異世界!王道!!

まぁ

文字の大きさ
上 下
8 / 44
第二話

2

しおりを挟む
「ここに召喚された御使いは抱かれて言語習得。男子禁制なのにいる少年……まさか、もし私が祈祷場で召喚されてたらあの少年に抱かれてたと?」
 流石にまずい。見た目こそ同じ歳だが、ほとんど年齢詐欺だ。心の倫理が許さない。
 一歩間違えたら犯罪だった事を考えたら、召喚された場所があの草原でよかったかもしれない。
 ふとイケメン様に助けてもらったときの光景を思い返した。
「世の中のヒロイン様は、ああやって王子様に助けられて、ハッピーエンドを迎えるのだろうなぁ……」
 自分は残念ながらヒロインではない。お世辞にも女優並、アイドル並に可愛いとは思えない。どこにでもいる平凡な顔。言ってしまえばモブだ。
「まっ、結ばれる云々は置いといて、言葉が通じたなら名前聞けたんだろうな。ちゃんとお礼としたかったなぁ……」
 今後どうなるかも、また会えるかもわからない。あまりにファンタジーが自分の身に降りかかりすぎたのでかなり疲れた。私は用意された寝台で寝る事にした。
 ちなみにここに来て見知らぬ男に抱かれた瀧子のその後、その男の人と結ばれるわけでなく、生涯をこの紫水殿の巫女として過ごしたらしい。その時の男の人は、この国での名誉ある役職に就いたのだとか。


 翌朝になり、それまでの事が夢だったのかと思ったが、現実だった。
「○○×☆△」
 扉のノックと共に側使い、いわゆる女官さんが入ってきた。タイミングが漫画並にいい。
「えーっと、おはようございます?」
 おそらく通じてはいないが、女官に朝の挨拶をする。
 すると女官は何か言って私にお茶のようなものを差し出した。飲めというのだろう。丁度喉も乾いていたので有り難くいただく、が……
「ゔえっ!何これ!まっず!」
 お茶というには渋すぎる。何かの漢方なのか、とにかく不味すぎて全部は飲めない。だがこれが私にとって希望の光となるとは思いもしなかった。
 女官に服を着替えるよう(それっぽく聞こえる)言われたので、服を着替えてしばらくたった頃だ。
「それでは朝食あさげの用意を致します」
「ん?ちょっと待って!」
「は、はい……何でしょうか?」
 言葉がわかる。女官を私は呼び止めた。日本語で。だが女官は特に気にするでもなく、何故呼び止めたのかという顔をしている。
「言葉通じてる。さっきまで話せなかったのに!」
「炎珠様より貴女様へ呑ませるようにと言われましたので、貴女様に薬を呑んで頂きました」
 つまり先程のお茶のようなものは言葉が通じるようになる薬。某猫型ロボットの道具のようだ。
「私は朝食あさげの準備をしてよろしいでしょうか?」
「あっ、ごめんなさい。よろしくお願いします」
 言葉が通じるとはなんとも嬉しい事だ。抱かれる回避など出来てありがたい。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

森でオッサンに拾って貰いました。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
アパートの火事から逃げ出そうとして気がついたらパジャマで森にいた26歳のOLと、拾ってくれた40近く見える髭面のマッチョなオッサン(実は31歳)がラブラブするお話。ちと長めですが前後編で終わります。 ムーンライト、エブリスタにも掲載しております。

束縛婚

水無瀬雨音
恋愛
幼なじみの優しい伯爵子息、ウィルフレッドと婚約している男爵令嬢ベルティーユは、結婚を控え幸せだった。ところが社交界デビューの日、ウィルフレッドをライバル視している辺境伯のオースティンに出会う。翌日ベルティーユの屋敷を訪れたオースティンは、彼女を手に入れようと画策し……。 清白妙様、砂月美乃様の「最愛アンソロ」に参加しています。

片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく

おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。 そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。 夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。 そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。 全4話です。

死にたがりの悪役令嬢

わたちょ
恋愛
ある日、突然前世の記憶を思い出したトレーフルブランはここが前世で彼女が好きだったゲームの中の世界であることを思い出した。それと同時に彼女がゲームの悪役キャラであることにも気付き、この先の未来も知った彼女は ただ死を望んだ

私は5歳で4人の許嫁になりました【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
 ナターシャは公爵家の令嬢として産まれ、5歳の誕生日に、顔も名前も知らない、爵位も不明な男の許嫁にさせられた。  それからというものの、公爵令嬢として恥ずかしくないように育てられる。  14歳になった頃、お行儀見習いと称し、王宮に上がる事になったナターシャは、そこで4人の皇子と出会う。 皇太子リュカリオン【リュカ】、第二皇子トーマス、第三皇子タイタス、第四皇子コリン。 この4人の誰かと結婚をする事になったナターシャは誰と結婚するのか………。 ※Hシーンは終盤しかありません。 ※この話は4部作で予定しています。 【私が欲しいのはこの皇子】 【誰が叔父様の側室になんてなるもんか!】 【放浪の花嫁】 本編は99話迄です。 番外編1話アリ。 ※全ての話を公開後、【私を奪いに来るんじゃない!】を一気公開する予定です。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

黒の神官と夜のお世話役

苺野 あん
恋愛
辺境の神殿で雑用係として慎ましく暮らしていたアンジェリアは、王都からやって来る上級神官の夜のお世話役に任命されてしまう。それも黒の神官という異名を持ち、様々な悪い噂に包まれた恐ろしい相手だ。ところが実際に現れたのは、アンジェリアの想像とは違っていて……。※完結しました

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

処理中です...