ようこそあやかし屋敷

まぁ

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 せがむ双子に清もたじたじだった。清は言動こそは不吉な事を言うが、見た目はこまやもえよりも少し年上くらいの子供だ。清はそんな双子に折れたのか、「いいよ、遊ぼう」と言って双子と遊ぶ。
「な、なんか……大丈夫なのかな?」
「まぁ、何かあればアタシも京ちゃんもいるから心配はないでしょうけど……でも……」
「う、うん……」
 なんだろう。こうしてこまやもえと遊ぶ清は、悪鬼羅刹には見えない。どこにでもいる子供。というよりはあやかしなのだが、何も悪い事をするような感じには見えなかった。
「ねぇみけさん。私が清の為に何かしてあげたいのは本当だけど、それによって未来を変える事はいけない事かな?」
「な、何を言ってるの?なっちゃん……」
「おそらく川をこの時代のように残す事は出来ないかもしれないけど、池くらいなら残せないかな?私の住んでいる時代には川も池もなく、そこは普通の道路だった気もするけど、せめてそれくらいはしてあげたい」
「うーん……正直言って未来を変える事自体、御法度なのよ。それをする場合には何らかの対価を支払わないといけないのよ」
 何らかの対価は何かわからない。だがそれでも何か未来を少しだけでいい。清にとっても、五芒星を守護したあやかし達が住むのにちょうどいいものがあればいいと思った。
「こればかりはねぇ……アタシ達の一存じゃ何も出来ないわ」
「そっか……なら稲荷の神様に聞いてみよう」
 未来にある出来事をこの時代で話、未来を変える行為はいけない事だと夏菜は思っている。だが自然の一部を変えるのは罪にも歴史の改変にも値しないのではないか。それが夏菜の考えるパラドクスの御法度だ。


 結局こまともえが清と遊んだだけで、何の解決も出来ないまま帰宅した夏菜達。ちょうど帰ると仁もいたので、今日あった事を話す。
「成程な……俺の苦労そっちの気で川遊びをしていたと」
「問題はそこじゃないですよ仁。ですが仁も苦労したのですよね?」
 そう千庄に尋ねられた仁は「まぁな」と言って頭をかいた。
 聞けば龍神池に住む龍神は大層気難しい性格なのだそうで、機嫌をとるのに大変だったそうだ。
「ちなみにどうやって機嫌をとったんですか?」
「酒だ。やつら酒が好きらしくてな。人間界にある龍神系の神社に奉納された供物でも、酒しか選ばないらしい」
 そこで日本で一番の酒を龍神にあげたそうだ。ついでに言うと仁はそこで飲み比べもさせられたそうだ。
「本当にきつかった……」
「まぁ、そのおかげで準備は出来たですよね?」
「あぁ……いつでもあちらに行けるぞ」
 あやかしの世界に行けば夏菜はそのまま元の世界に戻る事になるだろう。その夏菜も、あちらに渡って白に提案の有無を聞かなくてはいけないのだ。
「これで夏菜さんは元の世界に戻ってしまうわけですが……これが日常のようになっていたので、なんだか寂しくなりますね」
「はい……でもすごく勉強になる事もあったし、楽しかったです」
 もうこんな体験をする事はないだろう。こればかりは引き延ばしても仕方ない。それに清の事は少々気がかりではあるが、もし少しでも残せるものがあるならそれで許して欲しいと思うしかなかった。
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