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「あの……何か用ですか?」
 どうしてここにフェリシアがいるのだろうか。それに二、三回程会った時、フェリシアはちゃんと綺麗にしていたのに、今は髪も肌もボロボロだ。目の周辺はクマが出来、凹んでいるいるようにも見える。
「見つけた……」
「えっ?」
「やっと貴女を見つけたわ」
「私……?何か……」
 様子がおかしいと警戒し始めたエリサ。しかしフェリシアは不気味な笑みを浮かべて見せた。
「何か?わからないの?全部貴女のせいよ」
「私の?」
「そうよ。私がマルディアスに捨てられたのも、こうなってしまったのも、みんな貴女のせい」
「ちょ、ちょっと待って下さい!新聞などに書かれている事がもし本当だとするならば、本当の原因はフェリシアさん自身にあるんじゃ……」
「私は何も悪くないわ!」
 カッと目見開いたフェリシアにエリサはビクリとした。何故そこまで言い切れるのか。もしマルディアスの心がフェリシアから離れていった原因がエリサだとしても、マルディアスの愛を得ようとしてはならない事をしたのはフェリシア本人だ。
「私はあの人の愛しかいらなかった……」
「どうして……どうしてマルディアス様なのですか?」
「だっておかしいじゃない。親の決めた好きでもない相手との結婚なんて。ましてや私の相手は太った中流階級の男。それと比べたらマルディアスの方がいいに決まってるじゃない!」
 一目惚れだったのだとフェリシアは言った。親の決めた結婚に疑問を抱くのは当たり前だ。かつてエリサもそう思った事もあるが、エリサの場合は一目惚れだったからまだ違う。
「だからって……マルディアス様の愛を得ようとしたからって、間違いを犯したのはフェリシアさんであって……」
「そうするしか方法はなかったのよ!その時、私の結婚の日取りが決まっていたわ。だから逃げる為の手段。そして確実にあの人の心を手に入れるにはああするしか方法はなかった!なのに……」
 結婚しても幸せとは言い難い生活を送っていたのだそうだ。エリサと再会するしない以前に、夫婦としての仲はそこには存在しなかったのだ。
「あの人がどこか上の空だったのは知っている。けどそれでもあの状況から抜け出せただけよかったのかもしれない。でも本当は寂しかったわ」
「フェリシアさん……」
「でも貴女が現れた事で全ては変わったわ」
「だからって……貴女のした事は罪です。それに子供だって、マルディアス様との子供ではないにしても、貴女自身がお腹を痛めて産んだ子じゃないのですか?」
「あの人の愛を得る為に屈辱に耐えた結果よ。あの人の愛が得られないのならもう必要ないわ」
「そんな……」
 その為だけに利用された子供。例え自分の子供でも、相手の血が一滴も入っていないと、こうも冷酷になれるものなのか。フェリシアはマルディアスの愛を得られないからいらないと言うが、それはフェリシアにとっての大罪だ。エリサには到底出来ない。
「そんな理由で利用され、捨てられた子供が可哀そうだわ」
「可哀そう?でも本当にいらないのよ。私が欲しいものは一つだけなのだから」
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