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Prologue
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―私には前世の記憶が残っている。その記憶を継承したまま、新たな人生をこの世界で迎える事になった……
どこにでもある田舎町。そこで前世の記憶を継承したまま生まれたアストリアは、生まれて今日までを元気に過ごしていた。
前世でアストリアはまだ十七歳を迎えたばかりだった。しかし日常は急に奪われた。建設現場の鉄骨が落下し、挟まれて死亡。漫画やドラマでよく見る状況がまさか自分の身に起こるとは思えなかった。
そんな非業の死を遂げ転生したアストリアは、前世の自分が死んだ十七歳という年齢になる。その日もいつものようにこの世界での母や父と過ごしながら、家にいる家畜の世話をする。穏やかな人生をこの世界で送りたい。それがアストリアの切なる願いだった。
だが運命とは皮肉なものだ。
その日アストリアの家に、町の外れにある神殿から巫女とその従者数人がやって来た。俗性と切り離された場所に存在する神殿の巫女達。アストリアを始めとした町の人達は、巫女達神殿の者が何をしていて、また神殿の人材がどこからやって来るかも知らない。故に巫女達が町に来るのは一大事でもあるのだが、両親は驚く事はなかった。
「アストリア……ちょっと来なさい」
いつものように家畜の世話をしていると、両親に呼ばれた。二人共真剣な表情をしていた。単に巫女達が来た事で緊張しているのかと思った。だがそれだけではなさそうだ。
「アストリアよく聞いて。あなたはこれからある所に行って、ある方に嫁いでもらいます」
「えっ?どういう事?」
両親の言っている意味が全くわからなかった。急に呼ばれたかと思うと、嫁がされる。この世界では親の決めた結婚というのはよくある事だが、まさか自分がそんな事を言われるとも思わなかった。
前世では見合い結婚など古に近い風習で、恋愛結婚が主だっていたので、アストリア自身前世の記憶がある分、恋愛結婚をするのが当たり前なのだと思っていた。
「で、でも……」
「拒否は許されぬ。そなたの両親とはそなたが産まれた時、そういう契約を交わしておるのだ」
断りを入れる間もなく、横から巫女に言われた。だがその言われた内容そのものが初耳だった為、アストリアは一瞬にして戸惑った。
「どういう事?契約って何?」
「ごめんなさい……でも、これが決まりなの」
「決まり?どういう……」
「時間の無駄だ。こちらからちゃんと説明はする。そなたには神殿に来てもらおう」
「えっ?ちょ、お母さん!お父さん!」
説明も家族との会話も何一つなく、アストリアは巫女と一緒に来ていた従者に腕を引かれてその場を後にした。母親は涙を流し、父親はそんな母を励ます。一体どういう事なのか。これは悪い夢なのだろうか。
腕を引かれながら馬車に乗り、町を出ていく。その時の町の人々はひそひそと噂のようなものをしている。きっと巫女が現れたものだから噂をしているに違いない。いや、もしかしたら両親同様に何かを知っているのかもしれない。
カーテンかかった窓の隙間から外を眺めていたアストリアは疑心暗鬼になっていた。せっかく転生しても自分には明るい未来など待ってはいないのではいか。
巡る思考を働かせていると、町はずれにある神殿へと馬車は到着していった。
どこにでもある田舎町。そこで前世の記憶を継承したまま生まれたアストリアは、生まれて今日までを元気に過ごしていた。
前世でアストリアはまだ十七歳を迎えたばかりだった。しかし日常は急に奪われた。建設現場の鉄骨が落下し、挟まれて死亡。漫画やドラマでよく見る状況がまさか自分の身に起こるとは思えなかった。
そんな非業の死を遂げ転生したアストリアは、前世の自分が死んだ十七歳という年齢になる。その日もいつものようにこの世界での母や父と過ごしながら、家にいる家畜の世話をする。穏やかな人生をこの世界で送りたい。それがアストリアの切なる願いだった。
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その日アストリアの家に、町の外れにある神殿から巫女とその従者数人がやって来た。俗性と切り離された場所に存在する神殿の巫女達。アストリアを始めとした町の人達は、巫女達神殿の者が何をしていて、また神殿の人材がどこからやって来るかも知らない。故に巫女達が町に来るのは一大事でもあるのだが、両親は驚く事はなかった。
「アストリア……ちょっと来なさい」
いつものように家畜の世話をしていると、両親に呼ばれた。二人共真剣な表情をしていた。単に巫女達が来た事で緊張しているのかと思った。だがそれだけではなさそうだ。
「アストリアよく聞いて。あなたはこれからある所に行って、ある方に嫁いでもらいます」
「えっ?どういう事?」
両親の言っている意味が全くわからなかった。急に呼ばれたかと思うと、嫁がされる。この世界では親の決めた結婚というのはよくある事だが、まさか自分がそんな事を言われるとも思わなかった。
前世では見合い結婚など古に近い風習で、恋愛結婚が主だっていたので、アストリア自身前世の記憶がある分、恋愛結婚をするのが当たり前なのだと思っていた。
「で、でも……」
「拒否は許されぬ。そなたの両親とはそなたが産まれた時、そういう契約を交わしておるのだ」
断りを入れる間もなく、横から巫女に言われた。だがその言われた内容そのものが初耳だった為、アストリアは一瞬にして戸惑った。
「どういう事?契約って何?」
「ごめんなさい……でも、これが決まりなの」
「決まり?どういう……」
「時間の無駄だ。こちらからちゃんと説明はする。そなたには神殿に来てもらおう」
「えっ?ちょ、お母さん!お父さん!」
説明も家族との会話も何一つなく、アストリアは巫女と一緒に来ていた従者に腕を引かれてその場を後にした。母親は涙を流し、父親はそんな母を励ます。一体どういう事なのか。これは悪い夢なのだろうか。
腕を引かれながら馬車に乗り、町を出ていく。その時の町の人々はひそひそと噂のようなものをしている。きっと巫女が現れたものだから噂をしているに違いない。いや、もしかしたら両親同様に何かを知っているのかもしれない。
カーテンかかった窓の隙間から外を眺めていたアストリアは疑心暗鬼になっていた。せっかく転生しても自分には明るい未来など待ってはいないのではいか。
巡る思考を働かせていると、町はずれにある神殿へと馬車は到着していった。
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