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第13話
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「このポーションを作った人が、運命の番で間違いないんです」
それまで騒然としていた話し合いの場は、アルベルトの突発的な発言で静まり返り、カロエルらは驚きを隠せず、まさにその瞬間に立ち会ったことをとても喜ぶ。
「えぇ!!??わぁぁ~そんな事ってあるんですねぇ~」
「……まさか本当に……おめでとう、でいいのか?」
「アルベルト、顔を緩めるか険しくするかどっちかにしなよ」
ナハトが初めて発言し喜びを分かち合っている一方で、一人だけ怪訝な顔つきの男がいた。
アルベルト・ディートフリーの友人としてもちろん一番喜んでいるのが彼だという事は事実であり、彼をけしかけたのもギークだったが、皇帝ギーク・ヴァロエ・フレッツはこの事実を今になって重く受け止める。
「アルベルト、お前はその子をどうするつもりだ?」
「公爵家で引き取ります。もちろん、公爵夫人の立場として」
それは、運命の番という概念を持つ獣人からするとごく普通の考え方だったが、アルベルトの運命の番である者の素性が知れない限りは許容し難い事だった。
「安易に動くべきではない」
「なぜですか。」
「お前の言いたい事は分かるし、運命の番がどれほど重要なことかは分かっている。だがな、あまりにも身分が違いすぎる。それに、精霊の加護持ちときたら皇宮の保護対象になる」
「歴代の精霊の愛し子の中にも平民はいました。皇帝でなくても筆頭貴族と結婚したという事実は健在です」
「長年現れなかった加護持ちを元老会の奴らが黙っておくとでも?」
「そんなの、我々でどうにかすればいいでしょう」
「それが出来ないから言ってんだ」
元老会とは、由緒正しい歴史を持つ貴族の中でも、皇帝により近い立場での職を主とし、別名貴族派とも呼ばれる人達の総称を指す。先祖代々その力を奮ってきた貴族でもあり、国政の一部は彼らに託されている。それを決定したのは、第四代皇帝であり神の名の下に誓約を行ったため、それを簡単に覆す事はできない。
皇帝を支持する皇帝派と、皇帝の座を狙おうとする貴族派は長年戦いの火種になっており、歴史を重視するルーヴァニア帝国では無碍にできない存在である。
「では、ぶっ潰しましょう元老会を」
「はぁ?!」
「そもそも皇帝派の貴族だけで国政は成り立ちます。現に、彼らが担当しているのはビュートー海の貿易のみで、そこら一帯は今やディラック伯爵家の領地です。脱税に私有地への不法侵入、恐喝・暴行、その他にも公にされては困る事はたくさんあるでしょう」
「………なんだそれは」
ディートフリー公爵家の執事長クラウスがアルベルトに手渡したのは、何枚にも束ねられた紙。
窓から差し込む太陽の光にあたり光沢するその紙は、銀色に光り輝きどう見てもただの紙ではなかった。
「請願書です」
「………一応聞くが、何のだ?」
「ゲオドール・アクセット侯爵からのです」
分厚い束をアルベルトから受け取ったギークは、その他の人とその内容を確認する。
「『序列の見直しと制限の規定について』?」
「『この度アクセット侯爵家の名において、その臣家となる貴族並びに統治地域はディートフリー公爵家の采配に委ね、牢として皇帝陛下の厳正なる判断に一任致します』」
「「はぁっ?!!」」
「………うるさいです」
「いや、お前これ……“ぶっ潰しましょう“じゃなくて“ぶっ潰しました“じゃねぇか」
元老会ゲオドール・アクセット侯爵家は貴族派の代表貴族であり、一部の貴族の手綱を握り、その裏を支配するいわば皇帝対抗派の支配者だった。皇帝ギークが即位してから皇后陛下が誕生するまでの約二年の間、どの貴族よりも我が娘をと押し続けたのはアクセット侯爵家であり、そのがめつさと金への執着は身の毛がよだつものだった。
皇宮披露会の名で隠された皇帝の婚約者選定会はアクセット侯爵による計らいであり、先代皇后の義弟という立場を上手く利用した聡明な人間。
「どうやったんだ?」
「……少々お話をしただけです」
「俺はお前が敵でなくて良かったよ」
「では問題解決しましたので、私はこれで」
「いいや、まだ残っている」
そう言って執事から受け取りギークが渡したのは、アルベルトが飽きるほど見てきた大きさの硬い紙。
「……不要です」
「今までならな。だが今回はそう上手くもいかない。これをどうするかはお前次第だが、相手は番の概念がない人間だ。お前がいくら断りの連絡を入れたところで、平民を娶ると言われて黙っているわけがない」
「おあっ!ヴェアトリス王女じゃないですか!」
「関係ありません。お受けしません」
「知ってます?この人、清楚な顔してお腹の中真っ黒なんですよ。ものすごく貪欲で、あ!あの伯爵令嬢を自殺未遂まで追い込んだってい「カロエル!!お前はどうしてそうペラペラと何でも喋るんだ!」っいたぁぁぁい!!キャフタのせいで頭凹んだらどうしてくれるんだよ!!」
ヴェアトリス・ローズ・アグセント。
アグセント王国の第三王女であり、プラチナブロンドの髪に赤い瞳の容姿が美しい女性だが、その見た目とは裏腹に人を平気で陥れ、他人が自分の為に命を捨てる事を当たり前に思う独裁者とも言われている。
そして、昨月彼女の気に入った公爵令息の婚約者にあらぬ噂を立て、死ぬ事を唆し、自殺未遂まだ追い込んだ女性。しかし、その事は王族の権限で揉み消しになり、知っているのはごく僅かな人間のみ。
「俺としては断って貰う方がありがたいがな」
「皇帝陛下、立場的に少々お言葉はどうかと……それに、アグセント王国は貴重な鉱石の貿易国です」
「それは分かっている。だが考えてもみろ。あの小娘がアルベルトの妻になったら……考えただけでも寒気がするぞ」
「それには激しく、それはもう激しく同意します」
「だがな、あっちとしてもこんな優良物件を狙わない訳がないだろう?ほらみろ!この男を!」
デデーンと効果音がつくかのように激しくアルベルトを立てるギーク。
「アルベルト・ディートフリー!ルーヴァニア帝国筆頭公爵家に二十ニという若さで当主でありながら、国内最強の騎士!顔は良く、家柄も良し、女性人気も年々鰻登りで、要らないものは切り捨てるはっきりとした性格!!欠点があるとすれば、扱いづらいこの捻くれた性格と重度の仕事人間、趣味が鍛錬というつまらない男!そして何より!!空気が読めるけど読めない、皇帝をも敬わない清々しいメンタル!多少、いや大いに性格に難ありだが、それをもカバーしてしまう手腕!!仕事に関してはピカイチだが、友達作りはヘタクソな男!!こんな優良物件を王女が簡単に捨てると思うか!!?」
どうにも褒められているようで、褒められていないと感じるアルベルトは額に青筋を浮かべる。
「前半は褒めてますけど、後半はほぼ全部悪口ですね!」
「総合評価はAプラスってとこだな!」
(この皇帝殴ってやろうか……)
するとここで、ディートフリー公爵家の騎士一人が慌てた様子で無作法にドアを開ける音がした。
———————————————
———————————————
ここまで読んでくださりありがとうございます!
まさか、こんなに沢山の方に恵まれるとは思ってもいなかったのでとても嬉しい気持ちでいっぱいです♪
ですが受験勉強に専念する為、一度この回を区切りに投稿を終了させてもらいます。また受験が終わり落ち着き次第投稿させて頂きますので、その際に読んで頂けると幸いです!
アルベルトは幼馴染の女に対してあんな仕打ちだけなの!??
え!結ばれるんじゃないの!??どういうこと!!??
なんて、私も書きたい話が盛りだくさんです!
今後の展開を楽しみ待っていただけると嬉しいです!それでは、また今度お会いしましょう^ ^
それまで騒然としていた話し合いの場は、アルベルトの突発的な発言で静まり返り、カロエルらは驚きを隠せず、まさにその瞬間に立ち会ったことをとても喜ぶ。
「えぇ!!??わぁぁ~そんな事ってあるんですねぇ~」
「……まさか本当に……おめでとう、でいいのか?」
「アルベルト、顔を緩めるか険しくするかどっちかにしなよ」
ナハトが初めて発言し喜びを分かち合っている一方で、一人だけ怪訝な顔つきの男がいた。
アルベルト・ディートフリーの友人としてもちろん一番喜んでいるのが彼だという事は事実であり、彼をけしかけたのもギークだったが、皇帝ギーク・ヴァロエ・フレッツはこの事実を今になって重く受け止める。
「アルベルト、お前はその子をどうするつもりだ?」
「公爵家で引き取ります。もちろん、公爵夫人の立場として」
それは、運命の番という概念を持つ獣人からするとごく普通の考え方だったが、アルベルトの運命の番である者の素性が知れない限りは許容し難い事だった。
「安易に動くべきではない」
「なぜですか。」
「お前の言いたい事は分かるし、運命の番がどれほど重要なことかは分かっている。だがな、あまりにも身分が違いすぎる。それに、精霊の加護持ちときたら皇宮の保護対象になる」
「歴代の精霊の愛し子の中にも平民はいました。皇帝でなくても筆頭貴族と結婚したという事実は健在です」
「長年現れなかった加護持ちを元老会の奴らが黙っておくとでも?」
「そんなの、我々でどうにかすればいいでしょう」
「それが出来ないから言ってんだ」
元老会とは、由緒正しい歴史を持つ貴族の中でも、皇帝により近い立場での職を主とし、別名貴族派とも呼ばれる人達の総称を指す。先祖代々その力を奮ってきた貴族でもあり、国政の一部は彼らに託されている。それを決定したのは、第四代皇帝であり神の名の下に誓約を行ったため、それを簡単に覆す事はできない。
皇帝を支持する皇帝派と、皇帝の座を狙おうとする貴族派は長年戦いの火種になっており、歴史を重視するルーヴァニア帝国では無碍にできない存在である。
「では、ぶっ潰しましょう元老会を」
「はぁ?!」
「そもそも皇帝派の貴族だけで国政は成り立ちます。現に、彼らが担当しているのはビュートー海の貿易のみで、そこら一帯は今やディラック伯爵家の領地です。脱税に私有地への不法侵入、恐喝・暴行、その他にも公にされては困る事はたくさんあるでしょう」
「………なんだそれは」
ディートフリー公爵家の執事長クラウスがアルベルトに手渡したのは、何枚にも束ねられた紙。
窓から差し込む太陽の光にあたり光沢するその紙は、銀色に光り輝きどう見てもただの紙ではなかった。
「請願書です」
「………一応聞くが、何のだ?」
「ゲオドール・アクセット侯爵からのです」
分厚い束をアルベルトから受け取ったギークは、その他の人とその内容を確認する。
「『序列の見直しと制限の規定について』?」
「『この度アクセット侯爵家の名において、その臣家となる貴族並びに統治地域はディートフリー公爵家の采配に委ね、牢として皇帝陛下の厳正なる判断に一任致します』」
「「はぁっ?!!」」
「………うるさいです」
「いや、お前これ……“ぶっ潰しましょう“じゃなくて“ぶっ潰しました“じゃねぇか」
元老会ゲオドール・アクセット侯爵家は貴族派の代表貴族であり、一部の貴族の手綱を握り、その裏を支配するいわば皇帝対抗派の支配者だった。皇帝ギークが即位してから皇后陛下が誕生するまでの約二年の間、どの貴族よりも我が娘をと押し続けたのはアクセット侯爵家であり、そのがめつさと金への執着は身の毛がよだつものだった。
皇宮披露会の名で隠された皇帝の婚約者選定会はアクセット侯爵による計らいであり、先代皇后の義弟という立場を上手く利用した聡明な人間。
「どうやったんだ?」
「……少々お話をしただけです」
「俺はお前が敵でなくて良かったよ」
「では問題解決しましたので、私はこれで」
「いいや、まだ残っている」
そう言って執事から受け取りギークが渡したのは、アルベルトが飽きるほど見てきた大きさの硬い紙。
「……不要です」
「今までならな。だが今回はそう上手くもいかない。これをどうするかはお前次第だが、相手は番の概念がない人間だ。お前がいくら断りの連絡を入れたところで、平民を娶ると言われて黙っているわけがない」
「おあっ!ヴェアトリス王女じゃないですか!」
「関係ありません。お受けしません」
「知ってます?この人、清楚な顔してお腹の中真っ黒なんですよ。ものすごく貪欲で、あ!あの伯爵令嬢を自殺未遂まで追い込んだってい「カロエル!!お前はどうしてそうペラペラと何でも喋るんだ!」っいたぁぁぁい!!キャフタのせいで頭凹んだらどうしてくれるんだよ!!」
ヴェアトリス・ローズ・アグセント。
アグセント王国の第三王女であり、プラチナブロンドの髪に赤い瞳の容姿が美しい女性だが、その見た目とは裏腹に人を平気で陥れ、他人が自分の為に命を捨てる事を当たり前に思う独裁者とも言われている。
そして、昨月彼女の気に入った公爵令息の婚約者にあらぬ噂を立て、死ぬ事を唆し、自殺未遂まだ追い込んだ女性。しかし、その事は王族の権限で揉み消しになり、知っているのはごく僅かな人間のみ。
「俺としては断って貰う方がありがたいがな」
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「それは分かっている。だが考えてもみろ。あの小娘がアルベルトの妻になったら……考えただけでも寒気がするぞ」
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———————————————
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ここまで読んでくださりありがとうございます!
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