ようこそあやかし屋敷

まぁ

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 この時代では行方不明とされた風代神社に納められている守り石。何故それを清が持っているのか謎で仕方なかった。
「千庄殿が死去する前に、彼が僕にこれを預けたんだ。この先のいつ神主が現れるかわからないって言ってね。だからもし神主が現れたらこれをその神主に渡して、もし現れなかったら夏菜さんに渡してくれって言われたんだ」
 まさかこの時代で見つからないからくりがこんな形であるとは思いもしなかった。だがこれで全てが整い、全てが安定した磁場を生む事になる。


 そして迎えた盆祭りの当日。地区の子供達から大人まで、風代神社に集まり一夜を楽しむ。子供達の目当ては出店なのだろうが、この日は先祖を送る日だ。
 夏菜も浴衣を着て今日を楽しむが、他の人達と楽しみ方は少し違う。
「いやぁ、この日にわざわざ来るようなあやかしは僕達だけかもしれないですね。仁」
「俺はやる事が沢山あるんだけどな……」
 帰ったら白様に仕事を押し付けられるとぶつぶつ言っていた。京と仁もこの祭りに参加していている。もちろん他の人にあやかし達の姿は見えない。
「でも私は二人に会えてよかったです」
「そうだな。あの時代からだからお前に会うのは本当に久しぶりだ」
「これからもみなさんに会えるのでしょうか?」
「まぁ、そう頻繁には無理かもしれませんが、夏菜さんが僕達を忘れなければ……」
 忘れる事はないだろう。短いながらも、とても楽しく、温かな日々を送った過去の時代。
「なっちゃーん!」
 こまともえの二人は盆踊りの中に混じって踊っている。そんな二人を見て夏菜は微笑ましくなった。
「昔のような栄華は戻らないかもしれない。だが一人でもここを忘れない限り、この土地は安泰だろうな」
「そうですね。今はあの二人がこの場所を守ってくれていますし」
 この変わらぬ風景がいつまでも続くよう切に願う。
 そしてこれは夏菜が体験したひと夏の想いでの中でも一生忘れる事がない事だ。この場所を離れない限りいつでもみんなに会える。
 いつまでもこの場所がありますように。
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