モブ止まりの私がヒロインになる?

まぁ

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日本家屋と和服の圧力

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 結婚に前向きなお付き合い。世の中のカップルのうち、果たして花嫁修業をしなくてはいけないカップルがこのご時世何人程いるのだろうか。
「いらっしゃい佐和子さん」
「こ、こんにちわ。今日はお招きありがとうございました」
 大豪邸と言っても過言ではない大きな庭(池つき)のある日本家屋のお屋敷で、三つ指を立てて出迎えた良子を見て、佐和子は居心地の悪い気分を味わっていた。


 加納両親から交際を認めてもらってから三日後。週末に遊びに来いと言われた佐和子と加納だった。断れるはずもなく、二人は週末に家に伺おうとしていた。そこまではよかったのだ。
「す、すみません!突然出張が!」
 加納の一言に血の気が失われるのがわかった。どうやら取引先でトラブルがあり、加納はあの遊び人佐藤と共に大阪まで飛ばなくていけなくなった。もちろん断ろうとしたのだが……
「だったら佐和子さんだけでもいっらっしゃい」
 そう良子に言われてしまい、一人であっても敵陣?に攻め込まなくてはいけなくなったのだ。
 家までの案内は加納がしてくれた。本人はその後、急ぎタクシーに乗って駅へと向かったのだが、ここにポツンと残された佐和子は不安要素でしかない。目の前にそびえる大きな木の門。表札にある「加納」という文字がやたらと重厚感あるものだった。
 佐和子を残し出張先へと向かった加納は、ラインで「今日中に戻れるはずなので、帰りに寄ります」とメッセージのあった後、「頑張って下さい!」と一言あった。本人は軽く頑張れなのだろうが、佐和子からしたらやたら重みのある頑張れだ。


 そうして加納家を探索する事もなく良子に導かれるまま中に入った佐和子。通された客間にはやたら高そうな掛け軸に北海道名物の熊の木彫りが鎮座している。
「今からお茶を持ってきます。ゆっくりしていてね」
「ありがとうございます。あの、これつまらないものですがどうぞ」
 手土産は定番のシュークリームにした。ここには加納両親と兄夫婦にその子供二人がいるようだ。子供もいるのだからとこのチョイスにした。
「あら、ありがとうね。洋菓子なんてここじゃ滅多に食べないから嬉しいわ」
 滅多に食べないと言われ、若干失敗してしまったのかもしれないと思った。やはり家の見た目通りの過ごし方なのだろうか。今時の子供のお菓子に洋菓子が入らないという事は、普段は和菓子か食べないかだ。
「お義母様。お茶をお持ちしました」
 そう言って入って来たのは和服を着た美人。年齢は佐和子よりも少し上くらいか。スッと伸びた背筋に凛とした表情。黒い髪は後ろ手にまとめられている。これが和服美人というものなのかと思った。
「佐和子さん。こちらは柚香さん。将来的にあなたのお義姉さんになる方よ」
「初めまして。柚香です」
「は、初めまして。工藤佐和子です……」
 敵陣に一人乗り込み、迫力満載の和服女性二人に取り囲まれた佐和子。果たして加納が来るまでやっていけるのか。全く自身の程はなかった。
(俊也君!早く仕事終わらせてこっちに来て!)
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