暴君王子は恋を知る

まぁ

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「そうですね……一般的に長続き、と言うよりも、相手に喜んでもらうとしたら、料理をしてみたり相手を労わってみたり、後は床上手になる事ですかね?」
「床上手?」
「セックスですよ」
「セっ!」
 ヒッと息を飲んだアンリを見て、ウィードは「なんて可愛らしいのだろう」と心の中でクスクスと笑う。だが狙いはこれからだ。
「なんだったら私で練習してみますか?」
「れ、練習って……それはパートナーとすべきであって、そうじゃない人とはしてはいけないんじゃないのか?」
「別に結婚しているわけでもないのに、そんな縛り、どこの国の法律ですか?」
「うーん……」
「相手を喜ばせたいのなら、相手を気持ちよくさせる為の技の一つや二つ身に着けるべきですよ」
 そこまで言われるとアンリの心も戸惑う。しかもウィードが相手になってくれると言うが、実際和史とするような事をウィード相手に出来るのかもわからない。だがウィード自身は心の中ではあと一歩と思っていた。
 自分の気持ちは直接的には言えない。ならばアンリの体を自分だけのものに陥落させ、和史との仲を引き裂いてやろうとしていた。
「どうですか?私とセックスの練習してみますか?」
「う、うーん……わかった。少しだけ考えさせてくれ」
 もう少しという所でアンリの理性が働いたか。チッと内心で舌打ちをしたウィードは「畏まりました」と言ってその場は引き下がった。
「だが色々と参考にはなった」
 セックスに関しては何とも言えないが、それ以外の事で和史を喜ばせればきっと二度目エッチにこぎつけるのではとアンリは思った。


 仕事終わりに立ち寄ったのは新宿だった。とあるお店を前に息を飲んだアンリは、いざ入店してみる。普通の店ならば店員の「いらっしゃいませ」が聞こえる所だが、ここは何も聞こえない。代わりに壁や棚にはアンリが見た事もないようないろいろな物が置いてある。
(な、なんだこれ?)
 不思議な気持ちで棚に置かれた品の一つを手に取り、パッケージの裏側を見てアンリは顔を赤くする。そして高速で商品を棚に戻した。
(お、落ち着けオレ!ここはそういうお店だってわかって来たんだろうが!)
 頭の思考がグルグルと回る中、アンリはとある品を探した。
 そう、ここは新宿にあるゲイ専門のアダルトショップだ。どうしてアンリがここに来たかと言うと、あの後自分なりにこっそりと相手を喜ばせる方法とやらを調べた。会社用PCでは履歴がバレるので、スマホでこっそり調べていたらここに辿り着いたというわけだ。
(な、なんとしてでもアレを手に入れるぞ!)
 謎の気合を見せるアンリを店側から見ていた店員がこっそりとアンリに近づく。
「何かお探し?」
「ヒィ!」
 背後から声をかけられ、変な声が漏れたアンリは後ろを見た。そこには大柄な男で、女物の服を着た化粧の濃いめな人物がいた。
「そこまで驚かなくてもいいわよぉ。それにここに来たって事は、ソッチの子でしょ?何を探してるの?てか日本語通じるかしら?」
「えっ……あの……」
 しどろもどろになるアンリに詰め寄る店員。今すぐにでも逃げ出したい気持ちをこらえ、アンリは店員に相談した。
「じ、実はこんなものを探している……」
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