暴君王子は恋を知る

まぁ

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 それからもアンリにとっては変わらぬ日常は続く。仕事が終わると和史が部屋にいて晩御飯を作っている。そしてキスも相変わらずだ。変わったと言えば兄アレンだろうか。アイドルとのスキャンダルが収まり、彼の秘書である伊澄から帰宅許可を出された翌日にまたスキャンダルが出たのだ。
「一体お前達は何をしているんだ!」
 マンションにいる護衛のSPに対して罵声を浴びせるアンリ。今回のスキャンダルは兄アレンと陽菜のスキャンダルだ。このマンションの敷地内にいる限り、それらのスキャンダルなどはSPが握りつぶすはずだが、パパラッチはその網を潜り抜けたようだ。
 もちろんSP達は自分達の警備を怠ったと、クビをも覚悟のようだが、兄アレンはSP達を解雇はしなかった。だがこのスキャンダルによってアレンも陽菜もまたホテル暮らしだ。正直陽菜の事はどうでもいいのだが、兄にまた会えないのは寂しいものだ。
「だったらホテルに行けばいいだろう?お前にも部屋をあてがわれてるんだし」
 そう言ったのは和史だ。イライラしているアンリに対して、理由を聞かずとも内容はわかっているようだ。それもそうだろう。週刊誌にでかでかと載っていた話だ。
「そもそも何でホテルで暮らさないんだ?」
「それは兄さんがいないからで……」
「でも今はホテル暮らしになってるじゃないか……」
 たしかに初めは兄の側にいたいからとこのマンションに移った気もしたが、ホテルを使わないのは和史がいたからだ。でも和史はこの部屋に入り浸り状態だ。自分の考えが矛盾している。
「本当に兄貴が好きなんだな」
「当たり前だろ!兄さんは凄いんだ!それに……小さい頃から兄さんが側にいてくれた」
 忙しい両親に変わりいつも自分の側にいてくれたのは兄だ。元々友人を作るのが苦手なアンリにとって、兄は兄であり友達でもあるのだ。
「成程な。なんだか妬けるな」
「はぁ?どういう意味だ?」
「その頃のお前に会ってたら、俺がお前をうんとかわいがってやったんだがな」
「お前が言うと怖いんだが……」
「バカ言うな。精通もしてないガキに悪戯なんてしないさ」
 その変わり自分なしでは生きていけない程に調教をすると、もっとも恐ろしい事を言う。
「世の中の人間。スキャンダルなんてすぐに次のスキャンダルにいくさ。だから気にするな」
「わかってる……けどこんなスキャンダルを起こした計算高いアイドルには腹が立つ!」
「それも秘書の伊澄さんがしてくれるんだろ?ならお前は大人しくしておけ」
 ポンポンとアンリの頭を優しく叩いた和史にアンリは黙り込んだ。兄の二度目のスキャンダルが出たからかはわからないが、和史は不埒な事をせずにアンリの側にいてくれる。
「兄貴に会いたいならホテルに行くか?」
「いや……オレが行っても邪魔になるだけだ」
「よくわかってるじゃないか」
「な、なんだと!」
「いい加減、兄離れしろって事だよ。兄貴にだって誰かと一緒になりたいって気持ちはあるんだし」
「わかってるよ……」
 ぷくっと膨れるアンリの頬をつんつんと突く和史に対し、「やめろ!」と言い返すアンリの表情はこわばってる。
「泣きたいなら泣いてもいいぞ」
「何で泣かなきゃいけないんだ!」
「兄貴が結婚したら一人になるって思ってるんだろ?けどお前には俺がいるのを忘れるな」
「何故お前限定なんだよ」
 意味がわからない。別に兄弟なんだし一人になるわけじゃないし、自分には和史しかいないというわけではない。そうは思っているのだが、和史の側は居心地がいい。アンリは甘えるように和史の肩に自分の頭を乗せた。
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