モブ止まりの私がヒロインになる?

まぁ

文字の大きさ
上 下
4 / 30

大人の色気

しおりを挟む
「ホントあんたは気が向いたら時にしか連絡寄越さないんだから!」
 小さな画面越しからけたたましく言うのは、地元の親友江口千枝えぐちちえである。農家に嫁ぎ現在は二児の母。地元にいた時は細っそりしていた体も、育児ストレスと子の残した物+自分の食事分でややぽっちゃりになってる。
「ごめんごめん。特に用事なかったからさ」
「全く!それで?ヘルプとは何?お金以外なら相談に乗る!」
「えーっと実は……」
 佐和子からのヘルプメッセージで即テレビ電話をしてきた千枝に、佐和子は本日あった出来事を話す。
「ちょっと!何面白そうな事になってるの?年下男子?しかも全方位に枯れていたあんたに告白って!!」
 案の定大興奮な千枝。もう恋する事もない千枝からしたら、他人の恋愛話は恰好の餌食だ。
「そうなのよ!こんな枯れ果てたおばさんに告白って、罰ゲームじゃないのかって思ってさ……それにお付き合いって何をすればいいのやら?」
「うーん……田舎のこっちと違って、そっちは遊ぶ所沢山あるじゃない。映画館なりランドなりし行けばいいじゃない」
「やだ!面倒くさい。それに何を着ていけばいいのかもさっぱり!」
 このまったりのんびり日常に慣れてしまったら、イレギュラーな日常が面倒で仕方ない。千枝の言う映画館もレンタルされるまで待てばいい。ランドは高い。人が多いで拒否したいところだ。
「あんた何もかもめんどくさがってたら何も始まりもしないよ」
「始まらなくていいよ」
「じゃあなんで付き合う事に?」
「押し?後は一ヶ月限定と言われたから?」
 正確には一ヶ月付き合ってみてのお試しなのだが、よくよく考えたらそれすらも面倒だと思い始めた。
「とりあえず……その腐った日常をチャンスに変えなよ」
「私このまま余生を過ごしたい」
「ホント腐ってるわ……いい?あんたにとっての非日常も、慣れてみれば良くなるし、それに年下と付き合えるチャンスなんてこの歳になったらそうないじゃない。楽しみなさいよ」
 その年下なのが問題ではないかとも思った。結局浮気の大半は若い子にシフトする。
「今から浮気を気にしても仕方ないじゃない。それに……若い娘になくて大人女子にあるものは何?」
「金?」
「おバカ!アラサー越えた女子にあるものは色気よ!若い乳臭い娘には絶対ないものじゃない!落ち着いた大人女子の色気を出しなさい」
 大人の色気と言われ、おぉ!っとはなるが、果たしてそのようなものが出るのか。確かにテレビで観るアラサー越えた女子は色気があるが、あくまでも芸能人だからだ。
「色気ってどうやったら出るの?」
「まずは形からでしよ。色気満載の下着用意しなさい」
「でも今時の子って原色とかセクシー系は好きじゃないって聞いた気も……」
「はぁ……逆に三十越えた女がピンクやらフリル着てる方が痛いでしょ。ここは適材適所よ」
 成る程とうなずきつつ、千枝からはあれこれと伝授してもらった。これを実行する為に……まずは通販サイトで下着を買う事から始めた佐和子だった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界で皇太子妃になりましたが、何か?

黒豆ぷりん
恋愛
朝、新聞に載っていた超イケメンな青年の写真と目があってしまった。「金髪碧眼の超絶イケメン彼氏がほしい!」と思ったら、その彼に異世界へと誘われてしまった私。 なんと、皇太子殿下の婚約者となってしまった! 知らず知らずのうちに異世界ならではの力を獲得していく私.... 現実世界と異世界の間で揺れる気持ちを共感していただければ幸いです。 この小説は、カクヨム様、小説家になろう様にも投稿しています。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

王宮に薬を届けに行ったなら

佐倉ミズキ
恋愛
王宮で薬師をしているラナは、上司の言いつけに従い王子殿下のカザヤに薬を届けに行った。 カザヤは生まれつき体が弱く、臥せっていることが多い。 この日もいつも通り、カザヤに薬を届けに行ったラナだが仕事終わりに届け忘れがあったことに気が付いた。 慌ててカザヤの部屋へ行くと、そこで目にしたものは……。 弱々しく臥せっているカザヤがベッドから起き上がり、元気に動き回っていたのだ。 「俺の秘密を知ったのだから部屋から出すわけにはいかない」 驚くラナに、カザヤは不敵な笑みを浮かべた。 「今日、国王が崩御する。だからお前を部屋から出すわけにはいかない」

貴族の爵位って面倒ね。

しゃーりん
恋愛
ホリーは公爵令嬢だった母と男爵令息だった父との間に生まれた男爵令嬢。 両親はとても仲が良くて弟も可愛くて、とても幸せだった。 だけど、母の運命を変えた学園に入学する歳になって…… 覚悟してたけど、男爵令嬢って私だけじゃないのにどうして? 理不尽な嫌がらせに助けてくれる人もいないの? ホリーが嫌がらせされる原因は母の元婚約者の息子の指示で… 嫌がらせがきっかけで自国の貴族との縁が難しくなったホリーが隣国の貴族と幸せになるお話です。

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

白い結婚は無理でした(涙)

詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。 明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。 白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。 小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。 現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。 どうぞよろしくお願いいたします。

婚約破棄の甘さ〜一晩の過ちを見逃さない王子様〜

岡暁舟
恋愛
それはちょっとした遊びでした

【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件

三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。 ※アルファポリスのみの公開です。

処理中です...