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圧力一家?
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結局佐和子は夕食を加納家でいただくことになる。父源蔵は会食があるそうで不在だったが、加納母、兄、兄嫁とその子供、加納本人というなんとも言えない構図だ。
兄夫婦の子供達はしっかり躾けられているか、箸の持ち方から食べ方まで、おそらく同世代の子供よりも綺麗だ。
「いやぁ、佐和子さんには変な所をお見せした。本当に申し訳ない」
「い、いえおかまいなく……」
加納の話からして兄がブラコンと言うのは予想出来ていたので、玄関での出来事はあまり驚かなかった。
「本当に気をつけて下さいね。佐和子さん。克之さんは隙あらば俊也さんに会いに行こうとするほど、極度のブラコンですから」
そう本人を横目で見ながら柚華が言う。
「仕方ないじゃないか!兄弟でいる時間がそんなになかったんだし。俊也だって都内就職してますます会えなくなって……」
「だからと言って毎週末に、子供とランド、子供と都内観光、ツリーに登るなどと理由をつけて出ようとするのはお止め下さい」
成程。柚華のストップがなければ毎週末兄の襲撃があったのだな。そう思うと柚華には感謝でしかない。
「二人とも食事の時は止めなさい。みっともないですよ」
二人の仲裁に入ったのは母良子。二人はすみませんと謝る。これもまた日常なのか、子供達はノーリアクションだ。すると良子は加納に話しかけた。
「ところで俊也さん。今日は泊まって帰られるの?」
「いや、何も用意してないし、佐和子さんもいるので帰りますよ」
「帰るのか?俊也。泊まっていけばいいのに!」
「けど佐和子さんもいるので……」
「佐和子さんも泊まっていけばいいさ。部屋も着るもの普通にあるし。ねっ」
ニコリと微笑みながら佐和子を見る克之の目が泊まれと圧をかけてくる。その圧に根負けした佐和子は「ではお言葉に甘えて……」と、若干引きつりながら答えた。
結局泊まる羽目になった佐和子は、用意された客間で、布団を敷きにやって来た加納と話をした。
「なんか兄が強引にすみません」
「いえいえおかまいなく。でも見た目のインパクトの割にギャップが凄くて驚いたけど……」
「まぁ、気持ちはわからなくもないですぎ、あれはあれで普段は真面目なんですや」
弟を前にするとダメ兄貴となるらしい。そうなると結婚して子供でも出来たらどうなるのか。想像するだけでも恐ろしい。
「でも佐和子は僕の部屋に泊まってもらえばいいのに」
「さすがにそれはまずいでしょ。婚前とか……後は、兄が覗きに来るとか……」
そう言って佐和子が指差す先。襖の間か、兄克之が覗いていた。
「兄さん!」
「いい雰囲気のところ悪いね。俊也。一緒にお風呂入らないかい?」
「何言ってるんですか。子供じゃないんですよ」
「いいじゃないか。たまには兄弟水要らず」
ここまで凄いブラコンを見た事がないので、佐和子は引き気味だったが、このままでは加納がイエスを言うまで引き下がらないだろう。
「俊也君。せっかくだし行ってきたらいいよ」
「でも……」
「ほら、佐和子もそう言っているし行こう!」
加納の手を引き風呂へと向かった兄。その姿を見ながらもなんだか憎めないなとも思った。
兄夫婦の子供達はしっかり躾けられているか、箸の持ち方から食べ方まで、おそらく同世代の子供よりも綺麗だ。
「いやぁ、佐和子さんには変な所をお見せした。本当に申し訳ない」
「い、いえおかまいなく……」
加納の話からして兄がブラコンと言うのは予想出来ていたので、玄関での出来事はあまり驚かなかった。
「本当に気をつけて下さいね。佐和子さん。克之さんは隙あらば俊也さんに会いに行こうとするほど、極度のブラコンですから」
そう本人を横目で見ながら柚華が言う。
「仕方ないじゃないか!兄弟でいる時間がそんなになかったんだし。俊也だって都内就職してますます会えなくなって……」
「だからと言って毎週末に、子供とランド、子供と都内観光、ツリーに登るなどと理由をつけて出ようとするのはお止め下さい」
成程。柚華のストップがなければ毎週末兄の襲撃があったのだな。そう思うと柚華には感謝でしかない。
「二人とも食事の時は止めなさい。みっともないですよ」
二人の仲裁に入ったのは母良子。二人はすみませんと謝る。これもまた日常なのか、子供達はノーリアクションだ。すると良子は加納に話しかけた。
「ところで俊也さん。今日は泊まって帰られるの?」
「いや、何も用意してないし、佐和子さんもいるので帰りますよ」
「帰るのか?俊也。泊まっていけばいいのに!」
「けど佐和子さんもいるので……」
「佐和子さんも泊まっていけばいいさ。部屋も着るもの普通にあるし。ねっ」
ニコリと微笑みながら佐和子を見る克之の目が泊まれと圧をかけてくる。その圧に根負けした佐和子は「ではお言葉に甘えて……」と、若干引きつりながら答えた。
結局泊まる羽目になった佐和子は、用意された客間で、布団を敷きにやって来た加納と話をした。
「なんか兄が強引にすみません」
「いえいえおかまいなく。でも見た目のインパクトの割にギャップが凄くて驚いたけど……」
「まぁ、気持ちはわからなくもないですぎ、あれはあれで普段は真面目なんですや」
弟を前にするとダメ兄貴となるらしい。そうなると結婚して子供でも出来たらどうなるのか。想像するだけでも恐ろしい。
「でも佐和子は僕の部屋に泊まってもらえばいいのに」
「さすがにそれはまずいでしょ。婚前とか……後は、兄が覗きに来るとか……」
そう言って佐和子が指差す先。襖の間か、兄克之が覗いていた。
「兄さん!」
「いい雰囲気のところ悪いね。俊也。一緒にお風呂入らないかい?」
「何言ってるんですか。子供じゃないんですよ」
「いいじゃないか。たまには兄弟水要らず」
ここまで凄いブラコンを見た事がないので、佐和子は引き気味だったが、このままでは加納がイエスを言うまで引き下がらないだろう。
「俊也君。せっかくだし行ってきたらいいよ」
「でも……」
「ほら、佐和子もそう言っているし行こう!」
加納の手を引き風呂へと向かった兄。その姿を見ながらもなんだか憎めないなとも思った。
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