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 そう告白したエリサだったが、ディアナは特に驚く素振りは見せなかった。まるでわかっていたかのように。
「成程ね。やっぱり未練はあったのね」
「わかって、いたんですか?」
「なんとなくそうじゃないかと」
 なんとなくてわかってしまう程エリサの考えは甘かったのだろうか。だがエリサは自分の心にあったものを今まで否定し続けて来た。
 そうではない。そうであってはいけない。自分の勘違い。
 あれこれと理由をつけては否定してきた本当の心。あの事件まではその気持ちに蓋をする事が出来た。だがマルディアスが自分をかばい傷ついたあの姿を見た時、自分の中にあった気持ちが一気に噴き出したのだ。
「きっと私が出す答えは周りを不幸にするかもしれない。一度ミリアの存在を否定された。それはこれからも変わらない。わかっている……けどあの時、本当に心が締め付けられる程苦しかったんです」
「エリサさん……恋や愛に正解なんてないのよ。例え私やエリサさんのお姉さんが止めたとしても、その恋を止められるかしら?」
 ディアナの問いにエリサは涙を流しながら首を横に振った。
「でしょ?確かに私としてはこれがエリサさんにとっての最善とも思えない。けどエリサさんにとっては手放す事が出来ないのでしょ。なら私がどう言っても無駄じゃない。むしろそれならその気持ちを貫き通すのが一番だと私は思うわ」
「ディアナさん……」
 どうしてこの人はこんなにも優しいのだろう。ディアナの優しさは初めて会った時から変わらない。母として強く優しい。そんな彼女にエリサは憧れた。そんな彼女はエリサの行く道を否定も肯定もしない。自分で決めるようにと言ってくれたのだ。
 この恋は事情を知る周りから見れば、きっと間違いなのかもしれない。けれどそれでエリサの心が止められるわけではない。相手の言い分を聞きすぎて否定しても自分が苦しいだけだ。ならば自分に正直になった方がいい。エリサの中でもう迷いはなかった。


 マルディアスが入院している病院に足を運んだエリサ。相部屋ではなく一人部屋のそこには、今は誰もいない。
「マルディアス様……」
 どうやら眠ってるようだ。その寝顔を見ながらエリサは椅子に腰かけた。
「マルディアス様。私……貴方の事を愛しています。もう意地を張るのを止めます」
 愛しい人の手をぎゅっと握りしめたエリサは、眠っているマルディアスに自分の気持ちを吐露していく。
「本当は気づいていました。まだ貴方を好きな気持ちを。けどずっと否定し続けて来た。自分の気持ちを受け入れるのが怖かったから。それによってまた周りに迷惑をかけてしまうと思って……でもあの時、マルディアス様が刺されて心が冷たくなりました。もし死んでしまったらどうしようかと……」
 あまりいいきっかけではない。だが自分の気持ちを認識するには十分だった。すると、握りしめていた手が優しく握り返してきた。
「私も……私も貴女を愛していますよ」
「マルディアス様!」
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