モブ止まりの私がヒロインになる?

まぁ

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いざ尋常に勝負!

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 待ち合わせより五分以上早く来てしまうのが性分なのだが、それよりも前に加納はいたのだろうか?佐和子を見つけるなり手と、エアー尻尾を振ってきているのが見えた。
「ご、ごめん。もしかして待たせちゃった?」
「いえ、営業先からそのまま直帰だったので、そこのカフェで時間潰していたんですよ」
「それって待たせてるじゃない!ごめん!」
「約束の時間はもう少し先ですし、気にしないで下さい。それよりも行きましょうか」
 スッと手を差し出されたので、佐和子は若干緊張しながらもその手を取った。こうしてスマートに手を出せるとは、出来る男だなと、余計な事を頭で言ってはいたが、それよりも何よりも今日をどう戦うかが佐和子の中を占めている。
(勝負する気満々のアラサーおばさんってなんかイタい気もするが……)
 大人の恋愛をサボっていたツケがまさかこんな形でこようとは。こういうのは相手の流れに任せるべきなのかどうか。それすらも佐和子にはさっぱりだ。
「そういえば今日は雰囲気が違いますね」
「えっ?あぁ……ここに来る前におしゃ……若い子達にやってもらったんだけど、もしかして若ぶってる?」
「いえ!全然かわいいです。なんだか大人っぽいですし」
「いやまぁ……俊也君よりも年上ですからね」
 なんだか余計な事を言った気もしなくもないが、とりあえずおしゃべり女子達のしてくれた事はいい方向に向かっているようで安心した。


 今日は少し大人なフレンチのお店で、薄暗い店内といい、お店の雰囲気といい、まさに大人のデートと言うにふさわしい場所だ。
「佐和子さんここ来た事ありますか?」
「いや全然。一人でこういう店来ても仕方ないしね。そういう俊也君は?」
「僕も初めてで。佐和子さんとデートってなって先輩からどこがいいか聞いただけなので、実際来てみてすごく緊張してます」
 なんだか場違いだったかな?などと言いながら二人はクスクスと笑う。周囲の客層も洗礼された男女みたいな感じだった。実際それなりの値もする場所だが、その分料理もワインも美味しかった。さすがにここは高すぎるので割り勘の方がいいと思っていたが、ドラマさながら、佐和子が手洗いに行っている間に支払いは済ませたようだ。
「なんかこの前に引き続きごめん。ここはとても高いだろうしやっぱ私も少しは……」
「大丈夫ですから。こういうのって男が出すの当たり前じゃないですか?」
「かっこいい事言うけど、若い子は割り勘が普通って聞いた事あるよ」
「そうなんですか?先輩からは女に恥をかかせるなって……」
 なんだか加納の必死な感じが可愛くてついつい笑ってしまった。さて夜はまだまだ長い。これからどうするのか……佐和子は加納の様子を見ていた。
「これからどうしますか?」
「えっ?あぁ……どうしよっか。私こういうの慣れてないんでどうすればいいのか……」
「それじゃあもう一軒行きますか?」
 流れとしてはいい感じではないのか?佐和子は大人デートのセオリー通りになっている事にドキドキしていた。
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