モブ止まりの私がヒロインになる?

まぁ

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ついにこの時が……

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 自分達のペースでいこうと言ったものの、二人共奥手では何もハプニングなど起こらない。
(やっぱ私から攻めなきゃならないのか!でもなぁ……がっついてると思われたくはないし……)
 そこまで肉食ではない。だがどうにも千枝やおしゃべり女子達の「ヤッちまいな」的な声が聞こえて仕方ない。
 意を決してここは大人の余裕を!そう思った時だった。
「僕たちのペースって言っておきながらなんですが、今日はまだ時間ありますかね?」
 それが何を意味するのかわかった。顔面に熱が溜まるのがわかる。佐和子はコクリとうなずき、食事を終えた後にホテルへと向かった。


 翌週月曜日。出社した佐和子を待ち構えていたのはおしゃべり女子達だった。
「工藤さん!週末はちゃんとその先が……」
 言いかけて止まったのは見て想像出来たからだろう。
「あぁ、なんでもないです。良かったですね工藤さん」
 普通にしているつもりでいる佐和子。どこをどう見ても先週と変わりはない。変わりはないはず……なのだが、やはりわかるのだろうか?
 正直久々すぎたとかの問題ではない。まるで処女に戻ったかのように恥じらった。だが加納は優しくしてくれた。それを思い出すだけで恥ずかしくて穴があれば入りたくなるような気分だ。
 それまでのどこか事務的端的だったメッセージも色づいて見えた。
 エッチ……もとい恋愛とはこういう効果をもたらすのだなと佐和子は思った。
 ここまで進めば後はなんの迷いもなかった。一か月の期限最終日には延長した。
 清い交際と言えば聞こえはいいが、ようは順調というわけだ。だが学生や二十代の恋愛とは違う。佐和子はもう三十を超えている。それを踏まえた上でのこれからを考えなくてはいけない時期もまたやって来る。
「いや、正直結婚とかは……」
 などと千枝に言ったが、「甘い!」と一喝される。結局リアルな問題はお互いにちゃんとその意思があるのか。女性の年齢は残酷だ。子供が欲しいなら直ぐにでもと千枝は言う。
「もちろんあんたに問題がなくて向こうにあるかもしれないから、ブライダルチェックは必要だろうけどね」
 先輩の言葉はタメになる。まだまだ先。とはやはり言えないのがアラサー女子の切実な悩みなのだと実感した。
 おそらく今の勢いなら加納は結婚を考えてくれるだろうが、世間様が思う以上にこの議題は深刻なのだ。
「一人で悩んでも仕方ないわよ。本人と話し合いなさい」


 そして後日。お互いの家を行き来するレベルにまで達した時、佐和子は問題を提議する事にした。
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