ようこそあやかし屋敷

まぁ

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 鶴の一声とはまさにこの事で、千庄の言葉一つで双子はもちろんの事、仁も京も大人しく縁側で西瓜を食べた。
 西瓜には塩、と出された塩を夏菜がかけて食べていると、双子が不思議そうにそれを見ていた。
「ねぇ、なっちゃん!どうしてすいかにおしおかけるの?」
「甘くなくなっちゃう……」
 大人組ももれなく塩をかけていたので不思議だったのだろう。すると京は双子に言った。
「大人になると甘いものにすぐ飽きちゃうんですよ。だがら味を変えるためにこうして塩をかけてるんです」
「大人の味!」
「もえもおしおかける!」
 どうやら大人と言うワードに惹かれたのか、自分達も塩をかけて食べると言い始めた。
「うーん……子供に塩分あげすぎは良くないから、ちょっとだけだよ」
 京が双子の西瓜にほんの少しだけ塩をかけた。大人味と目を輝かせるこまともえは、塩のかかった部分をぱくりと食べた。
 だが咀嚼そしゃくの回数が増える度に複雑そうな顔をした。
「すっぱい……」
「やっぱり何も無い方がいい……」
 またまだ大人の味には早かったこまともえを見て、夏菜や千庄達は笑った。


 西瓜を食べてしばらくして、双子はお昼寝タイムとなったので、今は夏菜達だけとなった。
 ここからは難しい話をするわけだ。
「さて、本題入る前に、千庄さんに慣れてすっかり忘れてたけど、夏菜さんは元々見える人なのかしら?」
 おそらく幽霊の類の事を京は言っているのだろう。
「えっと……見えると言うより、感じると言った方が正しいかもしれません。小さい頃からなんかいるなぁ、程度には思っていたので」
「成程。こまともえが見えたという事は、そこで本格的に開眼しちゃったのかもしれませんね」
「えっ?本格的って?」
「夏菜さんも半分こちらの世界へ足を踏み入れたって事ですね。元々その素質があったけど、覚醒する何かがなかっただけで」
 それはいい事なのかどうなのか。つまり元の時代に戻ったとして、これまでとは違ったモノの見方になるわけだ。
「じゃあこれから幽霊とか見えちゃうって事ですよね?」
「簡単に言えばね。けど夏菜さんには不明な部分も多いからそれらを整理もしていきましょう」
 そう言って京は紙と筆を出した。そこに夏菜の事を書き始める。まずは夏菜がこちらに来た事。引き金がこまともえであっても、そう簡単にはこちらに来れない。そう聞かされていた。
「こちらに渡るにはあやかしのもつ力が必要だ。それには磁場とその磁場から出る周波数。つまり座標軸が基準となるわけだが、人間一人こちらに連れて来るのは相当力がいる」
「あの双子にそこまでの力があるとなると、将来の稲荷候補になるかもしれませんね」
「だがそんな力持ってるようにも見えないけどな……」
「可能性は無限ですよ。特にあの年齢の子供なら」
 仁と京がそんな話をしていたが、要はこちらに人間を連れて来るのは神ではないあやかしでは、本来なら不可能に近いそうだ。
「でも私、ここに来る前日の夜にも、こまともえかはわからないけど、子供の声を聞いたんです。それで気になって翌日行ったら、こまともえがいて……」
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