13 / 35
13
しおりを挟む
鶴の一声とはまさにこの事で、千庄の言葉一つで双子はもちろんの事、仁も京も大人しく縁側で西瓜を食べた。
西瓜には塩、と出された塩を夏菜がかけて食べていると、双子が不思議そうにそれを見ていた。
「ねぇ、なっちゃん!どうしてすいかにおしおかけるの?」
「甘くなくなっちゃう……」
大人組ももれなく塩をかけていたので不思議だったのだろう。すると京は双子に言った。
「大人になると甘いものにすぐ飽きちゃうんですよ。だがら味を変えるためにこうして塩をかけてるんです」
「大人の味!」
「もえもおしおかける!」
どうやら大人と言うワードに惹かれたのか、自分達も塩をかけて食べると言い始めた。
「うーん……子供に塩分あげすぎは良くないから、ちょっとだけだよ」
京が双子の西瓜にほんの少しだけ塩をかけた。大人味と目を輝かせるこまともえは、塩のかかった部分をぱくりと食べた。
だが咀嚼の回数が増える度に複雑そうな顔をした。
「すっぱい……」
「やっぱり何も無い方がいい……」
またまだ大人の味には早かったこまともえを見て、夏菜や千庄達は笑った。
西瓜を食べてしばらくして、双子はお昼寝タイムとなったので、今は夏菜達だけとなった。
ここからは難しい話をするわけだ。
「さて、本題入る前に、千庄さんに慣れてすっかり忘れてたけど、夏菜さんは元々見える人なのかしら?」
おそらく幽霊の類の事を京は言っているのだろう。
「えっと……見えると言うより、感じると言った方が正しいかもしれません。小さい頃からなんかいるなぁ、程度には思っていたので」
「成程。こまともえが見えたという事は、そこで本格的に開眼しちゃったのかもしれませんね」
「えっ?本格的って?」
「夏菜さんも半分こちらの世界へ足を踏み入れたって事ですね。元々その素質があったけど、覚醒する何かがなかっただけで」
それはいい事なのかどうなのか。つまり元の時代に戻ったとして、これまでとは違ったモノの見方になるわけだ。
「じゃあこれから幽霊とか見えちゃうって事ですよね?」
「簡単に言えばね。けど夏菜さんには不明な部分も多いからそれらを整理もしていきましょう」
そう言って京は紙と筆を出した。そこに夏菜の事を書き始める。まずは夏菜がこちらに来た事。引き金がこまともえであっても、そう簡単にはこちらに来れない。そう聞かされていた。
「こちらに渡るにはあやかしのもつ力が必要だ。それには磁場とその磁場から出る周波数。つまり座標軸が基準となるわけだが、人間一人こちらに連れて来るのは相当力がいる」
「あの双子にそこまでの力があるとなると、将来の稲荷候補になるかもしれませんね」
「だがそんな力持ってるようにも見えないけどな……」
「可能性は無限ですよ。特にあの年齢の子供なら」
仁と京がそんな話をしていたが、要はこちらに人間を連れて来るのは神ではないあやかしでは、本来なら不可能に近いそうだ。
「でも私、ここに来る前日の夜にも、こまともえかはわからないけど、子供の声を聞いたんです。それで気になって翌日行ったら、こまともえがいて……」
西瓜には塩、と出された塩を夏菜がかけて食べていると、双子が不思議そうにそれを見ていた。
「ねぇ、なっちゃん!どうしてすいかにおしおかけるの?」
「甘くなくなっちゃう……」
大人組ももれなく塩をかけていたので不思議だったのだろう。すると京は双子に言った。
「大人になると甘いものにすぐ飽きちゃうんですよ。だがら味を変えるためにこうして塩をかけてるんです」
「大人の味!」
「もえもおしおかける!」
どうやら大人と言うワードに惹かれたのか、自分達も塩をかけて食べると言い始めた。
「うーん……子供に塩分あげすぎは良くないから、ちょっとだけだよ」
京が双子の西瓜にほんの少しだけ塩をかけた。大人味と目を輝かせるこまともえは、塩のかかった部分をぱくりと食べた。
だが咀嚼の回数が増える度に複雑そうな顔をした。
「すっぱい……」
「やっぱり何も無い方がいい……」
またまだ大人の味には早かったこまともえを見て、夏菜や千庄達は笑った。
西瓜を食べてしばらくして、双子はお昼寝タイムとなったので、今は夏菜達だけとなった。
ここからは難しい話をするわけだ。
「さて、本題入る前に、千庄さんに慣れてすっかり忘れてたけど、夏菜さんは元々見える人なのかしら?」
おそらく幽霊の類の事を京は言っているのだろう。
「えっと……見えると言うより、感じると言った方が正しいかもしれません。小さい頃からなんかいるなぁ、程度には思っていたので」
「成程。こまともえが見えたという事は、そこで本格的に開眼しちゃったのかもしれませんね」
「えっ?本格的って?」
「夏菜さんも半分こちらの世界へ足を踏み入れたって事ですね。元々その素質があったけど、覚醒する何かがなかっただけで」
それはいい事なのかどうなのか。つまり元の時代に戻ったとして、これまでとは違ったモノの見方になるわけだ。
「じゃあこれから幽霊とか見えちゃうって事ですよね?」
「簡単に言えばね。けど夏菜さんには不明な部分も多いからそれらを整理もしていきましょう」
そう言って京は紙と筆を出した。そこに夏菜の事を書き始める。まずは夏菜がこちらに来た事。引き金がこまともえであっても、そう簡単にはこちらに来れない。そう聞かされていた。
「こちらに渡るにはあやかしのもつ力が必要だ。それには磁場とその磁場から出る周波数。つまり座標軸が基準となるわけだが、人間一人こちらに連れて来るのは相当力がいる」
「あの双子にそこまでの力があるとなると、将来の稲荷候補になるかもしれませんね」
「だがそんな力持ってるようにも見えないけどな……」
「可能性は無限ですよ。特にあの年齢の子供なら」
仁と京がそんな話をしていたが、要はこちらに人間を連れて来るのは神ではないあやかしでは、本来なら不可能に近いそうだ。
「でも私、ここに来る前日の夜にも、こまともえかはわからないけど、子供の声を聞いたんです。それで気になって翌日行ったら、こまともえがいて……」
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
セレナの居場所 ~下賜された側妃~
緑谷めい
恋愛
後宮が廃され、国王エドガルドの側妃だったセレナは、ルーベン・アルファーロ侯爵に下賜された。自らの新たな居場所を作ろうと努力するセレナだったが、夫ルーベンの幼馴染だという伯爵家令嬢クラーラが頻繁に屋敷を訪れることに違和感を覚える。
アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。
夫の心がわからない
キムラましゅろう
恋愛
マリー・ルゥにはわからない。
夫の心がわからない。
初夜で意識を失い、当日の記憶も失っている自分を、体調がまだ万全ではないからと別邸に押しとどめる夫の心がわからない。
本邸には昔から側に置く女性と住んでいるらしいのに、マリー・ルゥに愛を告げる夫の心がサッパリわからない。
というかまず、昼夜逆転してしまっている自分の自堕落な(翻訳業のせいだけど)生活リズムを改善したいマリー・ルゥ18歳の春。
※性描写はありませんが、ヒロインが職業柄とポンコツさ故にエチィワードを口にします。
下品が苦手な方はそっ閉じを推奨いたします。
いつもながらのご都合主義、誤字脱字パラダイスでございます。
(許してチョンマゲ←)
小説家になろうさんにも時差投稿します。
凪の始まり
Shigeru_Kimoto
ライト文芸
佐藤健太郎28歳。場末の風俗店の店長をしている。そんな俺の前に16年前の小学校6年生の時の担任だった満島先生が訪ねてやってきた。
俺はその前の5年生の暮れから学校に行っていなかった。不登校っていう括りだ。
先生は、今年で定年になる。
教師人生、唯一の心残りだという俺の不登校の1年を今の俺が登校することで、後悔が無くなるらしい。そして、もう一度、やり直そうと誘ってくれた。
当時の俺は、毎日、家に宿題を届けてくれていた先生の気持ちなど、考えてもいなかったのだと思う。
でも、あれから16年、俺は手を差し伸べてくれる人がいることが、どれほど、ありがたいかを知っている。
16年たった大人の俺は、そうしてやり直しの小学校6年生をすることになった。
こうして動き出した俺の人生は、新しい世界に飛び込んだことで、別の分かれ道を自ら作り出し、歩き出したのだと思う。
今にして思えば……
さあ、良かったら、俺の動き出した人生の話に付き合ってもらえないだろうか?
長編、1年間連載。
恋とオバケと梟と
はじめアキラ
ライト文芸
「で、英玲奈ちゃんには言ったわけ?好きですって」
藤根宮小学校の七不思議は、何故かその殆どが可愛いおまじないで占められている。
小学生の弟・燕の恋愛成就のため、彼に恋のおまじないを勧めた中学生の兄・梟。
ところがその弟は、おまじないを試した後家に帰ってこなかった。
小学校に弟を迎えに行った梟と、弟の思い人である英玲奈は。とんでもない怪異に見舞われることになる。
小学生と中学生の彼らが体験する一夜の恐怖と冒険。そして、少年少女の恋の行方と兄の覚悟。
ひと夏の青春×ホラー×現代ファンタジー、ここに開幕。
<劇中歌>
『カナリアのうた』
https://www.nicovideo.jp/watch/sm37705769
作詞作曲編曲:はじめアキラ
歌唱:鏡音リン
楡井るるの願い事
追い鰹
ライト文芸
未来を見る超能力を持った高校二年生の篠宮真は転入してきた楡井るるの悲惨な未来を見てしまう。人の願いを叶えることができるという彼女に対して、真は関わらないようにしようと心に決めるが、決心した時にはすでに渦中にいた。
人知を超えた力に人生を蝕まれた人間の最後を看取る物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる