モブ止まりの私がヒロインになる?

まぁ

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この遊び人はない!

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 何故こんな事になったのだろうかと思った。
 小洒落た大人なカフェで加納の先輩でもある佐藤とコーヒーを飲むという何故状況。
「加納の年上彼女ってのをずーっと見てみたくてさ。なんか俺の提案したコース尽くNG出したって聞いて、どんな子か気になってたんだ」
「は、はは……年下の子の一生懸命に胡座かけるほど肝は座ってないので……」
「それもそっか。俺とかが……えーっと佐和子ちゃんだったっけ?俺とかが佐和子ちゃんにするならあまり気兼ねしないかぁ」
 いきなりちゃん呼び。会社ならばセクハラで訴えたいところだが、この佐藤はフェロモン振りまきに合わせてパーソナルスペースはかなり狭いようだ。
「佐和子ちゃんって俺みたいなタイプ苦手でしょ?」
「えっ?そ、んな事は……」
「嘘。顔が引きつってる」
 そこまで表情に出ているのか。むしろ周りにこの手のタイプがいなかったのもある。いても避けるが……
「今までの女の子はみんな俺と話す時、目をキラキラさせてたから佐和子ちゃんみたいな子はすごく新鮮だ」
「は、はは……」
「ねぇ、加納の別れて俺と付き合わない?」
「はっ?」
「俺ならいろいろ気を回せるよ。こう見えてかなりのお買い得物件だし」
 どこまで自分を過剰評価しているのだろうかと思ったが、佐和子はきっぱりと断る。
「別れません!それにあなたのような不誠実な人は嫌いです。これは私の分です!失礼します!」
 なんだかドラマのような展開を自分が演じるとは思いもしなかったが、佐和子は千円を机に置いてその場を後にした。
「あの人嫌いだ……」
 モブな自分が何故か王道ドラマの展開に合うとも思わなかったが、なんだか嫌な思いをしたので化粧を買わずそのまま家に戻る。


 その日の夕方近く、佐和子の家のインターホンが鳴ったので、通販の何かが届いたのかと思ったら加納がそこにいた。
「俊也君?どうしたの?」
「なんか佐藤先輩とデパートで会って、佐和子さんに失礼な事言ったみたいですね」
「えっ?あぁ、別にもう気にしてないけど……」
「ホントですか?」
「ホントホント。とりあえず中に入りなよ」
 立ち話もなんだったので、中に加納を入れると、加納は後ろから佐和子を抱きしめた。
「良かった……佐和子さんが先輩の毒牙に毒されたかと……」
「毒牙って……私、あの手のタイプすごく苦手なんだけど」
「そうなんですか?会社の女子は先輩の飲みによくついて行ったりしてますよ」
 まぁ、奢ってもらうには丁度いいと思われているのではと思ったが、そこは言わずにいた。
「私は俊也君みたいに誠実な人がいいんだけど」
「佐和子さん!」
 エアー尻尾がこれでもかと振っているのが見える。クスリと笑うと加納は佐和子にキスをした。
 こういう風に普通に恋人同士の事を出来るようにもなった。なんだか恋をしているなと佐和子は実感した。
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