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第六話
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まさかの出来事であまり頭が回らない。絵梨と共に王の間を後にした後の足取りはあやふやだ。
絵梨がこの国の真の御使い。そして初めに見た相手が星永さんで、私は星永さんの事が好きになって。絵梨はこのまま星永さんに抱かれる事になる。ぐちゃぐちゃとした頭の中で絵梨が私に声をかけてきた。
「ねぇ、一体どうしたの?」
「ああ……なんかこれからについてを話さなくていけないみたい」
「そう?でもなんかあの女の子怒ってたようにもみえたけど。それに久美子の様子もなんだか変だし……」
「き、気のせい気のせい!ささ、今日はここで休むよう言われてるから、もう休んじゃおう」
「そうだね。久美子は?」
「私もここに泊めてもらうよう言うから、何かあったら言って」
「うん」
幸い部屋をわけてもらうように言っていたのでよかった。どうしてもこれからの事を一人で考えたい。
星永さんへの気持ちがわかったまではよかったが、不測の事態によって星永さんは絵梨を抱かなくてはいけない。絵梨もそれを望んでる。そして何より、絵梨はこの国の御使い。きっと野良の御使いでもある私よりも言葉も強いし希望も通るだろう。
ならば私は一体何者なのか?
「はぁ……こんな事なら気持ちを自覚するんじゃなかったよ。それに私のお役目御免ならもう帰りたい」
とは言ったが、本当にこのまま帰っていいのだろうか?眠ろうとしても頭が冴える。
気分を変えるために私は部屋を出た。
「はぁ……あれから星永さん。炎珠と何話したのかな?というより私も炎珠と話しておいた方がいいのでは?」
この紫水殿にある庭のような場所で風に当たりながらあれこれと考えた。とりあえずもう少ししたら炎珠の元へ行こう。どうせこの事態なら眠れないだろう。
「久美子」
「せ、星永さん?」
声をかけられ振り返ると、そこには星永さんがいた。
「もう帰ったのかと思いました」
「そうしなくてはいけないのだろうが、主を残したままだったので探した」
「私、今日はここに泊まるって伝えたんですが……」
「行き違いになったかもしれないな。今日はここにいるのか?」
「はい。絵梨の事も……あぁ、さっきの女の子。この国の御使いの子ですよ」
「その事だが……」
「確かこの国の?それとも御使い共通なのかな?一番初めに見た男性が抱かなくてはいけないんですよね?つまり絵梨の事を抱かなくちゃ……」
言いかけて目から一気に涙が溢れ流れた事に気が付く。
絵梨がこの国の真の御使い。そして初めに見た相手が星永さんで、私は星永さんの事が好きになって。絵梨はこのまま星永さんに抱かれる事になる。ぐちゃぐちゃとした頭の中で絵梨が私に声をかけてきた。
「ねぇ、一体どうしたの?」
「ああ……なんかこれからについてを話さなくていけないみたい」
「そう?でもなんかあの女の子怒ってたようにもみえたけど。それに久美子の様子もなんだか変だし……」
「き、気のせい気のせい!ささ、今日はここで休むよう言われてるから、もう休んじゃおう」
「そうだね。久美子は?」
「私もここに泊めてもらうよう言うから、何かあったら言って」
「うん」
幸い部屋をわけてもらうように言っていたのでよかった。どうしてもこれからの事を一人で考えたい。
星永さんへの気持ちがわかったまではよかったが、不測の事態によって星永さんは絵梨を抱かなくてはいけない。絵梨もそれを望んでる。そして何より、絵梨はこの国の御使い。きっと野良の御使いでもある私よりも言葉も強いし希望も通るだろう。
ならば私は一体何者なのか?
「はぁ……こんな事なら気持ちを自覚するんじゃなかったよ。それに私のお役目御免ならもう帰りたい」
とは言ったが、本当にこのまま帰っていいのだろうか?眠ろうとしても頭が冴える。
気分を変えるために私は部屋を出た。
「はぁ……あれから星永さん。炎珠と何話したのかな?というより私も炎珠と話しておいた方がいいのでは?」
この紫水殿にある庭のような場所で風に当たりながらあれこれと考えた。とりあえずもう少ししたら炎珠の元へ行こう。どうせこの事態なら眠れないだろう。
「久美子」
「せ、星永さん?」
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「もう帰ったのかと思いました」
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「私、今日はここに泊まるって伝えたんですが……」
「行き違いになったかもしれないな。今日はここにいるのか?」
「はい。絵梨の事も……あぁ、さっきの女の子。この国の御使いの子ですよ」
「その事だが……」
「確かこの国の?それとも御使い共通なのかな?一番初めに見た男性が抱かなくてはいけないんですよね?つまり絵梨の事を抱かなくちゃ……」
言いかけて目から一気に涙が溢れ流れた事に気が付く。
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