暴君王子は恋を知る

まぁ

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 翌日、ホテルから戻ると昨夜買いに行った家具家電が綺麗に設置されていた。こうしてみると生活感がにじみ出ているし、和史の選んだものはどれもセンスがいい事に気が付く。
「あぁ、お帰り」
 キッチンからひょこっと顔を覗かせたのは和史。今日は少し会議が長引いたのもあり、和史の方が早くこちらに着いたようだ。
「すぐに晩御飯が食べれるから手を洗って来い!」
「お、オレは子供じゃない!」
 そう言いながらも手を洗いに行くアンリ。新品のダイニングテーブルに座ると、サラダにスープ、ハンバーグとバケットと洋食が並べられていた。
「オレは野菜はあまり好きじゃない……」
「好き嫌いするな。俺が作った特製ドレッシングかけてるから食べられるはずだ」
「でもオレは野菜はスムージー派だ」
「いいから食べるんだ。出されたものを食べるのがマナーだぞ」
 そう言いくるめられ、アンリはぶつぶつ文句を言いながらも和史の作った料理に手をつける。苦手な野菜だが、目の前でじっと見られては食べなくてはいけない。意を決しサラダを口に含むと、和史特製のドレッシングと野菜の相性は最高で、これならばいくらでも食べれそうだと思った。
「ほら言っただろ。食べられるって……」
「べ、別にお前のおかげじゃ……」
 だが和史の料理はどれも美味しい。聞けば料理は和史の趣味でもあるそうだ。ホテルのシェフ達から話を聞いたりもして、自分なりのアレンジも利く料理上級者のようだ。
「ごちそうさまでした」
「お粗末様です」
 間食した皿を見て満足そうな和史はニコリと微笑んだ。その度にアンリはドキドキした。
「明日の夕飯は何かリクエストがあるか?」
「和食がいい……お前の作る和食はどれも美味しいし……」
 少し口を尖らせて言うアンリに「了解」と言った和史は、アンリに風呂が沸いていると言って風呂に入れた。これでは家政婦というよりお母さん状態だ。どうしてここまでするのかと尋ねても、どうせアンリの為だとか、好きなやつに……などと言うのはわかっている。だがそれがなんだか嬉しいのだ。
「ほら、風呂あがったぞ……」
 わしわしとタオルで髪をドライしているアンリを見て、和史は「わざとか?」と聞いてきた。何の事かさっぱりわからないアンリが首をかしげる。
「とりあえず座れ」
「お、おい……」
 無理やりソファに座らされると、和史はドライヤー片手にアンリの髪を乾かし始めた。その手付きが優しく、ついうとうとしてしまったアンリ。
「ほら、もう終わりだ」
「あ、ありがとう……」
 そう小さな声で言うと、横から和史の顔が近づいて来たと思ったら、唇に軽くキスを落とされた。
「な、な……」
「あまりにもかわいかったからな。つい」
「つ、ついでいきなりするなよ!」
「いつもいきなりしているだろ?それに昨日の分と合わせて、今日も俺の名前を呼ばなかった罰を与えるからな」
 和史の名前を呼ばない事で発生するキスの罰。だがただのキスに終わらずなのは困ったものだ。要はアンリが和史の名を呼べば済む話なのだが、素直に名前が呼べないのはアンリの性格だ。
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