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昭和感丸出し

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 恐怖の?Xデーがついに来た。
 加納は両親に会うだけなので気楽にしたらいいと言ったが、バックボーンを聞いて気楽になれるほどの神経を佐和子は持ち合わせてない。
 しかも実家頼りというわけではないが、結婚後のお金のあれやこれやと悩んだ自分が馬鹿に思える程、加納実家は金持ちだ。
(そりゃお金に困るような事を言わないよね)
 極々一般的な地方の家庭に育った佐和子としては、加納が雲の上に住む住人にしか見えない。
 若干の胃の痛みを抱えながら、佐和子が持つ服で一番シンプルかつ高めの服を着て指定場所にやって来た。
(こ、ここって……)
 そこは政財界でも有名な老舗料亭だった。おそらく全くもって一生縁のない場所なのだが、こうもイレギュラーな事が起こると目眩すら覚える。
(けど俊也君の感覚って金持ちっていうより庶民的な感じなんだよなぁ。よく一般人に擬態してたな……)
 それこそ先輩佐藤の紹介するランクAくらいのお店に右往左往していたくらいだ。慣れているとばかり思っていたが、そうでもないのか?
「あっ、佐和子さん!」
 当の本人は本当にいつもデートで着てくるような服装だ。
「両親も来てるので案内しますよ」
 ついにこの時が来た!
 案内された部屋。上質な紙に、襖絵が描かれた襖を開けると、これまた上質な着物を着た女性と、恰幅の良い体だがスーツが嫌味ではない男性が中にいた。
「父さん母さん。この人がお付き合いしている工藤佐和子さんです」
「は、初めまして。工藤佐和子と申します」
 対面に座り挨拶をした佐和子は、チラリと加納の両親を見る。二人共佐和子を見物するかのようにじっと見ている。しかも上から下まで……
(うぅ……胃が痛い)
「加納源蔵です」
「加納良子です。よろしくね、佐和子さん」
 ザ・亭主関白風な源蔵と上品な良子を前に佐和子はいろいろと限界だった。
「佐和子さんは取引先の社員さんで、まだ付き合ってそんなに経ってないけど、結婚を視野にお付き合いしてます」
「取引先の……では結婚をしたら会社は辞められるの?」
「あ、そこまでは考えてないです」
「あら、でも結婚したら子供の事を考えて会社はお辞めになる方が良いのではないです?」
 早速将来の嫁?候補へのいびりなのかと考えてしまった。
 どうやら加納両親はわりと昭和な考えの方らしく、女は家にいるものと考えているようだ。
「佐和子さんは大学はどちらで?」
「佐和子さんご出身は?」
 次々と浴びせられる昭和の両親挨拶あるあるの怒涛の嵐に佐和子はすでにパンク状態だ。
「正直、年上の女性といっても三十代の方。俊也はまだ二十代ですよ。佐和子さんは問題ないの?」
「ね、年齢は関係ないかと……」
「俊也はどうなの?子供の事を考えるなら早めに結婚してそういう体制整えた方がいいと思いますよ」
 良子のズバリ切り込んだ話に、これは結婚を許してくれるのかくれないのか、なんとも読めない展開になったと思った。
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