ようこそあやかし屋敷

まぁ

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 自らあやかしの世界へと向かうと言った夏菜に、千庄が反対を言う。
「私は賛同しかねません。もし夏菜さんがこちらに戻れなければ、元の時代にも戻れないという事ですよ」
「わかってます……けどここにいても事態が動くわけではないのなら、私自身が行って確かめた方が早いと思うんです」
「ですが……」
 言葉に詰まる千庄に、せつは「我も少なからず手助けはしよう」と言った。普通のあやかしと違い、神に近い白蛇のせつの力があれば、何かしらの助けになるのは確かだ。
「大丈夫だ……とも言えないかもしれないが、俺と京も夏菜に着いてる。何かあったとしても払いのける事くらいは出来るだろう」
「確かにこれだけのあやかしが夏菜さんの力となれば力強いでしょうが……私は心配で仕方ないですよ。もし万が一という事があった場合……」
「でもお盆までの期間は後わずかです。何もしないよりは何かした方がいいです。それに大丈夫です。ここに来てから何度となく危ない事があっても、なんなりと交わしたので」
「夏菜さん……」
 まだ納得出来ない様子の千庄だったが、「わかりました」と最後には折れた。
「ただし期限を設けましょう。一日……一日の間に戻って来て下さいね」
「わかりました」
 つまりこの一日は一分たりとも無駄には出来ない。
 夏菜を元の時代に戻すと決めたお盆の時期。この時に無事戻せたとしても、その後の事がある。風代神社を守る五芒星の結界がなくなった事への影響がどうなるのか。誰にもわからないが、良い事にはならない事はわかっている。夏菜自身の事も含め、一件落着といきたいところだ。
「とりあえず今日はもう眠りましょう」
 あやかしの世界へと行くのは明日だ。今日は英気を養う為にと眠る事になった。


 翌朝、いつものように朝の掃除と朝食を取った後、夏菜と仁、京はあやかしの世界へと向かう事になった。
「これは我の力が込められておる。肩身離さず持っておくのだぞ」
 そう言って昨日のうちにせつに渡されたのは一房の髪だった。白蛇の髪は守りにとしてはとても強力なのだとせつは言う。
「なっちゃんどこか行くの?」
「うん。あやかしの世界に行ってくるよ」
「えー!もえも行きたい!」
「ばーか。これは遊びじゃないんだ。夏菜がいなけりゃ行き来してもいいが、今回だけは駄目だからな」
 きつくいわれたこまともえは不貞腐れるが、それをなだめるのは居残り組の千庄とみけの仕事だ。
「それではなるべく早く戻ってきますね」
 京は社の奥に向かって何か呪文のようなものを唱えた。するとその場の空間が歪み、凄い力で引っ張られる。京や仁は普通なのだが、夏菜はそうではない。
「いいか?俺と京の手を放すなよ」
「わ、わかりました!」
 力強く手を握りしめられた夏菜。いざあやかしの世界へと足を踏み入れる。
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