異世界!王道!!

まぁ

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第五話

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「女の色香はその品の作り。特に手に出るのよ。そこを意識して」
「はい!」
「声は抑えて」
 蘭姉さんによる花嫁修業は、日本で言う家事やお手伝いなんかの類ではなく、女とはどうあるべきかが主な感じがする。
 こうしてやってみると、女を意識してみるのは非常に難しい。
「休憩にしましょう。続きはその後で」
「はぁ……やっと休憩」
「このくらいで疲れているようでは星永様に恥じぬ嫁とはなれませんよ」
「はぁい……」
 蘭姉さんがお茶を煎れてくれる。おそらく高い茶葉。そしてお茶請けに饅頭を出してくれた。こちらも高価なものだろう。
「ところで久美子は星永様に抱かれているの?」
 その質問に口に含んでいたお茶を吹き出しそうになった。
「な、何を急に……」
「いや、単純な興味よ」
「一応異界から来たって事で、言葉もわからなかったものもあって、一度だけ抱かれました」
「あらっ。でも不思議な話ね。抱かれて言葉がわかるって」
「ホントそう思います」
 何故御使いは抱かれて言葉がわかるようになったのかは謎だ。そもそも他の国にもいると言われる御使いはどうなのだろうか?
「まぁ、噂の程は知らないけど、御使いを抱いた殿方もまた出世し世に名を残すとかどうとか」
「へぇ……」
 前に炎珠がそれらしい事を言っていた気もする。謎設定だが、深く考えても答えは出ないだろうし、まるっとまとめて縁起物にしておいたほうがいい。

「それで?その一回だけなの?」
「まぁ、まだ夫婦でもなければお互いを知ってって話になったので、その機会もなく」
「勿体ない!」
 驚く蘭姉さんは、炎珠と似たような事を私に言った。
「あれだけの方なら普通はいつでも抱かれたいと思うものよ。私がそう言うのだから、店の子が聞いたらもっとはやし立てるわよ」
「でもきっかけもないし、好きでない人とってやっぱ抵抗が……」
「そんなに嫌なの?」
「嫌ってわけでは……うーん」
「なら久美子自身が星永様を知って、自分から星永様を誘わないと。きっとあちらも待ってるわ」
 嫌いではない。何か足りないとは思うが、蘭姉さんの後押しに、茜華や炎珠の言葉が効いたのか、もう少し星永さんとの距離を縮めようかとも思った。今でも十分近い気もするが……
「そうですね。私からももっと積極的になってみようかな」
「なら今度からそちらのご指導もしますわね」
「えっと……お手柔らかに……」
 前向きになろうと決めた矢先。まさか紫水殿ではとんでもない事になっているとは、この時全く予想出来なかった。
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