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何一つ大正時代から何一つ変わらない風景。だが神社から出た街並みは全然様変わりしている。ここが自分の生まれ育った時代。そして世界なのだと改めて実感した。
まさに夢のような出来事。あれは本当にあった事なのかと思ってしまった。
「ん?」
なんだかポケットに違和感があったので手でポケットを探ると、五個の丸い石が出て来た。今までの事は夢ではなく真実だったのだと思った。夏菜がすべき事はこの五つの玉を五芒星と重なる場所に置く事だ。
だがその前にいろいろと確認したい事もあったので、一旦自宅に戻る事にした。
久々に会う両親はさぞ驚くだろう。そう思っていたのだが、両親は「何言ってるの?さっきまでいたじゃない」と言っていたので、日付を確認した。日付は夏菜が消えたその日のままだ。進んでいるのではなく止まっていただけなのか……これがタイムスリップの摩訶不思議な所だ。
しかしこの時代に戻り、ようやくスマホが役立つ。この周辺の場所になにがあるのかは知っているが、ちゃんと場所の確認などをしたくて地図アプリを開いた。
「ここと、こことここね……」
この時代に戻って来た自分がすべき事を成す為、夏菜は今一度家を飛び出した。
まず一つ目の石を置きにその場所へと向かった時、夏菜は目を丸くした。
「こんなのなかったよね……?」
そこは道路沿いにある小さな社。元々何もない場所だったのだが、小さな社と共に地蔵が一体ある。どうしてなのか疑問が浮かんだが、奉納出来る場所があったのは有難かった。
夏菜は石をその社の中にそっと置いた。
そして次の場所、また次の場所と石を置こうとした場所には必ず社がある。地蔵はある場所とない場所があったが、その社はこうなる事をわかって建てられたのかと思ってしまった。
最後に清のいた川の辺りへと向かった夏菜。そこで目にしたのは、決して広くはないが、池があり、側に社と地蔵があったのだ。
「えっ?えっ?ここって道路だったよね?」
道路はこの池の側を通っている。まさか本当に未来の一部を変えてくれたのだろうか。そうであれば白には感謝しなくてはいけない。
「とりあえず石を奉納しておこう」
最後の石を奉納し終えた夏菜は、その社に向かって手を合わせた。
「どうかこれでこの地が安定しますように。それと……もし清がこの時代にいたなら会いたいな」
彼は今どうしているだろうか?会ってみたい気もしたが、もし悪鬼羅刹となって他のあやかしに倒されていたりしたらなどと考えた。その時だった。
「なっちゃんの願いはかなうよ」
「えっ?」
「だってなっちゃんのおかげで清の心は救われたんだから」
突然男女の声が聞こえた夏菜は周囲を見回した。すると狐の耳と尻尾をつけた夏菜と同じくらいの年頃の少年少女がそこにいた。
まさに夢のような出来事。あれは本当にあった事なのかと思ってしまった。
「ん?」
なんだかポケットに違和感があったので手でポケットを探ると、五個の丸い石が出て来た。今までの事は夢ではなく真実だったのだと思った。夏菜がすべき事はこの五つの玉を五芒星と重なる場所に置く事だ。
だがその前にいろいろと確認したい事もあったので、一旦自宅に戻る事にした。
久々に会う両親はさぞ驚くだろう。そう思っていたのだが、両親は「何言ってるの?さっきまでいたじゃない」と言っていたので、日付を確認した。日付は夏菜が消えたその日のままだ。進んでいるのではなく止まっていただけなのか……これがタイムスリップの摩訶不思議な所だ。
しかしこの時代に戻り、ようやくスマホが役立つ。この周辺の場所になにがあるのかは知っているが、ちゃんと場所の確認などをしたくて地図アプリを開いた。
「ここと、こことここね……」
この時代に戻って来た自分がすべき事を成す為、夏菜は今一度家を飛び出した。
まず一つ目の石を置きにその場所へと向かった時、夏菜は目を丸くした。
「こんなのなかったよね……?」
そこは道路沿いにある小さな社。元々何もない場所だったのだが、小さな社と共に地蔵が一体ある。どうしてなのか疑問が浮かんだが、奉納出来る場所があったのは有難かった。
夏菜は石をその社の中にそっと置いた。
そして次の場所、また次の場所と石を置こうとした場所には必ず社がある。地蔵はある場所とない場所があったが、その社はこうなる事をわかって建てられたのかと思ってしまった。
最後に清のいた川の辺りへと向かった夏菜。そこで目にしたのは、決して広くはないが、池があり、側に社と地蔵があったのだ。
「えっ?えっ?ここって道路だったよね?」
道路はこの池の側を通っている。まさか本当に未来の一部を変えてくれたのだろうか。そうであれば白には感謝しなくてはいけない。
「とりあえず石を奉納しておこう」
最後の石を奉納し終えた夏菜は、その社に向かって手を合わせた。
「どうかこれでこの地が安定しますように。それと……もし清がこの時代にいたなら会いたいな」
彼は今どうしているだろうか?会ってみたい気もしたが、もし悪鬼羅刹となって他のあやかしに倒されていたりしたらなどと考えた。その時だった。
「なっちゃんの願いはかなうよ」
「えっ?」
「だってなっちゃんのおかげで清の心は救われたんだから」
突然男女の声が聞こえた夏菜は周囲を見回した。すると狐の耳と尻尾をつけた夏菜と同じくらいの年頃の少年少女がそこにいた。
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