ようこそあやかし屋敷

まぁ

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「たしかに……なっちゃんの言っていた事が正とすると、問題はこの時代じゃないって事ね」
「それは実際見てみないとわからないな」
「仁。君一人が行くのに問題がないなら、行ってみてはどうだい?」
 千庄にそう言われ、仁も「それが早い気もするな」と言って承諾した。あやかしだけなら時代を行き来出来る。だが今の状況で夏菜は一緒には行けない。何とももどかしい気持ちにもなった。
「とにかくあの河童小僧はどうにかしないといけないわね」
「そうですね。あやかしが悪鬼羅刹になると……しかも川の主なら、川が氾濫とか想像出来ますしね」
 それが一番恐ろしい事だ。ここにいる人々の生活が失われる事があれば、将来的に影響が出る。それこそタイムパラドクス的な事が起こり、元の時代での夏菜の存在にも影響があるだろう。
「まぁ、全ては調べ終えてからですね。とりあえず今日はもう休みましょうか。夏菜さんもお疲れでしょうし」
 こうして一夜を迎える事になった夏菜。さすがに今日は昨夜の事と、夕方の事があって疲れていたのか、ぐっすり朝まで眠る事が出来た。


 翌朝。仁は早々に夏菜のいた時代へと向かった。みけはあの後、家を後にしたのでどこで寝起きしているのかはわからないが、朝ご飯の時は何故かいた。
「だってここのご飯美味しいのだもん!」
 と言って、手を頬に当てとろけていた。だが猫にみそ汁や塩鮭などいいのか?こまやもえもだが、あやかしとはいえ半分以上は動物でもある。塩分過多は体に毒ではないのかと思ったりましたが、本人たちは平気そうなので何も言わないでいた。


 それから仁が戻るより先にやって来たのはせつだった。
「こんにちわ」
「せつさん!」
 突然の訪問にびっくりしたのは千庄だ。せつは薄い水色のワンピースに、白い日傘、赤いサンダルを履いていた。この村では異質なハイカラな服装だ。
「どうしたんですか突然!」
「ふむ。夏菜と一緒に銀ブラをしたくてな。夏菜はおるかい?」
「え、えぇ……」
 戸惑う千庄をよそに、せつはニコニコ微笑む。
 しばらくして千庄に連れられ客間にやって来た夏菜。
「せつさんどうしたんですか?」
「今日は夏菜と一緒に銀ブラしたくての。こうして参ったのだ」
「ぎ、銀ブラ……?」
 聞きなれない言葉だが、たしか銀座を歩くという意味だったかどうか……だが銀座となれば帝都。東京の事だが、ここは東京から遠く離れた場所だ。
「どうやって行くんですか?電車にしても時間かかりますし……」
「何を言う。我の力をもってすれば移動など簡単じゃ」
「で、でも……座標がどうのこうのっていうのは?」
「同じ時代なら座標軸を合わせるのも簡単だし、夏菜一人連れて行くくらいは我にだって出来る」
 仁達よりも身分的にも上のせつの力ならば、同時代の移動は問題ないのだそうだ。だがその話を聞いていたこまともえが乗り出した。
「いいなぁ!こまも行きたい!」
「もえも!あいすくりん食べたい!」
「駄目ですよ。こまともえは耳と尻尾が隠せないでしょ?」
 そう千庄に言われ、こまともえは頬を膨らませ不貞腐れる。
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