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おそらくあの歪みの中はあやかし達の世界だろう。まずい!そう思ったが、強い力によって引き込まれる夏菜には逃れる術はなく、このままあちらの世界に行ってしまって、今度こそ帰れないそう思った時だった。
「おい!何してる!」
吸い込む方向とは逆の方へと引きずられ、社の入り口まで戻された夏菜。そこには仁がいた。
「何してるんだ!あれはあやかしの世界に行く扉なんだぞ!」
「わ……わかってます。けど、ここに来た瞬間にいきなり強い風に引かれて……」
言葉がうまく出てこない。正直言って怖かった。仁が助けてくれなければあちらの世界に行っていた。安堵した夏菜の目からはボロボロと涙が溢れ出た。
「お、おい!別に俺はお前を責めてるわけじゃ……」
「いやいや、十分せめてますから」
「千庄!」
騒ぎを聞きつけてか、千庄も社の方へとやって来た。
「どうやら夏菜さんは座敷わらしのいたずらに引っかかったようですね」
「座敷わらし……?」
あのおかっぱの女の子の事だろう。だがどうしてこんな事をされなくてはいけないのか夏菜にはわかたなかった。
「座敷わらしはいたずら好きの子です。悪気はなかったのでしょうが、まさかこんなにも簡単にあちらとの扉が開いて驚いたのでしょう。私の元に来て助けを求めたのです」
「そ、それでこんな怖い思いを……」
「その点は座敷わらしにも反省してもらいます。元々悪気があったわけではないので、許してあげてくれませんか?」
許す許さないの問題ではない気もしたが、千庄にそうお願いされては「わかりました」としか言えなかった。
「それにしても……本来あちらの世界への扉は俺達あやかしにしか開けられないんだがな。なんで夏菜がが開けられる事が出来たんだん?偶然にしてもおかしな話だ」
「まぁ、夏菜さんが簡単にこちらへやって来た時点で何かおかしな事でも起こっているのかもしれませんが……とりあえず家に戻りませんか?夏菜さんも家の方が落ち着くでしょうし」
家の方へと戻って来た夏菜と仁、千庄。双子達はこの騒ぎでもすやすやと寝むっている。もちろん起こすなどと野暮な事はしない。
「これを飲んで落ち着いて下さい」
出されたのは冷たい麦茶。それを飲み干した夏菜は一息付けた。
「とりあえず座敷わらしのいたずらだった事はわかった。だが疑問ばかりがいろいろ出てしまったな」
そう仁が言って頭を抱えた。確かに夏菜は双子に連れられてこの時代にやって来た。だが本来それは簡単な事ではない。ましてやあやかしの世界への扉を人間が開けるなど出来るはずもないのだ。
「あの、もしかして私……この時代に災いでも持ち込んだんですか?」
「あぁ、それはないと思うが……悪い気は感じられないし。なぁ……」
「私もそうですね。夏菜さんは普通のお嬢さんとしか見受けられませんが……」
どうしてという疑問の部分は、仁にも千庄にもわからないらしい。そうなるともちろん夏菜にはもっとわからないわけだ。
「こういうのに詳しいとなると……京に来てもらうしかないな?」
「そうですね。京さんは博学ですし」
「えっと……その京さんだと何かわかるんですか?」
「それはわからないが、少なくとも俺達よりは知識がある。何せあいつは烏天狗のとこの子孫だしな」
「おい!何してる!」
吸い込む方向とは逆の方へと引きずられ、社の入り口まで戻された夏菜。そこには仁がいた。
「何してるんだ!あれはあやかしの世界に行く扉なんだぞ!」
「わ……わかってます。けど、ここに来た瞬間にいきなり強い風に引かれて……」
言葉がうまく出てこない。正直言って怖かった。仁が助けてくれなければあちらの世界に行っていた。安堵した夏菜の目からはボロボロと涙が溢れ出た。
「お、おい!別に俺はお前を責めてるわけじゃ……」
「いやいや、十分せめてますから」
「千庄!」
騒ぎを聞きつけてか、千庄も社の方へとやって来た。
「どうやら夏菜さんは座敷わらしのいたずらに引っかかったようですね」
「座敷わらし……?」
あのおかっぱの女の子の事だろう。だがどうしてこんな事をされなくてはいけないのか夏菜にはわかたなかった。
「座敷わらしはいたずら好きの子です。悪気はなかったのでしょうが、まさかこんなにも簡単にあちらとの扉が開いて驚いたのでしょう。私の元に来て助けを求めたのです」
「そ、それでこんな怖い思いを……」
「その点は座敷わらしにも反省してもらいます。元々悪気があったわけではないので、許してあげてくれませんか?」
許す許さないの問題ではない気もしたが、千庄にそうお願いされては「わかりました」としか言えなかった。
「それにしても……本来あちらの世界への扉は俺達あやかしにしか開けられないんだがな。なんで夏菜がが開けられる事が出来たんだん?偶然にしてもおかしな話だ」
「まぁ、夏菜さんが簡単にこちらへやって来た時点で何かおかしな事でも起こっているのかもしれませんが……とりあえず家に戻りませんか?夏菜さんも家の方が落ち着くでしょうし」
家の方へと戻って来た夏菜と仁、千庄。双子達はこの騒ぎでもすやすやと寝むっている。もちろん起こすなどと野暮な事はしない。
「これを飲んで落ち着いて下さい」
出されたのは冷たい麦茶。それを飲み干した夏菜は一息付けた。
「とりあえず座敷わらしのいたずらだった事はわかった。だが疑問ばかりがいろいろ出てしまったな」
そう仁が言って頭を抱えた。確かに夏菜は双子に連れられてこの時代にやって来た。だが本来それは簡単な事ではない。ましてやあやかしの世界への扉を人間が開けるなど出来るはずもないのだ。
「あの、もしかして私……この時代に災いでも持ち込んだんですか?」
「あぁ、それはないと思うが……悪い気は感じられないし。なぁ……」
「私もそうですね。夏菜さんは普通のお嬢さんとしか見受けられませんが……」
どうしてという疑問の部分は、仁にも千庄にもわからないらしい。そうなるともちろん夏菜にはもっとわからないわけだ。
「こういうのに詳しいとなると……京に来てもらうしかないな?」
「そうですね。京さんは博学ですし」
「えっと……その京さんだと何かわかるんですか?」
「それはわからないが、少なくとも俺達よりは知識がある。何せあいつは烏天狗のとこの子孫だしな」
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