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第7話
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「ユーリ!お肉!お肉!」
「あ、ティトそんなに走ったら危ないよ!」
今日は、三ヶ月前に魔物討伐を行なったルーヴァニア帝国の最強部隊と呼ばれる、ディートフリー公爵家とその一行の慰労祭だ。
今回討伐されたのは、帝国の北部に位置する集落に現れた最大級のドラゴン。見事にその首を掻き切ったのは、平民からも貴族からも人気高いディートフリー公爵だった。
そして、ユリアス達は公爵一行が通る道の両脇で行われる王都主催の祭りに参加していた。
「ユーリ、ブランも来れたらよかったのにね」
「そうだね、まさか風邪ひいちゃうなんて」
ブランは貧弱なんだ、と肉の串を頬張りながらジャックは言う。
『いやぁああ~!!ぶ、らもいくぅ!!ゆ、り!ぶら、もいきたい!!』と泣き喚くブランは、慰労祭が楽しみで眠れなかったらしく翌日熱を出していた。
ユリアスはブランのそばに居ようと思っていたが、ローラとユニアが見てくれるとの事で今日はシュワルツとジャック、ティト、ソニア、ユリアスの五人だった。
「お、公爵様が来たぞ」
わぁあああ!!という歓声と共に感謝を述べる言葉が飛び交う中、公爵家の紋章の入った豪壮な馬車に乗ってやって来たのは、白髪の髪の毛に、黒い瞳のよく似合う容姿の整った男性。
ひと目見て、ああ……彼がディートフリー公爵か、とユリアスは初対面ながらに理解した。
陶器のような白い肌に、筋の通る鼻、綺麗に尖る顎に、形のいい唇。顔についているパーツの全てが彼を作り上げ、あまりの美貌に息をすることを忘れた。
「ユーリ!見て!公爵様だよ!!」
「あ、う………」
ティトに連れられて人の少ない観客席へと足を踏みれると——————ユリアスの景色が変わった。
まるで、そこの空間にいるのはたった二人。
その二人だけが世界から孤立したように、周りの音は一斉にして消え去り、雑音も流れない。
なんだか、目が、離せない。
引きつけられるかのように、その黒く澄んだ瞳に魅入ってしまう。周りの動きが全てスローモーションのようにも感じ、不思議と心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
「ユーリ!!きいてる!!??」
「あ、ご、ごめん!なに?」
「もう~ちゃんと聞いててよね!」
…………目が合った?
いや、まさかそんなはずがない。
そして公爵を乗せた馬車が過ぎて、皇宮へと向かう。その時にはもう周りの大きな歓声が響き渡り、まるでさっきの事が夢物語のように感じた。
「ブランにもね、何か買って行ってあげたいの!何がいいと思う?」
「……………」
「ユーリ?」
「あ、ううん。そうだね……どこか雑貨屋さんにでも行ってみる?」
そして、入ったのは小さな雑貨屋さん。
ピンクと白の可愛らしい見た目とは裏腹に、中は不思議な空間になっていた。ティトもユリアスも初めて入るそのお店は、小さな時計から大きな時計、砂時計やアクセサリー、ペンからお菓子まで、いろいろな種類の物が売っていた。
——————……あ、この色………
ユリアスが手に取ったのは、銀色のピアス。シンプルにダイヤの形のピアスは他に何も装飾がされていないが、どうしても惹かれる何かがあった。
「おやおや、お兄さんそれを選ぶなんて見る目があるねぇ」
奥から出て来たのは、フードを被った背の小さなお婆さんだった。
杖をつきながら歩き、どこか訳ありそうに話すその姿は何故か目が離せず、どこか不思議な気持ちになった。
それはティトも同じだったのか、初めはものすごく警戒していたが段々とそれも解けていく。
「お兄さん、それが欲しいのかい?」
「少し、気になって。でも、ピアスなんて開けた事がないんです」
思わず取ってしまったそのピアスは、まるでさっき会った公爵のようで……——————と、顔を真っ赤にしたユリアスは、俺は一体何を考えて……と、そのピアスを戻す。
「おや、いいのかい?欲しいのなら勝手に持って行きな」
「え?」
「それはね、非売品なんだよ。ある人にそれで売ってくれと頼まれてね」
「非売品……でも、お金は払います」
「いいよいいよ。こんな老耄のお店に来てくれただけありがたいんだよ」
「ですが「ユーリ!!この飴ブランにあげたい!見て!ブランみたいに綺麗な青色なの!!」
自信を持って見つけたのか、ふふんっと鼻を高くしているティトを見て、思わずおばあさんと笑い合う。
「じゃあ、それを買っておくれるかい?」
「もちろんです」
そして買ったピアスは、その場でおばあさんがつけてくれた。
初めて体に何かが刺さるという感覚は、少し痛くて、でもどこか不思議と嬉しい気持ちで溢れていた。
でも、どうしてか一つしかないそのピアスはユリアスの左耳につけられた。その理由を聞いても笑ってはぐらかすだけで、それが特に意味のないものなのかどうなのかははっきりしない。
「ありがとうございました」
「はいね。またいらっしゃい——————お兄さん」
そして帰り際に囁かれた、
「運命はね、すぐそばにあるものだよ」
の一言が耳に残ってはなれなかった。
「あ、ティトそんなに走ったら危ないよ!」
今日は、三ヶ月前に魔物討伐を行なったルーヴァニア帝国の最強部隊と呼ばれる、ディートフリー公爵家とその一行の慰労祭だ。
今回討伐されたのは、帝国の北部に位置する集落に現れた最大級のドラゴン。見事にその首を掻き切ったのは、平民からも貴族からも人気高いディートフリー公爵だった。
そして、ユリアス達は公爵一行が通る道の両脇で行われる王都主催の祭りに参加していた。
「ユーリ、ブランも来れたらよかったのにね」
「そうだね、まさか風邪ひいちゃうなんて」
ブランは貧弱なんだ、と肉の串を頬張りながらジャックは言う。
『いやぁああ~!!ぶ、らもいくぅ!!ゆ、り!ぶら、もいきたい!!』と泣き喚くブランは、慰労祭が楽しみで眠れなかったらしく翌日熱を出していた。
ユリアスはブランのそばに居ようと思っていたが、ローラとユニアが見てくれるとの事で今日はシュワルツとジャック、ティト、ソニア、ユリアスの五人だった。
「お、公爵様が来たぞ」
わぁあああ!!という歓声と共に感謝を述べる言葉が飛び交う中、公爵家の紋章の入った豪壮な馬車に乗ってやって来たのは、白髪の髪の毛に、黒い瞳のよく似合う容姿の整った男性。
ひと目見て、ああ……彼がディートフリー公爵か、とユリアスは初対面ながらに理解した。
陶器のような白い肌に、筋の通る鼻、綺麗に尖る顎に、形のいい唇。顔についているパーツの全てが彼を作り上げ、あまりの美貌に息をすることを忘れた。
「ユーリ!見て!公爵様だよ!!」
「あ、う………」
ティトに連れられて人の少ない観客席へと足を踏みれると——————ユリアスの景色が変わった。
まるで、そこの空間にいるのはたった二人。
その二人だけが世界から孤立したように、周りの音は一斉にして消え去り、雑音も流れない。
なんだか、目が、離せない。
引きつけられるかのように、その黒く澄んだ瞳に魅入ってしまう。周りの動きが全てスローモーションのようにも感じ、不思議と心臓の鼓動が早くなるのを感じる。
「ユーリ!!きいてる!!??」
「あ、ご、ごめん!なに?」
「もう~ちゃんと聞いててよね!」
…………目が合った?
いや、まさかそんなはずがない。
そして公爵を乗せた馬車が過ぎて、皇宮へと向かう。その時にはもう周りの大きな歓声が響き渡り、まるでさっきの事が夢物語のように感じた。
「ブランにもね、何か買って行ってあげたいの!何がいいと思う?」
「……………」
「ユーリ?」
「あ、ううん。そうだね……どこか雑貨屋さんにでも行ってみる?」
そして、入ったのは小さな雑貨屋さん。
ピンクと白の可愛らしい見た目とは裏腹に、中は不思議な空間になっていた。ティトもユリアスも初めて入るそのお店は、小さな時計から大きな時計、砂時計やアクセサリー、ペンからお菓子まで、いろいろな種類の物が売っていた。
——————……あ、この色………
ユリアスが手に取ったのは、銀色のピアス。シンプルにダイヤの形のピアスは他に何も装飾がされていないが、どうしても惹かれる何かがあった。
「おやおや、お兄さんそれを選ぶなんて見る目があるねぇ」
奥から出て来たのは、フードを被った背の小さなお婆さんだった。
杖をつきながら歩き、どこか訳ありそうに話すその姿は何故か目が離せず、どこか不思議な気持ちになった。
それはティトも同じだったのか、初めはものすごく警戒していたが段々とそれも解けていく。
「お兄さん、それが欲しいのかい?」
「少し、気になって。でも、ピアスなんて開けた事がないんです」
思わず取ってしまったそのピアスは、まるでさっき会った公爵のようで……——————と、顔を真っ赤にしたユリアスは、俺は一体何を考えて……と、そのピアスを戻す。
「おや、いいのかい?欲しいのなら勝手に持って行きな」
「え?」
「それはね、非売品なんだよ。ある人にそれで売ってくれと頼まれてね」
「非売品……でも、お金は払います」
「いいよいいよ。こんな老耄のお店に来てくれただけありがたいんだよ」
「ですが「ユーリ!!この飴ブランにあげたい!見て!ブランみたいに綺麗な青色なの!!」
自信を持って見つけたのか、ふふんっと鼻を高くしているティトを見て、思わずおばあさんと笑い合う。
「じゃあ、それを買っておくれるかい?」
「もちろんです」
そして買ったピアスは、その場でおばあさんがつけてくれた。
初めて体に何かが刺さるという感覚は、少し痛くて、でもどこか不思議と嬉しい気持ちで溢れていた。
でも、どうしてか一つしかないそのピアスはユリアスの左耳につけられた。その理由を聞いても笑ってはぐらかすだけで、それが特に意味のないものなのかどうなのかははっきりしない。
「ありがとうございました」
「はいね。またいらっしゃい——————お兄さん」
そして帰り際に囁かれた、
「運命はね、すぐそばにあるものだよ」
の一言が耳に残ってはなれなかった。
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