気がする。
『神楽くんも辛かったのね……』
話を最後まで静かに聞いていた生方さんは、一言だけポツリと呟いた。
生方さんには大体の説明が終わったし、気になったことを黒衣に質問してみることにした。
「ところで、黒衣は何で生方さんがもう亡くなっているって気がついたんだ?」
『それ私も思ってたの。私のことを見える人はたまにいたみたいだけど、幽霊だって気付かれたことはなかったわ』
「それは、生方さんの魂の在り方が不安定だったからです。とても弱々しくて、今にも消えてしまいそうだったから……」
「消えてしまいそう? それって生方さんの魂が消滅する可能性があるってことか?」
俺は咄嗟に生方さんの方をみると、とても不安そうな顔をして黒衣のことを見つめていた。
「はい。恐らく一年もしないうちに、生方さんの魂は消滅する可能性がございます」
「マジかよ……」
あまりにも残酷な事実に俺は絶句してしまう。
それは生方さんも同様だったようで、俯いてそのまま固まってしまった。
「ですが、一つだけ消滅を長らえさせることが出来ます」
「本当に?」
黒衣の言葉に、生方さんの目には微かに希望の光が宿った。
「その方法は、詩庵様の影の中に入ることです。影入を使用すれば、私が認めた魂を入れることができるのです」
「お、俺の影の中に入るとどうなるんだ?」
「詩庵様の影の中は魔素の量が多いため、日国よりも魂の消滅を長らえさせることができるのです」
「なるほどな。生方さんはあまりピンと来ないかも知れないけど、黒衣の術を使うと俺の影の中に入ることができるんだよ。まぁ、百聞は一見に如かずっていうし、見てもらった方が早いかな?」
俺がそう言うと、黒衣がピョンと俺の影の中に入っていった。
その光景を目の当たりにした生方さんは、『え? 嘘? 本当のことなの?』と普通に驚いていた。
そりゃそうだよな。
例え自分が幽霊という超常現象の存在だったとしても、元は人間だし理解の範囲外であることには間違いないだろう。
生方さんは俺の影の中に入ることを了承して、これからは一緒に生活することが決まった。
話がまとまったので、俺たちの家に帰ろうと思ったのだが、生方さんが最後におじいさんたちに挨拶をしたいというので、家に帰る前に立ち寄ることにする。
おじいさんの家に到着すると、生方さんは家の中に入っていく。
そして10分くらいして帰ってきた生方さんの目は、真っ赤に充血していたが、気付かない振りをして家路に向かった。
―
「慣れないかも知れないけど、自分の家だと思ってゆっくりしてな」
家に帰るなり、生方さんは借りてきた猫状態になっていたのだ。
実は男の家に上がるのは人生で初めてのことだったらしく、それによりとても緊張してしまったということだった。
俺も凛音の部屋に初めて入った時はドキドキしたしな。
やっぱり友達だったとしても、異性の部屋に入るのは緊張するよね。
とりあえず、生方さんには話をするとき以外は極力影の中に入ってもらうことになった。
どうやら影の中は結構魔改造がされているらしく、とても居心地の良い空間になっているらしい。
さらに、影の中からは外の様子を知ることが出来ないので、俺がトイレやお風呂に入っていてもその気配を感じることが出来ないので、こちらとしてもあまり気を使う必要がないのだ。
生方さんも落ち着いてきたので、俺たちは今ソファーに座りながら、今後どうするかを話し合うことにする。
それにしても、生方さんはドアとかすり抜けられる幽霊なのに、なんでソファーには普通に座れるのだろうか?
今後の話をする前に、ちょっと気になったから聞いてみると、「これは座れる。これは持てる」と意識をするとソファーに座ることもできるし、何かを持つこともできるということだった。
ひょっとしたら、案外ポルターガイスト現象も、幽霊の意識の問題なのかも知れない。
多分違うとは思うけど。
「じゃあ、まず生方さんに聞きたいんだけど、公園で話してくれたときに怪の気配を感じて動き出してから、実際に怪が出てくるまでにタイムラグがあったみたいなんだけど、どれくらいの時差があったか分かる?」
『そうね。……大体30分くらいかしら』
「それって、毎回怪が来る前に気配を察知してるのかな?」
『そうかも知れないわね。大概は私の方が早く着くわよ』
ここまで無言だった黒衣が「霊装の気配を予知してる?」と呟いた。
そう。俺もこのことがとても気になっていたのだ。
もし、生方さんが怪の出現を予知することができるのなら、俺たちの活動の幅はかなり広くなる。
そして、今までよりもより確実に、人間の被害を減らすことができるのだ。
「もし良かったら、これから怪が現れそうになったら俺たちに教えてくれないか? 生方さんのその能力が本物だったら、かなり凄いことになると思うんだ」
『えぇ、もちろん大丈夫よ』
「うん、それで大丈夫。あとこれからなんだけど、優先順位は生方さんの仇になる怪を倒すこと。これを第一の目標にしよう。だけど、問題はその怪がまた日国に現れるのかっていうところだな」
『それは問題ないと思うわ。あいつは月に一回くらいのペースで日国に現れるの。だけど今月はまだ来てないから、そろそろこっちに来ると思うのよね』
怪は等級によって日国と怪の国を往復できる期間が決まっている。
例えば、4等級までは毎日のように行ったり来たりできるのだが、3等級になると一度日国に来ると2週間は怪の国に戻ることが出来ない。
そのため、一度こちらに来ると滅怪などに倒されてしまう確率が高まるのだ。
なので、3等級以上が日国に来ることは、今までの経験上あまりないことだった。
しかし、生方さんの話を聞く限りは、3等級よりも上なのではないかと思う。
4等級より下だったら、毎日来ることができるので、そこまで日数を開ける必要がないからだ。
まぁ、3等級なら問題なく倒せると思うので、正直そこまで問題にはしていなかった。
取り敢えず明日からは、生方さんの予知のテストをしてみることになった。
本当だったらこれからの怪退治がとても捗ることだろう。
俺はちょっとワクワクしてきてしまった。
そして、真剣な会話は終了して、俺はコーヒーを飲みながら、黒衣に何気ない質問をしてみた。
「生方さんを見れるなら、ひょっとして俺って今幽霊のこと見ることができる状態なのかな?」
「いいえ。正直幽霊がいるというのは私には分かりません」
「え? だって生方さんがいるじゃん」
俺がそういうと、隣で生方さんもウンウンと頷いている。
「実は生方さんを見ることができるのは特別なのです」
「特別?」
「はい。私たちが亡くなられた人の魂を見ることができる唯一の例外が、怪に殺された人の魂なのです」
その言葉を聞いて、俺と生方さんは息を呑んで真剣な眼差しを黒衣に向ける。
「通常ですと、殺された魂は例外なく怪に食われてしまいます。ですが、生方さんは怪に魂を喰われる前に、滅怪が怪を倒してしまったので生方さんは魂だけが残ってしまったのです」
「生方さんみたいな魂って、必ず幽霊みたいになってしまうってことか?」
「そんなことはございません。通常ですと、輪廻転生の理に流されることでしょう。ですが、生方さんの場合は、怪に対して強い恨みを持っていました。それが現世と繋ぐ結果となったのでしょう」
「けど、輪廻転生の理から外れたら、怪の国に流れてしまって怪として生まれ変わるんじゃなかったのか?」
「それは、この世に対する恨みがある場合でございます。怪に対しての恨みがある場合は、その存在を否定することになるので怪になることはございません」
「なるほど。だけど、その結果が魂の消失になるってことか……。クソ。あいつらに関わった人は本当に不幸になっちまうんだな。絶対に俺がぶっ潰してやる……」
俺の話し方が急に変わったのに驚いたのか、生方さんが目を見開いて俺のことを見てきた。
ちょっと恥ずかしくなった俺は、実は過去にグレていたことがあって、頭にくることがあると口調が以前のようになってしまうことを説明した。
生方さんは何が面白かったのか、俺の話を聞くと「あはははは」と大きな声で笑い始めた。
『神楽くんのこと、年齢の割には大人っぽいなって思ってたんだけど、そんな一面も持ってたんだね。なんか可愛く思えてきちゃったよ』
俺はぶっちゃけ恥ずかしかったけど、生方さんがこんなにも笑ってくれていることが嬉しかった。
生方さんは本当に辛い思いをしてきたんだ。
いつか魂が消滅してしまうのかも知れないけど、それまでに仇の怪を倒してずっと笑顔でいさせてあげたいと俺は心の中で思うのであった。
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