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若い力に圧倒されて

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 今週もなんとか終え、アフターファイブを迎えいつものように帰りはコンビニによってビールを買い、今は死語だとも言われている花金を楽しむ。それがいつもの佐和子なのだが、今日は夕方デートとしゃれこんでいた。
 いつもなら当たり障りのないパンツスタイルで出社するが、今日は別の大きな袋を持ってきており、その中にはデート用の服が入っている。これも最近通販で買ったものだ。早くこれに着替えたいところなのだが、こういう時に限って若いおしゃべり女子達は帰らない。
「あれ?工藤さんが残ってるなんて珍しいですね」
「えっ?あぁ……まぁ……」
 いの一番に帰る佐和子がまだいる事に気が付いたおしゃべり女子が声をかけてきた。面倒な事になった。そう思っていた時だ。
「もしかしてデートですか?」
「ま、まぁ……」
「それって加納さんですよね?」
 佐和子と加納の事は彼女たちの中では周知の事実なのだろう。あれこれ質問されるのは嫌なので、なるべく避けて通りたかったのだが、こう正面きってこられては避けられない。
「いいなぁ!加納さんってわりと優秀な社員さんらしいですよ!すごくおすすめ物件じゃないですか」
「そ、そうなんだ……」
「今からデートって事は、着替えるんですよね?どんな服ですか?」
「もしよかったらお手伝いしますよ!」
 おしゃべり女子は三人おり、三人が代わる代わる声をかけてはあれこれする。
「この服も可愛いですけど、工藤さんくらいだったらもっとセクシーでせめてもいいと思いますけど……」
「この服に合わせるメイクだったら、ピンクベージュがいいですよね」
「髪型もゆるくアップして……」
 頼んでもいないのだが、勝手にあれこれとしてくれるおしゃべり女子三人。佐和子はされるがままの着せ替え人形状態だ。
(若い力って恐ろしい……)
 いい大人が泣きそうになってしまうそうになる。だが彼女達のおかげもあってか、佐和子は大人と若者の間くらいのデート使用のメイクや髪形になった。自分一人ではここまで出来なかっただろう。
「工藤さんいいですよ!これで加納さんも惚れ直しますね!」
「あ、ありがとう……」
「工藤さんって普段クールだから、少し近寄り難かったけど、こうして少しは仲良くしてくれて嬉しいです」
 仲良くしたというよりは一方的なのだが、そんなにも近寄るなオーラでも出していただろうかと思った。しかし今回の事を機に彼女達を見る目が少し変わりそうだ。
「ありがとう。自分一人じゃここまではよくならなかったと思うし」
「お礼なんていらないですよ。それよりも楽しんできてください」
「後はどうなったか教えてくれたら嬉しいです」
 聞きたいのはその部分なのだろう。とりあえず退社して待ち合わせの駅のロッカーに荷物を置いて加納を待つことにした。
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