モブ止まりの私がヒロインになる?

まぁ

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まさかの展開に絶句

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 午後二時を過ぎた頃、加納の務める取引先の会社が来光した。本来ならば若い女子社員がお茶出しをするのだが、生憎と今日ばかりはどの会議室も来光者が多いようで、佐和子自身がお茶出し対応をしなくてはいけないようだ。
「あの、工藤さんがお茶を出す所って、〇〇商事ですよね」
「えぇ。誰も手が出せないみたいだから」
「確かそこは加納さんがいますよね」
 あぁ、言わんとする事はわかる。というよりも聞きたいのだろう。だがここで墓穴を掘るわけにもいかない。佐和子はあえて私情を挟まぬよう返す。
「一応経理担当しているのが私なので仕方ないんです。それじゃ私はお茶出して来ますね」
 その場をそそくさと出た佐和子は、加納達のいる会議室に向かい、扉を二回ノックして入る。
「失礼します」
 入ったと同時に加納の目が佐和子に向かったのに気が付いたが、無視だ無視。今は仕事中。相手側のお偉いさんからお茶をお出しする。そして加納に。見ないようにしていてもなんだか圧がかかっているのがわかる。チラリとつい見てしまったが、加納の目はキラキラ輝いている。
(ご主人様を見つけた犬か!)
 さっさと配膳し終え部屋を後にした佐和子は、あのキラキラした目が忘れられない。まるであれは犬だ。というより仕事しろ!と再三叫びたくなる。
「なんであんなに素直そうな子が私など?てかもっとかわいい子いるでしょ」
 やっぱり人の心はわからない。佐和子のようにある程度の歳がいった女子は若い子からしたら金蔓だ。そこそこの会社に勤めている加納が金に困っている様にも見えない。
「あれかな?ママ活?いやいや……」
 確かに萎れた旦那に飽きた女子は若い男と不倫する。という人物を知らなくもないが、佐和子にはまったく当てはまらない。そんな謎を悶々と抱えつつ仕事をしていると、ちょうど会議も終わったようなので、お茶の回収に向かう事にした。


 会議室にはまだ加納とその上司がおり、営業達と私情の会話をしていた。
「ところで今日はこれからお時間ありますか?」
 そう仕掛けたのは営業の方だ。相手も「空いてますよ」と言いながら、加納に是非を問う。もちろん断れないので「わかりました」と言っていたが、次の瞬間営業が驚くべき事を口にした。
「そうだ。この商談の経理まとめてくれたの工藤さんだし、工藤さんもどう?」
「はい?」
「やっぱ花はないと寂しいしね」
「それ、セクハラですよ」
「固い事言わないでよ。どうかな?」
 加納には用事があると言って断ったが、さすがに上司の誘いを断るガッツはない。加納の目も「来て来て!」と言わんばかりだ。仕方なく佐和子は承諾する事にした。
「わかりました。けど用事あるのでそんなに長居出来ませんが」
「大丈夫大丈夫!それじゃ場所と時間はあとでメール送りますので」
 予想だにしない展開に、まっすぐ帰宅計画がとん挫。それだけでなく二日連続加納と食事という展開。果たしてどうなる事やら。
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