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「ん?どうかしたのかアンリ」
わなわなと震えるアンリを横目に、アレンは首を傾げている。だがこの男と一夜の過ち(未遂)を起こしてしまった事など兄に言うことは出来ない。すると和史の方がアンリを見てニコリと微笑む。
「あぁ、貴方様はアレン様の弟君でしたね。申し遅れました。私、当ホテルのオーナーで東宮寺和史と申します」
スッと内胸ポケットから出された名刺を渡した和史。そこにはボーイではなくオーナーと書かれている。だが東宮寺という名前に記憶がある。
「東宮寺……もしかして日本のホテル王一族か?」
「ホテル王なのかはさておき、たしかに日本全国に当ホテルの姉妹館はありますね」
日本全土+海外にもが正解だが、そんな人物がまさかボーイズバーなんかにいたというのもにわかに信じがたい。
(だって昨日と雰囲気違うし……)
今の和史はよく出来た紳士的なホテルオーナーだが、昨夜の和史は髪を下ろしていたせいもあるが、雰囲気が全く違う。ニヒルな笑みを浮かべ責め立てるような口調と傲慢な態度。そして情熱的なキス……そこまで思い出した瞬間、アンリはボッと顔が熱くなった。
「おや?お顔が赤いですが、体調が優れませんか?」
「う、うるさい!オレは仕事する!」
そう言って兄がいる部屋を後にしたアンリは、自分にあてがわれている部屋に身を隠した。
このホテル、「イーストグランドホテル」は、ヒースルー一族が懇意にしている日本屈指の高級ホテル。今は年単位でエグゼグティブスイートを押さえているが、実際にはほぼヒースルー一族のものだ。最上階とその下の階をアレンが職場として押さえているので、日本海運商事の特別編成秘書課と一部ホテルスタッフ以外は立ち入らない。
あてがわれた部屋でパソコンと睨めっこをしているアンリ。日本に来る際、一緒にやって来た彼の秘書ウィードは、兄アレンが日本人の恋人が出来たと知ったときと似たような癇癪に声をかけるべきか迷ったが、この状況のまま仕事をしてもよろしくない。
「アンリ様。また何かあったのですか?」
「またって何だ!またって……な、何もない」
「本当ですか?その割にはご機嫌がすぐれないようですが?」
「ほ、本当に何もない!」
何かあったのはわかるが、頑なに言わないと言う事は言いにくい何かなのだろう。すると部屋のチャイムが鳴った。
「誰だろ?ホテルのスタッフかな?」
「私が開けましょう」
そう言ってウィードは扉を開きに行く。よくは聞き取れないが、扉の辺りでウィードとスタッフが何やら会話している。
一体何だと思った瞬間、ワゴンを押して部屋に入ってきたのは和史だった。
「なっ、お前!」
「先程は当方無礼を働いたようですので、お詫びとして紅茶をお持ちしました」
「お、お詫び?」
「えぇ、お詫びです」
ニコリとビジネススマイルな和史が恐ろしい。その笑顔の裏には昨夜の事も含まれている感じがする。
「アンリ様とは今後とも末永くお付き合いをしたいと思いますので……」
やはりこの男は危険だ。その言葉の裏にはいろいろなものが含みという意味だとアンリにもわかった。
わなわなと震えるアンリを横目に、アレンは首を傾げている。だがこの男と一夜の過ち(未遂)を起こしてしまった事など兄に言うことは出来ない。すると和史の方がアンリを見てニコリと微笑む。
「あぁ、貴方様はアレン様の弟君でしたね。申し遅れました。私、当ホテルのオーナーで東宮寺和史と申します」
スッと内胸ポケットから出された名刺を渡した和史。そこにはボーイではなくオーナーと書かれている。だが東宮寺という名前に記憶がある。
「東宮寺……もしかして日本のホテル王一族か?」
「ホテル王なのかはさておき、たしかに日本全国に当ホテルの姉妹館はありますね」
日本全土+海外にもが正解だが、そんな人物がまさかボーイズバーなんかにいたというのもにわかに信じがたい。
(だって昨日と雰囲気違うし……)
今の和史はよく出来た紳士的なホテルオーナーだが、昨夜の和史は髪を下ろしていたせいもあるが、雰囲気が全く違う。ニヒルな笑みを浮かべ責め立てるような口調と傲慢な態度。そして情熱的なキス……そこまで思い出した瞬間、アンリはボッと顔が熱くなった。
「おや?お顔が赤いですが、体調が優れませんか?」
「う、うるさい!オレは仕事する!」
そう言って兄がいる部屋を後にしたアンリは、自分にあてがわれている部屋に身を隠した。
このホテル、「イーストグランドホテル」は、ヒースルー一族が懇意にしている日本屈指の高級ホテル。今は年単位でエグゼグティブスイートを押さえているが、実際にはほぼヒースルー一族のものだ。最上階とその下の階をアレンが職場として押さえているので、日本海運商事の特別編成秘書課と一部ホテルスタッフ以外は立ち入らない。
あてがわれた部屋でパソコンと睨めっこをしているアンリ。日本に来る際、一緒にやって来た彼の秘書ウィードは、兄アレンが日本人の恋人が出来たと知ったときと似たような癇癪に声をかけるべきか迷ったが、この状況のまま仕事をしてもよろしくない。
「アンリ様。また何かあったのですか?」
「またって何だ!またって……な、何もない」
「本当ですか?その割にはご機嫌がすぐれないようですが?」
「ほ、本当に何もない!」
何かあったのはわかるが、頑なに言わないと言う事は言いにくい何かなのだろう。すると部屋のチャイムが鳴った。
「誰だろ?ホテルのスタッフかな?」
「私が開けましょう」
そう言ってウィードは扉を開きに行く。よくは聞き取れないが、扉の辺りでウィードとスタッフが何やら会話している。
一体何だと思った瞬間、ワゴンを押して部屋に入ってきたのは和史だった。
「なっ、お前!」
「先程は当方無礼を働いたようですので、お詫びとして紅茶をお持ちしました」
「お、お詫び?」
「えぇ、お詫びです」
ニコリとビジネススマイルな和史が恐ろしい。その笑顔の裏には昨夜の事も含まれている感じがする。
「アンリ様とは今後とも末永くお付き合いをしたいと思いますので……」
やはりこの男は危険だ。その言葉の裏にはいろいろなものが含みという意味だとアンリにもわかった。
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