異世界！王道！！

第四話

5

「そうか。なら久美子の意見を採用しよう。まあ、呑みたくなったら呑んでもいいぞ」
「あ、はい。ありがとうございます」
　大人バージョンだと気にもしなかったが、未成年はお酒を受け入れる体質ではないんだなと昨日の時点で思った。それにこういう地酒っぽいものはカクテル、チューハイなどの甘味系酒に慣れた現代人にはなかなか慣れないものだ。
「あれ？でも昨日私にお酒呑ませましたよね？」
「あぁ。あれは酒ではあるが普通の酒ではない」
「普通のじゃない？」
「あれは普通の酒に少量の媚薬が混ざったものだ」
　媚薬入りのお酒！そんなありきたりなアイテムが存在して、まさか自分に使われようとは。驚きで言葉が出ない。
「卑怯な手だとはわかっていたのだが、破瓜の痛みは相当のものと聞いた事があるからな。それを緩和出来たらと思った。すまなかったな」
「あ、はい。成程……それだったら」
　いやよくはないが、一応星永さんなりに気を使ってくれたのだ。確かに痛みはさほど感じなかった気もする。だが星永さんの口から昨夜の事が出たので、少々熱が上がったかのように感じられ恥ずかしくなった。
「あ、あの、どうして私をここに呼んだんですか？晩酌のお供……てわけではないですよね？」
「日中は私が不在だ。少しでも時間が取れたらと思っていたが、寝るときくらいしかないのでな。心配するな。同意もないのに、抱いたりはせぬ」
「なら……大丈夫です」
　二度目は回避。ホッと安堵しつつも、どこかがっくりした気もした。けど私の言葉を聞いてくれて時間も作ってくれた事はすごく嬉しい。いい男はこういう気配りが出来るのだな。
「あの。明日から私、何をしたらいいんですか？」
「何をとは？」
「いや、ここでただで泊めてもらうのもよくないし、掃除とかのお手伝いだったらしますけど」
「それは侍女達に任せておけばよい。主はここに嫁入り見習いで来たようなものだ。何もしなくてもいい」
　それだと時間がなかなか経たない。それに嫁入り見習いとはまた。だがこの世界で何をしたいのか？大きな行事がない限りは特にする事はない。
「それじゃあ花嫁修業でもしてます」
「ははは。久美子は面白いな」
　嫁入り言ったのは星永さんなのに、花嫁修業で面白いなんて。だが初めこそ堅物な人かとも思ったが、こうして見ると表情豊かな人だ。