女子高校生は不良(バカ)が悶絶するまで肝臓を殴るのをやめない

未定

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やばい高校に入学しちゃった……

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 この学校には二種類の生徒しかいない。
 不良バカ不良バカ以外だ。
 あたしの名前は『小桜 さや』、堰聖せきせい学園高等学校に通う、高校一年生。
 ごくごく普通の女子の筈なんだけど。
 今は、不良バカとの戦いに真っ最中っ!
 え? 普通じゃないって? しょうがないじゃない挑んでくるものはっ!
 四角いリングの上で、あたしは今、不良バカと拳闘を繰り広げている。
 両の拳のみを使った殴り合い。
 あたしは、相手のパンチをかわすと同時に左脇腹、つまり肝臓を打つっ!

「肝臓パンチっ!」

「うぐぅっ!」

 相手は、腹を抑えて蹲った。
 あたしの勝ちいぃっ!
 勝利のゴングが鳴り、あたしは自分のコーナーへ戻る。
 
「お疲れ様」

「さやちゃん、さっすが~っ!」

 部活仲間で同級生の二人の親友が声をかけてくる。
 少し大人びた長身の美人さんが白原しろはら 椿つばきちゃんで
 少し子供っぽくて背の低い可愛い子ちゃんが、秋草あきくさ 牡丹ぼたんちゃんだ。

「しっかし……いつまで、こんなことが続くのかな……」

◇―――――

 堰聖学園、そこは一言でいえば、不良バカの巣窟なんだよね。悲しいことに……
 スポーツや武道にはワルを更生させる力があるという理念の元、この学校はスポーツ、特に格闘技に力を入れている。
 ボクシング、レスリング、柔道、空手、剣道は当たり前、総合格闘技部とか立ち技最強部とかまである。
 そして、世界で活躍するアスリート達を何人も輩出した。しかし、偏差値は低く、その結果、世の中をお勘違いした不良バカの集う学校へと変貌したようだ。
 理念とか最初は立派だけど、どうしても形骸化するんだよね。人が運営する以上腐敗するというか……
 一方、女子にはあまり不良バカがいない、全くいないわけじゃないけど。
 あたしも含めてなんだけど、この学校ってさ、男は地味で古臭い黒学ランの癖に、女子の制服のデザインがとにかく可愛いんだよね。
 全国トップではなかろうか? と疑いたくなるくらい、女子の制服のデザインには力を入れていたりする。
 そうなると、不良バカではないし、決して成績の低くない子であっても勘違いしちゃった子は入学してしまう。そりゃ、誰だって可愛い制服を着たいじゃん。
 かくいう、あたしもこの学校のパンフレットを見た時、『あ~この学校の制服かわいいっ♪』と狂喜乱舞したもんだった。
 んでさ……これがこの学校の戦略っていうか、もはやカルト教団の手法じゃんと言いたくなるんだけど、可愛い制服を着た女子ってのが、これまた不良バカを惹きつける要素になっていてさ。
 ますます、不良バカが集まってくんのよ、そんなに不良バカを集めて一体何がしたいんですか? って話なんだけど。
 格闘技に力を入れているのもあって、中学時代、喧嘩最強を誇っていた奴らの憧れの学校となっていて。
 そんな奴らが『路上の伝説』や『反逆のカリスマ』を気取って、北斗の拳の『ケンシロウ』みたいな顔して入学してくるんだけど、自分達が『モヒカン』側の人間だということには気づいていない。
 まあ、不良バカだからしょうがないんだけど……どうも勝ちぬいた『修羅』には『美女』が与えられるみたいなお勘違いしてるんだよね。
 強い男はモテると思って入る奴もいるみたいだけど……世の中そんなに甘くないよ?
 さらにさ、なんていうか『美容部』みたいな女子専用の部活があって、高校生なのにメイクとかお洒落の仕方とか上品な立ち振る舞いを教えている。
 んで、レースクイーンとかラウンドガールみたいな事をやれるわけ。この学校の体育際や文化際に限った話だけど。
 中学時代、さえなかった女子がこの学校に入学すると、制服の可愛さも相まって、アイドルみたいに変貌することは珍しくない。
 ちょっとメイクを工夫するだけで、見違える子って沢山いるからね。
 そして、女子生徒のメイクや髪染めは完全に禁止されてはいない、ピアスは禁止だけど、穴を開けない耳飾りをつける事はアリだったりする。
 派手なのは駄目だけどね。
 派手さの明確な基準は無い、審査員みたいな先生の判断に委ねられる。
 この辺が抽象的というか、その子を見て、綺麗とか可愛いとか客観的に思われるんだったらアリで『うわっ!』って思われちゃうようなファッションは駄目って事。
 色気づいているように思われたり、素行が悪そうに思われるのは認められないって感じがする。あたしの主観だけど……
 だから、うちの学校の女子生徒だけを見れば『何処のお嬢様学校の人達ですか?』と勘違いする人は少なくないだろう。
 男子生徒だけを見れば『頭の悪そうな学校だな、関わったら絶対にいけない』ってなること請け合いだけど。
 ちなみに男はピアス、髪染め、刺青ははっきりと禁止されている。無視してやっている奴がいくらでもいるんだけどね……
 要はね、男のいかにも不良バカみたいな行いにはゆるい癖に、女子の行いには結構厳しいんだよね。わかりやすいけど……
 女子がガッツリ金髪とかピンクに染めたり、鼻にピアスを入れようものなら速攻で呼び出しくらうし……染めてもいいけど、清楚さが失われるのはダメみたいな価値観……
 まあ、この学校からすれば、女子は不良バカ寄せパンダアイドルなんだろうね。
 ただ、この学校から、アイドルとかになる子が多いのも事実であって、タレントになりたくて入学してくる女子も多かったりする。
 『演劇』を始め『ダンス』『歌唱』の部活にも力を入れており、男子の演劇部員は空気みたいな扱いだけど、女子の演劇部員には厳しく愛のある指導をしている。露骨すぎるでしょっ!
 この学校に対して『女性蔑視だ~っ!』て声は当然あるんだけど、学校側からすれば『蔑視されているのは男性も同じっ!』って一番ダメな奴を地で行っている。
 女子は芸能界、男子はアスリートを目指せって感じ。
 だから、有名になった卒業生は多いし、その卒業生みたいになりたくて勘違いして入ってくる入学生バカも多い。ああそうですよ、あたしもそのバカの一人ですよ。
 んで、ようやっと本題に入るけど、あたしがこの学校に入った動機ってさ、強いボクシング部に入る事だったんだよね、目指せ世界チャンピオンって感じで。
 いや、可愛い制服に釣られたのもあるよ勿論……まあ、もっと大きな理由もあるけどね、それはまた今度。
 んで、先程までの説明で想像つくと思うけど、女子が格闘技の部活に入る事を良しとしない先生も多いんだよね。
 全員とは言わないけど、この学校の卒業生が先生になっているパターンも多くて、そういう男性教員って『俺はワルの気持ちがわかる男』を気取る。
 『単に不良バカを卒業できてないだけでしょっ!』と言ってはいけない。
 バカは死ななきゃ治らないとはいわないけど、不良バカを卒業できないバカはいる。
 だから、先生に最初入部を断られたんだよね。
 『女子は認めない。現在女子部員は一人もいない』ってさ……
 いやでも、パンフレットには女子部があるって書いてあるからっ!
 女子が入れないってソレ詐欺じゃん。女子部はありませんって露骨にやっちゃうと差別扱いされるご時世だからね、形だけの表記だったんだろうけど……
 でも、こういう不良バカ上がりの先生ってさとしようがないから、体でわからせるしかないんだよね。
 実力を示すというか、性根が 不良バカと同じだから挑発に乗りやすいしさ、 スパーリング実戦練習を要求して、ボコったわけね。
 ここぞとばかりに肝臓を殴りまくってやったぜっ! あたしのボディ腹部攻撃は地獄の苦しみ……
 先生ボコるだけで、よかったんだけど、その過程で部長をボコったのが不味かった。実に不味かった。
 この学校、校則も極端で、色々とおかしいというかツッコミどころが沢山あるんだけど。
 中学でイキっていた不良バカの集まる学校だけあって、『番長ルール』って裏の校則みたいなものまで存在している。
 この学校で、一番強い奴には『番長』の称号が与えらるのだ。いや、このご時世に『番長』って……
 正式に授与されるのは修了式の時で、それまでは暫定番長扱い、その座を守り切れるか? みたいな感じなんだよね。
 別に卒業式まで『番長』の座を守りぬいたところで、就職の役に立つわけもなし……普通に考えて、履歴書に書けないでしょ? んなもん。
 まあでも、不良バカに言わせれば、これは立派な我が校の『文化』らしい。そして教員卒業生にまでこの『文化』を誇る奴がいるのが困りもの。
 そして、厄介な事に現暫定番長が、ボクシング部の部長だったわけ。
 あたしが、ボコってしまったばかりに、あたしはこの学校の暫定番長になってしまった。いや迷惑なんだけど……
 いや、勿論、最初は拒否ったよ。でも、部長があたしを暫定番長として認めてしまった。
 ボクシング部の部長が、ボクシングのルールで負けたわけだから、俺はもう、暫定番長ではいられないと……いや知らないよそんなこと言われてもっ!
 部長も不良バカの一種というか、バカだから、話が通じないし……
 不良バカってさ、自分達の浪漫が何よりも優先されると普通に思っているんだよね。
 この番長ルールなんだけど、返上というルールはないらしい。
 ただ、いきなり喧嘩を吹っかけられる事はない。最初は『喧嘩最強を決めるっ!』みたいな感じだったらしいけど、喧嘩って基本ルールないじゃん。
 先手必勝というか、不意をつくのが前提で、いかに初撃で大きい痛みを与えるかが問われるみたいな。
 胸倉掴まれれば、頭突きで鼻を砕くとか。後ろから羽交い締めにされれば相手の足の親指を踏み潰すとか。
 髪の毛掴んだりとかさ、とにかくエグくて痛い攻撃が当たり前で、そこを突き詰めていくと、結局、階段から突き落とせばいいじゃんって話になって、喧嘩で番長を決めるのは止そうとなったらしい。
 いや、番長自体なくそうよっ!
 だから、暫定番長は、座を賭けた『決闘』のルールを指定できる権限を持つ。だから部長は、ボクシングをルールにしていたわけね。
 勿論それだと、番長が有利すぎるから、挑戦者は番長にハンデを交渉できる。
 応じるかは番長次第だけど、妥当なハンデを断り続ければ、カリスマを失うので、断り続けるのは得策ではないらしい。
 部長の前の番長は柔道部の部長だったから、部長はハンデに拳による打撃を要求した。それで良いのを当てて勝てたわけ。
 ちなみに、女子が暫定とはいえ『番長』になるのは前代未聞らしい。
 『女子は清楚お嬢様』『男子は不良バカ』が文化のこの学校では、決して許さる事はではないんだとか。
 女性が土俵にあがるようなモンなんだと……知るかボケェっ! 迷惑してんのはこっちだよっ! 
 ようやっと、最初に戻るけど、先程の戦いは、あたしに挑んできた挑戦者だったってこと。
 わざと負けりゃあいいじゃんという声もあるが、あたしは階級が上だろうと男だろうと気持としてはボクシングで誰にも負けたくない……
 なので、ハンデは一切認めないけど、ボクシングのルールを守る限りは挑戦に応じている。
 あたしはこんなのボクシングと呼びたくないので『拳闘』って言っているけどね。
 まあ、でもこんな最悪の学校に入学して後悔しない日はないわけだけど、良い事もあったよ。
 それは、女子部員が二人もいるからさ、さっきの椿ちゃんと牡丹ちゃんね。
 基本的に打撃のある格闘技系の部活に入る女子っていないらしくて、今年はあたしにとっては豊作だったわけ。
 嘆いていもしょうがないし、頑張っていこうと思います。よろしくね♪
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