ようこそあやかし屋敷

まぁ

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「狛犬の力を利用するって……どうやってそんな事を?」
「ふむ。龍神池にある石に、そなたの力を入れる。そなたは元の時代に戻ったら、五芒星のあった場所にそれを置くのだ」
「ですが白様……龍神池はここより遠い場所にありますよ」
「そんなの主の足ならば問題ないだろう」
 ざっくりと白に言われた仁。だが夏菜の持つ狛犬の力を利用してというのもまた何とも言えない気持ちになった。今の今まで普通の女子高生だった自分が、地域を救う為に力を使う。どこのファンタジーだと一瞬思った。
「だが、そなたの力を石に込めると、そなた自身は力を失う可能性もある。それでもかまわぬか?」
「そ、それは構わないです……」
 むしろ感じられなくなるならそれはそれでいい。ただそうすると今見えている仁や京、せつにこまやもえの姿を見る事が出来なくなるかもしれないのだ。
「とりあえず最後にちゃんと挨拶をしてからでもいいですか?」
「ふむ。善は急げだ。仁には龍神池から石を五つ貰ってきてもらって、磁場が歪む盆にそなたの力を石に入れ、そなたを元の時代に戻そう」
 磁場の歪みを利用して還る事は変わらないそうだ。だが夏菜としては、千庄達に挨拶をする前に、どうしてもやっておきたい事があった。
「これほどまでの力を使うのも久々だ。仁、そなたも手伝ってもらうからな」
「了解しました……」
 ここまで手を尽くすのでこき使うと言っている白だが、その目的は仁を稲荷にする事だ。それは仁もわかっているので、半分以上乗り気ではない。


 夏菜と京は人間の住む世界へと戻って来た。今は狛犬の力が強い為か、あやかしの世界から帰ってこれないという事はなかった。だが力が無くなればもう戻る事は出来ないだろう。ちなみに仁は龍神が管理する龍神池へと向かった。
「夏菜さん!京さんも!」
 戻って来た二人に「よかったです。何もなくて」と千庄は安心した。
 夜も更けていたので、こまともえはもう眠っている。二人は千庄とみけにあちらであった事の全てを話した。
「成程ね。狛犬の魂と融合していると……」
「その狛犬の力を使って五芒星の結界を再び作ると……」
 復唱する二人は、なにやら考え込む。
「ですが肝心の水晶がないのですよね?」
「はい……こればかりは戻ってみなければわからないです」
「それにアタシ達の事も見えなくなっちゃうんでしょ?」
「そうですね。けど、私の住まいを守る為にも、この力が役に立つならそうします」
「そっか……なんだか悲しいわね」
 元々この時代の人間ではない。期限付きでの出会いだ。だが名残惜しいのはもちろんある。
「みなさんの事は向こうの時代に戻っても忘れません」
「ヤダわ。なんだかしんみりしちゃうわ」
「そうですね。でも私は、戻る前に一つやっておきたい事があるんです」
「やっておきたい事?」
「はい。清の事をどうにかしてあげたいんです」
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