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レベル4.女騎士と女奴隷と日常①
31.女騎士と女奴隷と運転免許(試験編)
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「さて、いよいよだな」
「うむ」
「です」
あの地獄のような教習から二週間。
俺達は無事教習所の卒業検定をパスし、免許取得の最後の試練を受けようとしていた。
免許における試験というのは技能と学科の二つがある。技能は教習所で受け、試験は専用の試験場で受験する。
それがこの場所、府中運転免許試験センター。
東京住まいの人間は大体ここを利用する。
最寄りのバス停から京王八王子駅へ。んでもって京王線で調布駅まで移動し、そこからバスで数十分したら到着だ。
「ここまで長かったな……」
「ああ、まったくだ」
「奴隷のクローラでもあれはもう二度と体験したくないですぅ」
今まで数々の苦労を思い起こしながら、俺らは試験場の門をくぐった。
普通だったら、「楽しいことも苦しいこともいっぱいあって、今は全部いい思い出です」みたいなことを言い合うのだろうが、俺達にはそんな笑って話すような記憶などこれっぽっちもありはしなかった。
それもこれも、だいたい原因はあの人である。
「あの女教官……とんだ食わせ物だったな」
「ホントですね。勝ったら免許くれるとか言ってたのに、結局嘘だったんですもの」
口を揃えて異世界転生コンビはぶーたれる。
俺達の技能教習を担当した変態女教師。
事あるごとに俺にセクハラしてきた、そりゃもうぶっちぎりでイカれた奴だった。
それにしびれを切らし、リファとクローラは彼女に決闘を申し込んだ。勝利の報酬として、無条件での免許交付を要求し、相手はこれを承諾。
その後、両者ともに卑怯とも言える戦法のぶつかり合いの末、リファ&クローラが辛くも白星をあげた。
しかし、たかだが教習所の一講師が免許をポンと発行できる権限などある訳がなく(当然といえば当然だが)、結局二人は普通のカリキュラムを今までどおり履修せざるを得なくなったわけである。
「まぁでも、あの先生もあれ以降はそこそこ真面目に教えてくれるようになったからよかったじゃん」
「いや、それが普通だと思うのだが……」
「隙あらばご主人様にちょっかい出そうとしてたのは相変わらずでしたし」
世の中にはね二人共、ああいうふうに俺らの「普通」の基準値を大幅に下げてくるのがいるんだよ。テストに出るからよく覚えときなさいね。
「それにしても、すごい人出ですね。教習所の時は私達だけだったのに」
クローラは周囲を見渡してそう言うと、肩に掛けたバッグの紐を握りしめる。
確かに平日の朝8時にしては結構な人の数だ。都内の試験場がここしかないというのもあるけど、試験は土日祝を除いて毎日やってるんだよな。なのにこれだけ大勢の受験者が集まるとは、正直予想外だったわ。
「あれだけ街中を車やバイクが走っているのだ。つまりそれだけ運転する者もいるということ。そう考えると、この試験場とやらが芋を洗うような混雑具合なのも頷ける」
「それもそうですね」
一理あるな。それに試験以外にも、免許の更新とか再発行とかもここでやるらしいし、何かと入り用がある人はいるってことなんだろう。
とにかく、泣いても笑ってもこれが最後だ。ここを突破すれば晴れて俺達は免許を手に入れることができる。最初はそんなに乗り気じゃなかったけど、ここまで来た以上は全力で臨むつもりだ。
○
受付で所定の手続きを済ませ、受験料を納めると案内に従って試験会場へ向かう。
建物の中はいくつかの大教室で構成されていて、なんとなく大学の構内に似てる。この感じ、入学試験を思い出すな。あの時ほどのプレッシャーはないにしても、緊張感は否めない。
「はい、新規で受ける方はこちらでーす!」
教室の入り口に立っている試験官らしき人が、大声で周辺で迷っている受験生達に呼びかけを行っている。
俺達も迷子寸前だったのでこれはありがたい。いそいそと三人でその一室に駆け込んだ。
「うわっ」
「おぉ!」
「あら……」
外も外なら中も中だ。驚くほどの大勢の人で溢れている。ほぼ満室で、空いてる席は殆どない。
パっと見100人以上はいる。すごいな、これ全部俺達と同じ新しく免許試験受ける人達なのか……。
「じゃあ前の方から詰めて座っていってください」
「あ、はい」
試験官の指示通りに、ざわざわと話し声を生み出す群衆をかき分けるようにして俺達は進んだ。
設置されているのは教習所の時と同じ、三人がけの長机と長椅子だった。
「ささ、マスターマスター。早くこちらへ!」
一番乗りで座った女騎士ことリファレンスは、自分の隣の部分をポンポン叩きながら煌めく目を向けてくる。本当に元気ハツラツだな。
座席について、試験が始まる前までのわずかな時間を利用して、可能な限り復習をしておく。
「うーんと……これが×で……この問題は○……と、よし、順調だ」
「……」
「……」
両隣の異世界人も熱心に暗記に励んでいる。正直二人がここまで音を上げずに来れたことは素直に感心している。普段からほぼニートのような生活してるから、二週間も勉強漬けの毎日なんてさぞ苦痛だろうなとも思ったんだが、驚くことに合宿の間一度も愚痴を漏らしたりはしなかった。まぁあの女教師には非難ガトリングフルバーストだったけど。
それほど免許をとってバイクに乗りたいという願望が強いということなのだろう。この分なら問題なく受かりそうだな。
そう物思いに耽っていると、隣のリファが不意に一人で呟いた。
「不思議だな。剣でしかモノを語らなかった私が、こんな学者のようなことをしてるなんて」
「そういうもんだよ。知識を身に着ければ着けるほど、自分のポテンシャルを高められる。それを最大限に活かして生き抜いていく世界なんだよ、ここは」
「全ては自分の頭次第ということか……それも悪くないな」
リファはそう言って少しはにかんだ。
俺も軽く笑みを返すと、反対側のクローラに目を向けた。
彼女は前かがみになって、一心不乱にゴソゴソと何かやっている。暗記カードでも見てるんだろうか。
「随分張り切ってんな、クローラ」
「油断は禁物ですからね」
と、女奴隷は顔を上げずに返事をした。
確かクローラはすでに教習所で貰った問題集の内容と回答を全て暗記してるんだっけ。それならそこまで心配しなくてもいいんじゃないかなぁ。
「恐れながら申しますが、どれだけ念を入れても入れすぎるということはないとクローラは思います」
「そう?」
「ご主人様。この試験、合格するためにはどれくらい問題に正解しなければならないかご存知ですか」
「え? えーっと、確か100点中90点以上、だっけ?」
「はい、一問2点のが合計で五十問。つまり、六問以上の間違いは許されない。冷静に考えてみるとこれは非常に狭き門と言えます」
言われてみればそうだな。
中学高校のテストの平均点なんて60いくかいかないかぐらいだもんな。大学は資料とか見ながらやるからそれより難易度は低いけど。
とはいえ、90がボーダーってのはさすがに高く設定しすぎだと誰もが思うことだろう。問題は二択だからといって、舐めてかかると痛い目を見そうだ。真剣にやらないと。
「どれだけ頭に詰め込んでも、人間はちょっとしたことで忘れてしまうもの。特にこういう土壇場ではよくあることです」
「せやな」
「なので、盤石の体制で挑まなければなりません。このように!」
そうクローラさんはドヤ顔を俺に向け、何かを見せてきた。
それは……。
持参した鉛筆や消しゴムに、細々した字でびっしりと書かれた問題とその答えの数々。
「……」
「どうですご主人様! 昨日夜も寝ないで一生懸命作ったのです! これさえあれば試験中に何か忘れてしまっても安心、すぐに思い出すことが出来ます」
うんキミ既に忘れてるから。常識を。
しかもカンペじゃなくて文房具に記載してるあたり手が込んでますねぇ。
「奴隷たるもの、勉学は僅かな時間を見つけて励まなければなりません。ワイヤードにいた頃も、お仕事中は本を広げてじっくり集中はできませんけど、こういうふうにモノに書き込んだりすれば、合間合間にでもできるんですよ。まさかこんなところで役に立つとは思ってませんでしたけど」
なんという熱心さ。忙しくても向上心は忘れない勉強家の鑑。
でも、この世の中には絶対に勉強しちゃいけない時間ってものがあるんですよ。試験中っていうんですけどね。
「あ、ご主人様もお使いになられますか? クローラ、こんなこともあろうかといっぱい用意してあるのです!」
うんそんな可愛らしい笑顔で共犯者にしてこようとするのやめてね。不正ダメ、絶対。
「はいそれでは試験を始めまーす! 席について下さーい」
すると、せかせかと教室内にさっきの試験官が、他の試験官を何人か引き連れて入ってきた。それぞれ大判の紙の束を抱えている。きっとあれが問題用紙だろう。
ざわついていた室内に静寂が訪れ、空気が張り詰めてくるのがわかる。
「えー。ではですね、ここは受験番号~番から~番までの方の会場となっております。お手持ちの受験票と見比べて合ってるかどうか確認してください。違う人がいたら別の会場に移動をお願いします……」
そこからしばらく試験についての説明を受ける。だがクローラもリファもまるで聞いちゃいない。一心不乱に最終準備に集中している。気持ちはわからんでもないが、大事なことなんだからちゃんと聞いときなさいよ……。
程なくして説明が終わり、問題用紙が配られ始める。
「ではこれから問題用紙お配りしますので、試験に必要のないものは全ておしまいください」
「よし、これで完璧ですっ!」
ふんす、と自信満々にクローラは言った。眼の前には細工が施された文具が、さながら路上商店でもやってるかのように並んでいる。まったくこいつは……。
こめかみを抑えて呆れ果てる俺だったが、あえて注意したりやめさせたりするようなことはしなかった。当然カンニングなんていけないことだし、バレたら即失格だ。彼女の保護者たる俺にはそれを止める義務がある。それにもかかわらず、である。
なぜなら。
「あー、言い忘れておりましたが」
試験官が一度は置いたマイクを取り直して付け加えた。
全てを覆す、重大事項を。
「今回、筆記用具はこちらでお配りする消しゴム付き鉛筆のみを使用していただきます。自分でご持参したものはカンニング防止の為一切使用できませんのでご注意ください」
「ファッ!?」
クローラちゃん、唖然呆然大仰天。
顎が外れんばかりに口をあんぐり開けて、愕然としている彼女を俺は鼻で笑う。
そう、運転免許の学科試験はこういう決まりなのである。大抵の「ペンケースから筆記具は全て出しておかなければならない」という制約をさらにランクアップさせたような感じ。
これが俺がクローラに何も言わなかった理由。涼しい顔で自分のバッグに彼女の特製カンペ付き筆記用具を入れていく。
「ってなわけだから。はーい、これは全部しまっちゃおうねぇ」
「そんな……クローラの……記憶が……知識がぁ……」
苦労が水の泡になって何もかもがリセットされたクローラは、口をパクパクさせながら生気が抜けたような顔になった。厳しいようだがこれが現実だ。
さて、そんなハプニングもそこそこに、いよいよ試験が始まろうとしていた。
問題用紙とマークシート式の解答用紙を手渡され、開始のチャイムを待つ。
「ふむ。これを塗りつぶしていけばいいのだな」
「そうそう。順番間違えとか回答ズレとか気をつけろよ」
あれれー? 最後の問題終わったところで解答欄一つ余っちゃったー、ってなった時の絶望感は誰しも経験したことがあるだろう。
とりわけ異世界人かつポンコツなこの二人が、そういう事態に陥る確率は高い。己の力不足で落ちるならまだしも、ケアレスミスで失敗したんじゃ悔やんでも悔やみきれないし。
「さぁ最終決戦だ。気を引き締めていくぞ」
「うむ、心得た」
「ここはどこ……私は、誰……」
約一名自分の素性すら忘却してしまった人がいるようだが大丈夫だ、問題ない。
♪キーンコーンカーンコーン……
「では始めてください!」
チャイムと試験官の合図と共に、俺達の免許取得の最後の砦を破る戦いが始まった。
まずはざっと問題を見渡して、解けそうなのから解いていく。それがいつものやり方だ。
問題集をかなりやりこんでいたおかげで、見知ったものばかりが出題されている。これなら心配なさそうだな。
それから特に詰まるような難問もなく、黙々と試験に取り組んでいたのだが……。
カラン……コロコロ……カラン……コロコロ……。
隣でなんかそんな音がした。リファの方だ。
反射的に視線をそっちに向けると、目に映った異様な光景に俺は思わず声が出そうになった。
「ん……ここは○、っと。次は……」
カラン……コロコロ……。
「よし、×だな。えー、次の問題が……」
カラン……コロコロ……。
「これも×……。うん、順調順調」
ナニコレ珍百景。鉛筆転がしで回答決めてる奴。
こいつぁひでぇや。今までの努力全否定した手法じゃねーか。何が順調なんだよバカなの? 死ぬの?
俺は彼女を肘で小突いて小さな声でツッコむ。
「何してんだオメー」
「ん? 何って、私の編み出した必勝法を実践してるだけだぞ」
ギャンブルが必勝法って、いつからここはラズベガスのカジノになったんだよ。
リファは口元をニヤけさせながら、鉛筆をくるくると指先で回す。
「この鉛筆という道具、上から見ると六角形になっていてな。表面に○と×の印を交互につけて、それを転がして上になった方を回答にしていってるのだよ」
「あのー……」
「わかってる、みなまで言うなマスター」
達観した表情で、女騎士はパチリとウィンク。
「確かにこれだけで全て済ますつもりはない。これは私の知識の曖昧な部分を補完するための処置だ」
「……は?」
「この六個ある面のうち、○か×が出る確率はそれぞれ五分。これで全問を解いていったら、点数は50点……ボーダーである90には届かない」
「……」
「そこで私は考えた。残りの50点は私自身の実力で解いていこうと!」
力説してガッツポーズを決めるリファさん。
「つまり私自身の力と、この鉛筆の力を合わせるということだ。わかるか? 90のボーダーが実質50になるのだぞ。それくらいなら、私でも余裕で取ることはできる。これで私の合格は確実……。これぞ私の必勝法……『ダブルフィフティ・クリティカル』……どうだ?」
ヘイヘイいつものラップターイム。
自慢されても俺はぶっちゃけミスティ。
試験でそんな馬鹿やるなんてギルティ。
マジでそれ言ってるのなら、お前の脳みそ常人の半分。
だめだ、誰一人としてまともにテストに取り組んじゃいねぇよ。これまで俺達が必死に勉強してきた時間はなんだったの? 努力って実は嘘つきだったの? それともこいつらに期待した俺がバカだったの?
苦痛に悶え、俺は頭を抱えて机に突っ伏す。
どれだけ苦労してても、どれだけ嫌な思いしてても、最終的に合格すれば多少は報われるかもと思ったのに、今ではそのビジョンすらも霞んできた。こんなの泣きっ面に蜂ってレベルじゃないぞ。
……いや、諦めるのはまだ早い。
こちとら二人のわがままにずっと耐えてきたんだ。それを無駄にしてたまるか。俺だけでも合格して免許取ってやる。
俺だって自信があるわけじゃないけど、少なくともこの異世界コンビのやり方よりはずっとまともに勉強してるんだから。
冷静になれ。落ち着け。ベストを尽くせば結果は出せる。
俺は目を閉じて深呼吸し、心を入れ替える。リフレッシュ完了。よし、やってやるぜ。
クローラはショックにより再起不能。リファはガバガバ必勝法頼み。
そんなカオスな状況の中、残された俺の孤独な戦いの火蓋が切って落とされたのである。
○
一時間後。
「終わったぁー!!」
廊下のベンチにもたれかかって、俺は周りの人が気にならない程度の声量で叫んだ。
「終わってしまったな。だが、やれるだけのことはやった」
「はい……。正直クローラはあまり自信がありませんが」
リファもクローラも脱力気味にそう言う。
この後すぐに採点が行われ、1時間後くらいに合格者発表が行われる。で、受かった人はその場で免許発行の手続きに移るわけだ。全て即日でやってくれるのはありがたい。
「なんというか、あっけなかったな。これまで長い時間訓練や勉学に励んできたのに……結果を出すための試験はこんな短時間で済ませられるなんて」
「ですね。それで私達のやってきたこと全てが判断されるのかと思うと、ちょっと複雑な気分になります」
まぁその理論には頷ける点はある。だけど、やってこなければ解答欄は埋まらないのもまた事実。本当に理解できているのか、それともただ丸暗記しただけかはさておき、試験のためにしてきたことは確実にそこに表れる。理不尽に思えるかもしれないけれど、これ以上なく合理的な力の試し方なんだよな、試験って。
「免許以外にも試験というのはあるのか、マスター」
「数え切れないほどあるさ。学校に入るため、資格をとるため……いわゆる『適格者の選別』を行わなきゃならないようなことは往々にしてある。そのためには試験っていう手段は一番単純でわかりやすいんだよ」
「単純、ですか?」
俺は静かに首肯すると、説明を続けた。
「ボーダーっていうわかりやすい指標に届くかどうかですべてが決まる。身分や地位関係なく、実力を証明できた者が受かる。そうだろ?」
「……それは、そうだな」
「つまりそれは、誰にとってもチャンスがあり、公平な条件で挑めるってことだ。まぁ面倒かもしれないけどさ、これ以上なく平等なものなんだよ」
「びょうどう、ですか。……確かにそうですね。ワイヤードだったら、何を目指そうと『奴隷だから』と突っぱねられてしまっていたでしょうし。そう考えると、『誰もがそれを目指せる』というのは非常に素晴らしいと思います」
「ああ。大きな可能性を秘めていながら、自分の力ではどうしようもない要素が弊害になって、それを活かせずに終わってしまうのはいたたまれないからな」
そう言うと、リファは立ち上がって大きく背伸びをした。
「何はともあれ、もう終わったものは仕方がない。あとは潔く結果を待とうではないか」
「そうですね」
「じゃあまだ結果発表まで時間あるし、下の売店でメシでも買うか」
○
そして結果発表の時間。
さっき試験を受けた教室に再度呼び戻され、そこで待機。
正面には巨大なモニタがあって、おそらくそこに合格者の番号が表示されるんだろう。
「うー、やっぱり緊張しますぅ!」
そわそわと人一倍焦っていたクローラが悲痛な声で言った。
だが緊張しているのは何も彼女だけに限った話ではない。リファもどことなく張り詰めた表情だし、俺だって内心ビクビクしている。
「大丈夫かクローラ?」
「はい。でも、もし落っこちたらどうしようってことしか考えられなくて……」
「……」
「ご主人様にわがままを言って合宿にまでお付き合いしていただいたのに、結果が出せなかったら、クローラはもう貴方様にお顔向けができないです……」
まぁ確かにここで落ちてくれたら俺もいい気分じゃないけど、本人にとっても大きなプレッシャーになってたとわかると、責める気にはなれないな。
俺はそっと彼女の頭に手を置いて、優しく撫でてやった。
「心配すんなよ。今回だけのチャンスじゃないんだから、ダメだったらまた次挑戦すればいいって」
「ご主人様……」
クローラは俺を上目遣いに見たが、すぐに顔を伏せてしまった。その目尻には少しばかり涙が浮かんでいたた。
「でも、それだとご主人様と一緒にバイクで走れなくなっちゃいます。クローラ、そのために頑張ってきたのに……」
「別に一緒に走らなくったっていいじゃん」
「え?」
いきなり言われた俺の言葉に女奴隷はキョトンとした。
「もしクローラが受からなかったら、俺のバイクに乗ればいいよ」
「ご主人様……の?」
「うん。バイクって、後ろの席にもう一人乗せられるんだよ。同乗者の方は別に免許持ってなくてもいいんだ」
「そうなのですか。でも、危なくないでしょうか? 油断したら振り落とされたりするかも」
「そうならないように、しっかり前の人に掴まるんだよ。こんなふうに」
と言って、スマホで「バイク 二人乗り」で画像検索し、その結果を彼女に見せてみる。
画面に次々と表示される、運転手の腰に手を回して、ギュッと抱きつくようにしている人の図。
興味深そうにそれを覗き込んだ瞬間、クローラの頬が僅かに赤くなった。
「こ、こんな密着して……」
「こうすれば安全だろ。これもこれで悪くないと思うぜ」
「……ご主人様に、私が……」
とろけそうな目で、その二人乗りの写真の数々を鑑賞している女奴隷さん。きっと俺と一緒に乗っている自分の姿を想像しているんだろう。可愛いなぁもう。
「免許、取れなくてもいいかも……私」
最終的にはそんなことまで言い出した。こらこら、最後まで諦めるんじゃありません。あくまでキミが落ちたらっていう可能性の話だからね?
「ごっほん! マスター!」
するとそこでわざとらしい咳払いが。振り返ると、リファがこっちをジト目で睨みつけてきていた。
「な、なんだよ」
「なんだよじゃない。二人乗りがどうとか言っているが、それはマスターが受からなければ成し遂げられないことなのだぞ? わかってるのか?」
鉛筆転がしやってたような奴に言われたくねぇんだよなぁ。
だが仰ることはごもっとも。運転手なくして二人乗りなし。結果はまだわからないのに、ちょっと早とちりしてしまったようだ。
「ま、まぁ。もしマスターが受からなかったら、このリファレンスのバイクに乗るといい」
「え、お前の?」
リファはちょっと照れくさそうに、もみあげをしきりにいじりながら頷いた。
「うむ! 私はマスターの騎士だ。貴公が行きたいところがあれば、私がどこにでも連れてってしんぜよう」
「へー、じゃあこんなふうに抱きつかせてくれるんだ?」
鼻を高くしながらそう豪語する女騎士に、意地悪く俺はスマホの画面を見せつけた。
リファがちらりとそれを目にした瞬間。
一気に彼女の顔が真っ赤に染まり、ぼんっ! と頭から小爆発が起こった。
「な、ななななななな……なんだこれはっ!?」
「だから二人乗りの図だよ。意外と大胆な申し出だなぁ。あんなプライド高いリファ様が自分からこういうことしていいよー、だなんて」
「ば、ばかばかばかっ! そんなの許すわけ無いだろう! わ、私が言ってるのは……そう! 手足に紐をくくりつけて引きずり回すとかそういうのだ!」
ただの処刑やん、おお怖い。
そんなふうにやいのやいのとはしゃいでいるのが聞こえたのか、周囲でクスクスと俺達を笑う声が。
くそ、いい見世物になっちまったよ恥ずかしい。
「随分と仲がいいわねお二人さん」
反省して静かになった俺達に、近くの席の四十~五十くらいのおばさんが話しかけてきた。
俺達三人が苦笑しながら軽くお辞儀を返すと、彼女は手をひらひら振った。
「やぁね、別にからかってるわけじゃないのよ。免許取って色々したいって話し合えて楽しそうだなーって思っただけだから」
「はぁ……」
楽しそう、か。傍から見たらそうなんだろうな。滑稽とも言えるかもだけど。
するとおずおずとリファが身を乗り出しておばさんに尋ねた。
「あの、そなたも免許を?」
「うん。私は普通の車のね。こんな年にもなってするようなことじゃないかもしれないけど、最近引っ越しをしたの。でも家が駅からすごく遠いのよ。そうなると息子や夫が通勤通学が大変になっちゃうじゃない? だからその送迎のためにね」
「なるほど……家族のために……か」
「オレっちも似たようなもんかなぁ!」
突然、俺達の前に座っていた人物がこちらを振り返ってきて言ってきた。髪を染めた、見るからにちゃらそうな兄ちゃんだ。
リファはたじろぎながら訊き返す。
「き、貴様は……?」
「いやさぁ、オレっちのカミさん、もうすぐ子供産まれんだよねぇ!」
「え、ええ?」
いきなりの報告に俺達は驚きと動揺を隠せない。
その反応を楽しむかのように、チャラ男はヘラヘラしながら言った。
「まぁこれでめでたくパパになるわけだし、これから何かと移動手段は必要になってくるわけじゃん? 幼稚園の送り迎えとか、買い物とか。今まではそこまで困らなかったけど、やっぱ取るなら今しかないかなぁって思うわけよ。産まれてから後じゃ何かと忙しくなるしさ!」
「お、おう……それはめでたいな」
結構まともな……いや、真面目な志望理由だったな。ちゃんと奥さんや産まれてくるお子さんのこと一心に考えてる。見た目はあれでも、いいパパになりそうだ。
「僕は正直車を運転する気はありませんね」
今度は斜め後ろに座っていた、みるからにガリ勉そうなメガネを掛けた青年が会話に割り込んできた。
なんだこの連鎖。うちら他人だよね? なんでみんな躊躇なくさも知り合いでしたー、みたいな雰囲気で話しかけてきてんの?
「あの、運転もしないのに、どうして免許を取ろうと思ったのです?」
「運転するにしろしないにしろ、取っておくに越したことはないからです」
青年はくいっとメガネを指で押し上げてクローラの疑問に答える。
「免許は運転ができる許可証ではありますが……それ以前に最もポピュラーな身分証明書でもあります。世の中、自分の身分が証明できるものがないと、様々な手続きが出来ないことがほとんどです」
「そ、そうなのです?」
「はい。学生証や社員証などでもできますが、それは特定の組織に属していなければ所持できない。なので、誰でも手にすることができる免許証は、やはり持っていて損はありません」
「運転するためでなく、そういう使い道もあるのですね……」
「ちなみに俺はな――」
「あたしはねぇ――」
「なぜワイが免許取りたいかっていうとな――」
その空気が伝染したのか、その教室内にいた人々が口々に自分が免許取得を目指す理由をペラペラと喋り始めた。それ一手に聞き届けるリファとクローラは、キャパがオーバーしそうになるもできるだけ理解しようとしていた。
「すごいな、マスター」
「え?」
「私は、ただ単純にバイクがカッコいいから乗ってみたいだけだった。だから他の奴らも、さしづめ速いからとか楽だからとかいう単純な理由ばかりだと思っていたよ」
リファは騒ぐ群衆を遠い目で見つめながら、独り言のように言った。
その後を引き継ぐように、クローラが続ける。
「でも違うのですね。家族のためだったり、仕事のためだったり。多種多様な目的があることがわかりました」
「そう。車やバイクは使い方次第では人を殺す危険なものだけれど、逆に考えれば使い方次第で人を助けたり、救ったりすることもできる」
消防車や救急車なんかその最もたる例だし。荷物を運んでくれるトラック。俺達が今頻繁に使っているバスだってそうだ。おかげで、俺達の日常は大いに助かってる。
でも、それは人の役も立つために運転の技術を使おうとしてくれる人がいるからこそなんだ。
「なんだか、ここでも勉強になりましたね」
「ああ、そうだな」
ただの移動手段じゃない。車やバイクを運転するということには、もっと大きな力と意味がある。それをリファとクローラは、彼らとの会話の中で何となく察したようだ。
――それではこれより、合格者発表を行います。
ワイワイガヤガヤとやっていると、不意にそんなアナウンスが鳴り響いた。
おっと、いよいよだな。
俺達は雑談を中断して席につくと、注意深く放送に耳を傾ける。
――これから正面のモニターに、合格した方の受験番号を表示します。番号があった方は、一階にて交付の手続きを行いますので、受験票を持ってお越しくださいませ。
ごくり、と三人揃って固唾を飲んだ。
さぁ、一体どうなっていることやら。
「ご主人様」
「マスター」
すると、両隣の異世界人が肩を寄せてきてそう言った。少しドキッとした俺が上ずった声で「何だよ」と返すと。
「「約束
忘れないでくださいね」
忘れるなよ」
誰が受かっても落ちても恨みっこなし。もし誰かが落ちたら、受かった人がそいつのバイクに乗せてあげること。
もちろん全員受かるに越したことはないけど、仲間外れは絶対に駄目。どこかに行くとしても、皆で一緒に。
だって俺達は、同居人なんだから。
「ああ、約束だ」
俺が力強く言うと、リファもクローラも満足そうに微笑んだ。
――それでは、結果を発表します。
そして画面が切り替わり、運命の時が訪れた。
リファ、クローラ、俺、そしてここにいる数々の受験者達。
受かったのは、免許を手にすることができる者は一体誰なのか。
その答えが単純明快に、その画面に映し出された。
「うむ」
「です」
あの地獄のような教習から二週間。
俺達は無事教習所の卒業検定をパスし、免許取得の最後の試練を受けようとしていた。
免許における試験というのは技能と学科の二つがある。技能は教習所で受け、試験は専用の試験場で受験する。
それがこの場所、府中運転免許試験センター。
東京住まいの人間は大体ここを利用する。
最寄りのバス停から京王八王子駅へ。んでもって京王線で調布駅まで移動し、そこからバスで数十分したら到着だ。
「ここまで長かったな……」
「ああ、まったくだ」
「奴隷のクローラでもあれはもう二度と体験したくないですぅ」
今まで数々の苦労を思い起こしながら、俺らは試験場の門をくぐった。
普通だったら、「楽しいことも苦しいこともいっぱいあって、今は全部いい思い出です」みたいなことを言い合うのだろうが、俺達にはそんな笑って話すような記憶などこれっぽっちもありはしなかった。
それもこれも、だいたい原因はあの人である。
「あの女教官……とんだ食わせ物だったな」
「ホントですね。勝ったら免許くれるとか言ってたのに、結局嘘だったんですもの」
口を揃えて異世界転生コンビはぶーたれる。
俺達の技能教習を担当した変態女教師。
事あるごとに俺にセクハラしてきた、そりゃもうぶっちぎりでイカれた奴だった。
それにしびれを切らし、リファとクローラは彼女に決闘を申し込んだ。勝利の報酬として、無条件での免許交付を要求し、相手はこれを承諾。
その後、両者ともに卑怯とも言える戦法のぶつかり合いの末、リファ&クローラが辛くも白星をあげた。
しかし、たかだが教習所の一講師が免許をポンと発行できる権限などある訳がなく(当然といえば当然だが)、結局二人は普通のカリキュラムを今までどおり履修せざるを得なくなったわけである。
「まぁでも、あの先生もあれ以降はそこそこ真面目に教えてくれるようになったからよかったじゃん」
「いや、それが普通だと思うのだが……」
「隙あらばご主人様にちょっかい出そうとしてたのは相変わらずでしたし」
世の中にはね二人共、ああいうふうに俺らの「普通」の基準値を大幅に下げてくるのがいるんだよ。テストに出るからよく覚えときなさいね。
「それにしても、すごい人出ですね。教習所の時は私達だけだったのに」
クローラは周囲を見渡してそう言うと、肩に掛けたバッグの紐を握りしめる。
確かに平日の朝8時にしては結構な人の数だ。都内の試験場がここしかないというのもあるけど、試験は土日祝を除いて毎日やってるんだよな。なのにこれだけ大勢の受験者が集まるとは、正直予想外だったわ。
「あれだけ街中を車やバイクが走っているのだ。つまりそれだけ運転する者もいるということ。そう考えると、この試験場とやらが芋を洗うような混雑具合なのも頷ける」
「それもそうですね」
一理あるな。それに試験以外にも、免許の更新とか再発行とかもここでやるらしいし、何かと入り用がある人はいるってことなんだろう。
とにかく、泣いても笑ってもこれが最後だ。ここを突破すれば晴れて俺達は免許を手に入れることができる。最初はそんなに乗り気じゃなかったけど、ここまで来た以上は全力で臨むつもりだ。
○
受付で所定の手続きを済ませ、受験料を納めると案内に従って試験会場へ向かう。
建物の中はいくつかの大教室で構成されていて、なんとなく大学の構内に似てる。この感じ、入学試験を思い出すな。あの時ほどのプレッシャーはないにしても、緊張感は否めない。
「はい、新規で受ける方はこちらでーす!」
教室の入り口に立っている試験官らしき人が、大声で周辺で迷っている受験生達に呼びかけを行っている。
俺達も迷子寸前だったのでこれはありがたい。いそいそと三人でその一室に駆け込んだ。
「うわっ」
「おぉ!」
「あら……」
外も外なら中も中だ。驚くほどの大勢の人で溢れている。ほぼ満室で、空いてる席は殆どない。
パっと見100人以上はいる。すごいな、これ全部俺達と同じ新しく免許試験受ける人達なのか……。
「じゃあ前の方から詰めて座っていってください」
「あ、はい」
試験官の指示通りに、ざわざわと話し声を生み出す群衆をかき分けるようにして俺達は進んだ。
設置されているのは教習所の時と同じ、三人がけの長机と長椅子だった。
「ささ、マスターマスター。早くこちらへ!」
一番乗りで座った女騎士ことリファレンスは、自分の隣の部分をポンポン叩きながら煌めく目を向けてくる。本当に元気ハツラツだな。
座席について、試験が始まる前までのわずかな時間を利用して、可能な限り復習をしておく。
「うーんと……これが×で……この問題は○……と、よし、順調だ」
「……」
「……」
両隣の異世界人も熱心に暗記に励んでいる。正直二人がここまで音を上げずに来れたことは素直に感心している。普段からほぼニートのような生活してるから、二週間も勉強漬けの毎日なんてさぞ苦痛だろうなとも思ったんだが、驚くことに合宿の間一度も愚痴を漏らしたりはしなかった。まぁあの女教師には非難ガトリングフルバーストだったけど。
それほど免許をとってバイクに乗りたいという願望が強いということなのだろう。この分なら問題なく受かりそうだな。
そう物思いに耽っていると、隣のリファが不意に一人で呟いた。
「不思議だな。剣でしかモノを語らなかった私が、こんな学者のようなことをしてるなんて」
「そういうもんだよ。知識を身に着ければ着けるほど、自分のポテンシャルを高められる。それを最大限に活かして生き抜いていく世界なんだよ、ここは」
「全ては自分の頭次第ということか……それも悪くないな」
リファはそう言って少しはにかんだ。
俺も軽く笑みを返すと、反対側のクローラに目を向けた。
彼女は前かがみになって、一心不乱にゴソゴソと何かやっている。暗記カードでも見てるんだろうか。
「随分張り切ってんな、クローラ」
「油断は禁物ですからね」
と、女奴隷は顔を上げずに返事をした。
確かクローラはすでに教習所で貰った問題集の内容と回答を全て暗記してるんだっけ。それならそこまで心配しなくてもいいんじゃないかなぁ。
「恐れながら申しますが、どれだけ念を入れても入れすぎるということはないとクローラは思います」
「そう?」
「ご主人様。この試験、合格するためにはどれくらい問題に正解しなければならないかご存知ですか」
「え? えーっと、確か100点中90点以上、だっけ?」
「はい、一問2点のが合計で五十問。つまり、六問以上の間違いは許されない。冷静に考えてみるとこれは非常に狭き門と言えます」
言われてみればそうだな。
中学高校のテストの平均点なんて60いくかいかないかぐらいだもんな。大学は資料とか見ながらやるからそれより難易度は低いけど。
とはいえ、90がボーダーってのはさすがに高く設定しすぎだと誰もが思うことだろう。問題は二択だからといって、舐めてかかると痛い目を見そうだ。真剣にやらないと。
「どれだけ頭に詰め込んでも、人間はちょっとしたことで忘れてしまうもの。特にこういう土壇場ではよくあることです」
「せやな」
「なので、盤石の体制で挑まなければなりません。このように!」
そうクローラさんはドヤ顔を俺に向け、何かを見せてきた。
それは……。
持参した鉛筆や消しゴムに、細々した字でびっしりと書かれた問題とその答えの数々。
「……」
「どうですご主人様! 昨日夜も寝ないで一生懸命作ったのです! これさえあれば試験中に何か忘れてしまっても安心、すぐに思い出すことが出来ます」
うんキミ既に忘れてるから。常識を。
しかもカンペじゃなくて文房具に記載してるあたり手が込んでますねぇ。
「奴隷たるもの、勉学は僅かな時間を見つけて励まなければなりません。ワイヤードにいた頃も、お仕事中は本を広げてじっくり集中はできませんけど、こういうふうにモノに書き込んだりすれば、合間合間にでもできるんですよ。まさかこんなところで役に立つとは思ってませんでしたけど」
なんという熱心さ。忙しくても向上心は忘れない勉強家の鑑。
でも、この世の中には絶対に勉強しちゃいけない時間ってものがあるんですよ。試験中っていうんですけどね。
「あ、ご主人様もお使いになられますか? クローラ、こんなこともあろうかといっぱい用意してあるのです!」
うんそんな可愛らしい笑顔で共犯者にしてこようとするのやめてね。不正ダメ、絶対。
「はいそれでは試験を始めまーす! 席について下さーい」
すると、せかせかと教室内にさっきの試験官が、他の試験官を何人か引き連れて入ってきた。それぞれ大判の紙の束を抱えている。きっとあれが問題用紙だろう。
ざわついていた室内に静寂が訪れ、空気が張り詰めてくるのがわかる。
「えー。ではですね、ここは受験番号~番から~番までの方の会場となっております。お手持ちの受験票と見比べて合ってるかどうか確認してください。違う人がいたら別の会場に移動をお願いします……」
そこからしばらく試験についての説明を受ける。だがクローラもリファもまるで聞いちゃいない。一心不乱に最終準備に集中している。気持ちはわからんでもないが、大事なことなんだからちゃんと聞いときなさいよ……。
程なくして説明が終わり、問題用紙が配られ始める。
「ではこれから問題用紙お配りしますので、試験に必要のないものは全ておしまいください」
「よし、これで完璧ですっ!」
ふんす、と自信満々にクローラは言った。眼の前には細工が施された文具が、さながら路上商店でもやってるかのように並んでいる。まったくこいつは……。
こめかみを抑えて呆れ果てる俺だったが、あえて注意したりやめさせたりするようなことはしなかった。当然カンニングなんていけないことだし、バレたら即失格だ。彼女の保護者たる俺にはそれを止める義務がある。それにもかかわらず、である。
なぜなら。
「あー、言い忘れておりましたが」
試験官が一度は置いたマイクを取り直して付け加えた。
全てを覆す、重大事項を。
「今回、筆記用具はこちらでお配りする消しゴム付き鉛筆のみを使用していただきます。自分でご持参したものはカンニング防止の為一切使用できませんのでご注意ください」
「ファッ!?」
クローラちゃん、唖然呆然大仰天。
顎が外れんばかりに口をあんぐり開けて、愕然としている彼女を俺は鼻で笑う。
そう、運転免許の学科試験はこういう決まりなのである。大抵の「ペンケースから筆記具は全て出しておかなければならない」という制約をさらにランクアップさせたような感じ。
これが俺がクローラに何も言わなかった理由。涼しい顔で自分のバッグに彼女の特製カンペ付き筆記用具を入れていく。
「ってなわけだから。はーい、これは全部しまっちゃおうねぇ」
「そんな……クローラの……記憶が……知識がぁ……」
苦労が水の泡になって何もかもがリセットされたクローラは、口をパクパクさせながら生気が抜けたような顔になった。厳しいようだがこれが現実だ。
さて、そんなハプニングもそこそこに、いよいよ試験が始まろうとしていた。
問題用紙とマークシート式の解答用紙を手渡され、開始のチャイムを待つ。
「ふむ。これを塗りつぶしていけばいいのだな」
「そうそう。順番間違えとか回答ズレとか気をつけろよ」
あれれー? 最後の問題終わったところで解答欄一つ余っちゃったー、ってなった時の絶望感は誰しも経験したことがあるだろう。
とりわけ異世界人かつポンコツなこの二人が、そういう事態に陥る確率は高い。己の力不足で落ちるならまだしも、ケアレスミスで失敗したんじゃ悔やんでも悔やみきれないし。
「さぁ最終決戦だ。気を引き締めていくぞ」
「うむ、心得た」
「ここはどこ……私は、誰……」
約一名自分の素性すら忘却してしまった人がいるようだが大丈夫だ、問題ない。
♪キーンコーンカーンコーン……
「では始めてください!」
チャイムと試験官の合図と共に、俺達の免許取得の最後の砦を破る戦いが始まった。
まずはざっと問題を見渡して、解けそうなのから解いていく。それがいつものやり方だ。
問題集をかなりやりこんでいたおかげで、見知ったものばかりが出題されている。これなら心配なさそうだな。
それから特に詰まるような難問もなく、黙々と試験に取り組んでいたのだが……。
カラン……コロコロ……カラン……コロコロ……。
隣でなんかそんな音がした。リファの方だ。
反射的に視線をそっちに向けると、目に映った異様な光景に俺は思わず声が出そうになった。
「ん……ここは○、っと。次は……」
カラン……コロコロ……。
「よし、×だな。えー、次の問題が……」
カラン……コロコロ……。
「これも×……。うん、順調順調」
ナニコレ珍百景。鉛筆転がしで回答決めてる奴。
こいつぁひでぇや。今までの努力全否定した手法じゃねーか。何が順調なんだよバカなの? 死ぬの?
俺は彼女を肘で小突いて小さな声でツッコむ。
「何してんだオメー」
「ん? 何って、私の編み出した必勝法を実践してるだけだぞ」
ギャンブルが必勝法って、いつからここはラズベガスのカジノになったんだよ。
リファは口元をニヤけさせながら、鉛筆をくるくると指先で回す。
「この鉛筆という道具、上から見ると六角形になっていてな。表面に○と×の印を交互につけて、それを転がして上になった方を回答にしていってるのだよ」
「あのー……」
「わかってる、みなまで言うなマスター」
達観した表情で、女騎士はパチリとウィンク。
「確かにこれだけで全て済ますつもりはない。これは私の知識の曖昧な部分を補完するための処置だ」
「……は?」
「この六個ある面のうち、○か×が出る確率はそれぞれ五分。これで全問を解いていったら、点数は50点……ボーダーである90には届かない」
「……」
「そこで私は考えた。残りの50点は私自身の実力で解いていこうと!」
力説してガッツポーズを決めるリファさん。
「つまり私自身の力と、この鉛筆の力を合わせるということだ。わかるか? 90のボーダーが実質50になるのだぞ。それくらいなら、私でも余裕で取ることはできる。これで私の合格は確実……。これぞ私の必勝法……『ダブルフィフティ・クリティカル』……どうだ?」
ヘイヘイいつものラップターイム。
自慢されても俺はぶっちゃけミスティ。
試験でそんな馬鹿やるなんてギルティ。
マジでそれ言ってるのなら、お前の脳みそ常人の半分。
だめだ、誰一人としてまともにテストに取り組んじゃいねぇよ。これまで俺達が必死に勉強してきた時間はなんだったの? 努力って実は嘘つきだったの? それともこいつらに期待した俺がバカだったの?
苦痛に悶え、俺は頭を抱えて机に突っ伏す。
どれだけ苦労してても、どれだけ嫌な思いしてても、最終的に合格すれば多少は報われるかもと思ったのに、今ではそのビジョンすらも霞んできた。こんなの泣きっ面に蜂ってレベルじゃないぞ。
……いや、諦めるのはまだ早い。
こちとら二人のわがままにずっと耐えてきたんだ。それを無駄にしてたまるか。俺だけでも合格して免許取ってやる。
俺だって自信があるわけじゃないけど、少なくともこの異世界コンビのやり方よりはずっとまともに勉強してるんだから。
冷静になれ。落ち着け。ベストを尽くせば結果は出せる。
俺は目を閉じて深呼吸し、心を入れ替える。リフレッシュ完了。よし、やってやるぜ。
クローラはショックにより再起不能。リファはガバガバ必勝法頼み。
そんなカオスな状況の中、残された俺の孤独な戦いの火蓋が切って落とされたのである。
○
一時間後。
「終わったぁー!!」
廊下のベンチにもたれかかって、俺は周りの人が気にならない程度の声量で叫んだ。
「終わってしまったな。だが、やれるだけのことはやった」
「はい……。正直クローラはあまり自信がありませんが」
リファもクローラも脱力気味にそう言う。
この後すぐに採点が行われ、1時間後くらいに合格者発表が行われる。で、受かった人はその場で免許発行の手続きに移るわけだ。全て即日でやってくれるのはありがたい。
「なんというか、あっけなかったな。これまで長い時間訓練や勉学に励んできたのに……結果を出すための試験はこんな短時間で済ませられるなんて」
「ですね。それで私達のやってきたこと全てが判断されるのかと思うと、ちょっと複雑な気分になります」
まぁその理論には頷ける点はある。だけど、やってこなければ解答欄は埋まらないのもまた事実。本当に理解できているのか、それともただ丸暗記しただけかはさておき、試験のためにしてきたことは確実にそこに表れる。理不尽に思えるかもしれないけれど、これ以上なく合理的な力の試し方なんだよな、試験って。
「免許以外にも試験というのはあるのか、マスター」
「数え切れないほどあるさ。学校に入るため、資格をとるため……いわゆる『適格者の選別』を行わなきゃならないようなことは往々にしてある。そのためには試験っていう手段は一番単純でわかりやすいんだよ」
「単純、ですか?」
俺は静かに首肯すると、説明を続けた。
「ボーダーっていうわかりやすい指標に届くかどうかですべてが決まる。身分や地位関係なく、実力を証明できた者が受かる。そうだろ?」
「……それは、そうだな」
「つまりそれは、誰にとってもチャンスがあり、公平な条件で挑めるってことだ。まぁ面倒かもしれないけどさ、これ以上なく平等なものなんだよ」
「びょうどう、ですか。……確かにそうですね。ワイヤードだったら、何を目指そうと『奴隷だから』と突っぱねられてしまっていたでしょうし。そう考えると、『誰もがそれを目指せる』というのは非常に素晴らしいと思います」
「ああ。大きな可能性を秘めていながら、自分の力ではどうしようもない要素が弊害になって、それを活かせずに終わってしまうのはいたたまれないからな」
そう言うと、リファは立ち上がって大きく背伸びをした。
「何はともあれ、もう終わったものは仕方がない。あとは潔く結果を待とうではないか」
「そうですね」
「じゃあまだ結果発表まで時間あるし、下の売店でメシでも買うか」
○
そして結果発表の時間。
さっき試験を受けた教室に再度呼び戻され、そこで待機。
正面には巨大なモニタがあって、おそらくそこに合格者の番号が表示されるんだろう。
「うー、やっぱり緊張しますぅ!」
そわそわと人一倍焦っていたクローラが悲痛な声で言った。
だが緊張しているのは何も彼女だけに限った話ではない。リファもどことなく張り詰めた表情だし、俺だって内心ビクビクしている。
「大丈夫かクローラ?」
「はい。でも、もし落っこちたらどうしようってことしか考えられなくて……」
「……」
「ご主人様にわがままを言って合宿にまでお付き合いしていただいたのに、結果が出せなかったら、クローラはもう貴方様にお顔向けができないです……」
まぁ確かにここで落ちてくれたら俺もいい気分じゃないけど、本人にとっても大きなプレッシャーになってたとわかると、責める気にはなれないな。
俺はそっと彼女の頭に手を置いて、優しく撫でてやった。
「心配すんなよ。今回だけのチャンスじゃないんだから、ダメだったらまた次挑戦すればいいって」
「ご主人様……」
クローラは俺を上目遣いに見たが、すぐに顔を伏せてしまった。その目尻には少しばかり涙が浮かんでいたた。
「でも、それだとご主人様と一緒にバイクで走れなくなっちゃいます。クローラ、そのために頑張ってきたのに……」
「別に一緒に走らなくったっていいじゃん」
「え?」
いきなり言われた俺の言葉に女奴隷はキョトンとした。
「もしクローラが受からなかったら、俺のバイクに乗ればいいよ」
「ご主人様……の?」
「うん。バイクって、後ろの席にもう一人乗せられるんだよ。同乗者の方は別に免許持ってなくてもいいんだ」
「そうなのですか。でも、危なくないでしょうか? 油断したら振り落とされたりするかも」
「そうならないように、しっかり前の人に掴まるんだよ。こんなふうに」
と言って、スマホで「バイク 二人乗り」で画像検索し、その結果を彼女に見せてみる。
画面に次々と表示される、運転手の腰に手を回して、ギュッと抱きつくようにしている人の図。
興味深そうにそれを覗き込んだ瞬間、クローラの頬が僅かに赤くなった。
「こ、こんな密着して……」
「こうすれば安全だろ。これもこれで悪くないと思うぜ」
「……ご主人様に、私が……」
とろけそうな目で、その二人乗りの写真の数々を鑑賞している女奴隷さん。きっと俺と一緒に乗っている自分の姿を想像しているんだろう。可愛いなぁもう。
「免許、取れなくてもいいかも……私」
最終的にはそんなことまで言い出した。こらこら、最後まで諦めるんじゃありません。あくまでキミが落ちたらっていう可能性の話だからね?
「ごっほん! マスター!」
するとそこでわざとらしい咳払いが。振り返ると、リファがこっちをジト目で睨みつけてきていた。
「な、なんだよ」
「なんだよじゃない。二人乗りがどうとか言っているが、それはマスターが受からなければ成し遂げられないことなのだぞ? わかってるのか?」
鉛筆転がしやってたような奴に言われたくねぇんだよなぁ。
だが仰ることはごもっとも。運転手なくして二人乗りなし。結果はまだわからないのに、ちょっと早とちりしてしまったようだ。
「ま、まぁ。もしマスターが受からなかったら、このリファレンスのバイクに乗るといい」
「え、お前の?」
リファはちょっと照れくさそうに、もみあげをしきりにいじりながら頷いた。
「うむ! 私はマスターの騎士だ。貴公が行きたいところがあれば、私がどこにでも連れてってしんぜよう」
「へー、じゃあこんなふうに抱きつかせてくれるんだ?」
鼻を高くしながらそう豪語する女騎士に、意地悪く俺はスマホの画面を見せつけた。
リファがちらりとそれを目にした瞬間。
一気に彼女の顔が真っ赤に染まり、ぼんっ! と頭から小爆発が起こった。
「な、ななななななな……なんだこれはっ!?」
「だから二人乗りの図だよ。意外と大胆な申し出だなぁ。あんなプライド高いリファ様が自分からこういうことしていいよー、だなんて」
「ば、ばかばかばかっ! そんなの許すわけ無いだろう! わ、私が言ってるのは……そう! 手足に紐をくくりつけて引きずり回すとかそういうのだ!」
ただの処刑やん、おお怖い。
そんなふうにやいのやいのとはしゃいでいるのが聞こえたのか、周囲でクスクスと俺達を笑う声が。
くそ、いい見世物になっちまったよ恥ずかしい。
「随分と仲がいいわねお二人さん」
反省して静かになった俺達に、近くの席の四十~五十くらいのおばさんが話しかけてきた。
俺達三人が苦笑しながら軽くお辞儀を返すと、彼女は手をひらひら振った。
「やぁね、別にからかってるわけじゃないのよ。免許取って色々したいって話し合えて楽しそうだなーって思っただけだから」
「はぁ……」
楽しそう、か。傍から見たらそうなんだろうな。滑稽とも言えるかもだけど。
するとおずおずとリファが身を乗り出しておばさんに尋ねた。
「あの、そなたも免許を?」
「うん。私は普通の車のね。こんな年にもなってするようなことじゃないかもしれないけど、最近引っ越しをしたの。でも家が駅からすごく遠いのよ。そうなると息子や夫が通勤通学が大変になっちゃうじゃない? だからその送迎のためにね」
「なるほど……家族のために……か」
「オレっちも似たようなもんかなぁ!」
突然、俺達の前に座っていた人物がこちらを振り返ってきて言ってきた。髪を染めた、見るからにちゃらそうな兄ちゃんだ。
リファはたじろぎながら訊き返す。
「き、貴様は……?」
「いやさぁ、オレっちのカミさん、もうすぐ子供産まれんだよねぇ!」
「え、ええ?」
いきなりの報告に俺達は驚きと動揺を隠せない。
その反応を楽しむかのように、チャラ男はヘラヘラしながら言った。
「まぁこれでめでたくパパになるわけだし、これから何かと移動手段は必要になってくるわけじゃん? 幼稚園の送り迎えとか、買い物とか。今まではそこまで困らなかったけど、やっぱ取るなら今しかないかなぁって思うわけよ。産まれてから後じゃ何かと忙しくなるしさ!」
「お、おう……それはめでたいな」
結構まともな……いや、真面目な志望理由だったな。ちゃんと奥さんや産まれてくるお子さんのこと一心に考えてる。見た目はあれでも、いいパパになりそうだ。
「僕は正直車を運転する気はありませんね」
今度は斜め後ろに座っていた、みるからにガリ勉そうなメガネを掛けた青年が会話に割り込んできた。
なんだこの連鎖。うちら他人だよね? なんでみんな躊躇なくさも知り合いでしたー、みたいな雰囲気で話しかけてきてんの?
「あの、運転もしないのに、どうして免許を取ろうと思ったのです?」
「運転するにしろしないにしろ、取っておくに越したことはないからです」
青年はくいっとメガネを指で押し上げてクローラの疑問に答える。
「免許は運転ができる許可証ではありますが……それ以前に最もポピュラーな身分証明書でもあります。世の中、自分の身分が証明できるものがないと、様々な手続きが出来ないことがほとんどです」
「そ、そうなのです?」
「はい。学生証や社員証などでもできますが、それは特定の組織に属していなければ所持できない。なので、誰でも手にすることができる免許証は、やはり持っていて損はありません」
「運転するためでなく、そういう使い道もあるのですね……」
「ちなみに俺はな――」
「あたしはねぇ――」
「なぜワイが免許取りたいかっていうとな――」
その空気が伝染したのか、その教室内にいた人々が口々に自分が免許取得を目指す理由をペラペラと喋り始めた。それ一手に聞き届けるリファとクローラは、キャパがオーバーしそうになるもできるだけ理解しようとしていた。
「すごいな、マスター」
「え?」
「私は、ただ単純にバイクがカッコいいから乗ってみたいだけだった。だから他の奴らも、さしづめ速いからとか楽だからとかいう単純な理由ばかりだと思っていたよ」
リファは騒ぐ群衆を遠い目で見つめながら、独り言のように言った。
その後を引き継ぐように、クローラが続ける。
「でも違うのですね。家族のためだったり、仕事のためだったり。多種多様な目的があることがわかりました」
「そう。車やバイクは使い方次第では人を殺す危険なものだけれど、逆に考えれば使い方次第で人を助けたり、救ったりすることもできる」
消防車や救急車なんかその最もたる例だし。荷物を運んでくれるトラック。俺達が今頻繁に使っているバスだってそうだ。おかげで、俺達の日常は大いに助かってる。
でも、それは人の役も立つために運転の技術を使おうとしてくれる人がいるからこそなんだ。
「なんだか、ここでも勉強になりましたね」
「ああ、そうだな」
ただの移動手段じゃない。車やバイクを運転するということには、もっと大きな力と意味がある。それをリファとクローラは、彼らとの会話の中で何となく察したようだ。
――それではこれより、合格者発表を行います。
ワイワイガヤガヤとやっていると、不意にそんなアナウンスが鳴り響いた。
おっと、いよいよだな。
俺達は雑談を中断して席につくと、注意深く放送に耳を傾ける。
――これから正面のモニターに、合格した方の受験番号を表示します。番号があった方は、一階にて交付の手続きを行いますので、受験票を持ってお越しくださいませ。
ごくり、と三人揃って固唾を飲んだ。
さぁ、一体どうなっていることやら。
「ご主人様」
「マスター」
すると、両隣の異世界人が肩を寄せてきてそう言った。少しドキッとした俺が上ずった声で「何だよ」と返すと。
「「約束
忘れないでくださいね」
忘れるなよ」
誰が受かっても落ちても恨みっこなし。もし誰かが落ちたら、受かった人がそいつのバイクに乗せてあげること。
もちろん全員受かるに越したことはないけど、仲間外れは絶対に駄目。どこかに行くとしても、皆で一緒に。
だって俺達は、同居人なんだから。
「ああ、約束だ」
俺が力強く言うと、リファもクローラも満足そうに微笑んだ。
――それでは、結果を発表します。
そして画面が切り替わり、運命の時が訪れた。
リファ、クローラ、俺、そしてここにいる数々の受験者達。
受かったのは、免許を手にすることができる者は一体誰なのか。
その答えが単純明快に、その画面に映し出された。
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