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とんとん拍子に

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 一泊を加納家で過ごした後、加納と二人で都内へと帰ってきた。
「なんだか加納家の力に疲れた……」
「お疲れ様です。佐和子さんこの後どうするんですか?」
「とりあえず家に帰って一休み。そしてビールかな?」
「安定ですね」
 ぐったりな佐和子のよく聞くフレーズに加納はくすくすと笑う。
「疲れてる所悪いんですが、もう少しだけ僕にお付き合いしてくれますか?」
「えっ?何?」
「着いてきてくれたらわかります」
 そう言って加納は佐和子をとある場所へと連れて行く。


 電車を乗り継ぎタクシーで向かった先は結婚式場だった。いきなりな展開に佐和子は目を丸くした。
「えっ?えっ?俊也君ここって結婚式場じゃない」
「そうですよ。こっちです」
 この先の展開は読めるのは読めるが、まさかの事で佐和子は頭が働かない。
 スタッフに話をし、一般に無料開放されているチャペルで加納は佐和子の前に小さな箱を取り出す。
「まだまだ未熟な僕ですが、佐和子さんを大切にします。僕と結婚してくれますか?」
「えっと……はい」
 やったーと喜ぶ加納は箱の中に入ったエンゲージリングを佐和子の指にはめた。勢いというか雰囲気というのはとても凄い豪華だと思った。
 佐和子はボケる事も忘れイエス以外の言葉を出せなかった。
 なんだか実感が湧かないが、間違いなく加納にプロポーズされたのだと指輪が証明している。
「佐和子さんの事、本当に好きです」
「わ、私もだよ。けど本当にいいの?」
「ここまで来てそれはないですよ。僕は佐和子さんを一生大切にします!」
 どんな女の子でもこの瞬間に一生分の輝きを放つのだろう。佐和子もまたはしゃぐような表現はしないものの、なんだか満たされた気分になった。
 もう恋愛する事なく、余生を過ごすのだと思った人生がまさかこんなにも変わるとは。人生何が起こるかわからないはまさにこの事だ。
 とはいえまだまだ先は長く、佐和子には花嫁修行やらなんやらが待ち構えている。それを考える時だけはなんとも複雑な気持ちにはなったが……


 それから二年。
「出産って……こわなにも地獄なのね」
「あんた子供前にしてそれはないでしょ」
 佐和子の腕に抱かれた小さな命。その祝福に駆けつけた(家族旅行名目)千枝は、呆れながらも佐和子らしい言葉にやれやれと言った。
「いや産んでる時よりその後!腰はおかしいわ痛いやらで……」
「世のお母さんはそうやって子供産んでるんだよ。まぁその後に待つのは乳腺の引き剥がしだけど、かなり痛いわよ~」
「えっ、マジ止めて!」
 怯える佐和子を見て笑う千枝。
 この二年は本当に怒涛の毎日だった。古式加納家なので、工藤家と加納家で結納を交わしたり、式をどうするかなどの話し合いから仕事の事、住まいの事など、慌ただしかった。
 ちなみに両家顔合わせでは都内まで来る事がない佐和子両親はまるで外国にでも来たかの様な反応だった。
 会社はちゃんと制度を利用し、育児休業の後に復帰する予定だ。
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