異世界!王道!!

まぁ

文字の大きさ
上 下
33 / 44
第六話

3

しおりを挟む
「久美子。娘は何と申しておる」
「概ねの理解と納得はしてくれたようで……」
 少女の事も炎珠に通訳して話す。私の時のように手間がないので炎珠もやりやすそうだ。
「ふむ。ならばその娘に合う者を探すとするか」
 一体こういう時の男性は何処からどうやって探しているのか。おそらく下手な男の人ではないだろうから安心は出来るはずだ。
「あの……私は絵梨です。あなたは?」
「私は久美子。よろしくね」
 少なくとも話の通じる人物がいて安心したのだろう。絵梨はニコリと微笑む。
「い、いけません!今は特に!」
 外が何やら騒がしい。すると女官の制止を振り切り星永さんがやって来た。
「久美子。やたらと遅いが何かあったのか?」
「あっ……」
 その声を漏らしたのは私と炎珠の両方だった。
「星永!絶対に来るなと申したはずだ!何故来た!他の時ならばまだ目は瞑った。だが今日だけは駄目だったのに!主が久美子を想うならば!」
 これまでにないほどの炎珠の怒りに、星永さんは眉をしかめた。だがその怒りの意味を私も知っている。
 あちら・・・の世界での事はさておき、この世界、この国の祈祷場で姿を現した瞬間きら御使いは男性と会ってはいけない。
 初めて会う男性は御使いを抱くのだから。
 スッと肝が冷えた。前向きになろうと思った矢先。星永さんは絵梨を抱かなくてはいけない。心臓が握り締められるように痛い。
「どういう事だ?炎珠」
「その娘。その娘こそが我が国の御使いじゃ。主がここに来なければややこしい事にはならなかった。言うてる意味は理解出来るじゃろ?」
 事を理解した星永さんは、眉をしかめた。だが恐れていた自体はもう一つ。
「ねぇ、初めて会う男性に抱かれるのよね?」
「えっ?」
「私……あの人なら大丈夫」
 先程と違い、絵梨の目はキラキラと輝いてる。
「久美子。その娘を連れて席を外せ。我と星永だけにしてくれぬか?」
「う、うん……」
 私は絵梨を連れて部屋を出た。
 絵梨はどこか嬉しそうだ。だが私の心は……
 これから星永さんは絵梨を抱かなくてはいけない。これは必然だ。それが耐えられない。辛い。苦しい。そう思った時にハッとした。
(私……とっくに星永さんの事好きだったんだ)


「さて、我はあれ程念押ししたのじゃがな」
「事情は理解している」
「主は久美子以外の女を抱くのじゃ。これまでの遊びであるならばいい。だが主の心はいかがか?」
「私は……」
 星永と炎珠の二人になったところで行われた会話。炎珠の問に出す星永の答えはいかに……
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

森でオッサンに拾って貰いました。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
アパートの火事から逃げ出そうとして気がついたらパジャマで森にいた26歳のOLと、拾ってくれた40近く見える髭面のマッチョなオッサン(実は31歳)がラブラブするお話。ちと長めですが前後編で終わります。 ムーンライト、エブリスタにも掲載しております。

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

ドSでキュートな後輩においしくいただかれちゃいました!?

春音優月
恋愛
いつも失敗ばかりの美優は、少し前まで同じ部署だった四つ年下のドSな後輩のことが苦手だった。いつも辛辣なことばかり言われるし、なんだか完璧過ぎて隙がないし、後輩なのに美優よりも早く出世しそうだったから。 しかし、そんなドSな後輩が美優の仕事を手伝うために自宅にくることになり、さらにはずっと好きだったと告白されて———。 美優は彼のことを恋愛対象として見たことは一度もなかったはずなのに、意外とキュートな一面のある後輩になんだか絆されてしまって……? 2021.08.13

明智さんちの旦那さんたちR

明智 颯茄
恋愛
 あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。  奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。  ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。  *BL描写あり  毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

束縛婚

水無瀬雨音
恋愛
幼なじみの優しい伯爵子息、ウィルフレッドと婚約している男爵令嬢ベルティーユは、結婚を控え幸せだった。ところが社交界デビューの日、ウィルフレッドをライバル視している辺境伯のオースティンに出会う。翌日ベルティーユの屋敷を訪れたオースティンは、彼女を手に入れようと画策し……。 清白妙様、砂月美乃様の「最愛アンソロ」に参加しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

処理中です...